古くは、柚富郷(ゆふのさと)とよばれ、群生する楮(こうぞ)の皮の繊維を利用して木綿(ゆふ)【布地】を生産した土地だったそうです。現在の「由布院」または「湯布院」という地名の「院」は平安時代に租税を収蔵する倉院が設置されたことによるものだそうです。


柚富郷 在郡西 此郷之中 栲樹多生 常取栲皮 以造木綿一 因曰柚富郷

【柚富郷(ゆふのさと)。郡(こほり)の西(にし)に在(あ)り。此(こ)の郷(さと)の中(なか)に、栲(たく)の樹(き)(さは)に生(お)ひたり。常(つね)に栲(たく)の皮(かは)を取(と)り、以(もち)て木綿(ゆふ)を造(つく)れり。因(よ)りて柚富郷(ゆふのさと)と曰(い)ふ。】

~『豐後國風土記』~


 その「柚富郷」の開拓神をお祀している神社が、宇奈岐日女神社(うなぎひめじんじゃ)です。社殿は、神社の参道の軸線が(北東の)由布岳に向かって参詣できるように建てられています。


豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-宇奈岐日女神社①
宇奈岐日女神社の参道

宇奈岐日女神社

[所在地] 大分県由布市湯布院町川上 (地図

[御祭神]

 國常立尊(くにのとこたちのみこと)

 國狹槌尊(くにのさづちのみこと)

 彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)

 彦波瀲武鸕鷀葺不合尊(ひこなぎさたけうかやぶきあへずのみこと)

 神倭磐余彦尊(かむやまといはれびこのみこと)【神武天皇】

 神渟名川耳尊(かむぬなかはみみのみこと)【綏靖天皇】

 宇奈岐日女神(うなぎひめのかみ)【由布岳・遥拝】


 由布盆地には、こんな伝説が残っています。


 大昔の由布盆地は、青く清らかな水を湛える大きな湖で、周囲の山々の姿を静かに湖面に映していたそうです。人々は、湖の周囲の丘や日あたりのよい山麓に村をつくり生活していました。そして、由布岳の女神である宇奈岐日女神は、力自慢の権現をしたがえて山の上からジッとこの広大な湖を眺めていました。


 やがて、倉木山まで歩かれた宇奈岐日女神は、権現に向って、「この湖を干拓すれば、底に肥沃なる土地現れて、多くの民が豊かに暮らせよう。権現よ。お前の力を以ってこの湖の堤を蹴り裂いてみよ」と命じられました。


 権現は女神の前に跪いて、「これは、一生一代の大仕事でございます。ある限りの力をもってお言葉のとおりに」と答え、湖の周囲を一巡りして、西の湖壁に最も薄いところを見付けると、満身の力をふりしぼってそこを蹴り裂きました。すると、湖水は怒涛の音を立てて豊後湾【別府湾】まで奔流し、やがて湖底から現在の盆地が現れました。


 また、この時、湖底に棲んでいた一匹の大きな龍は、急激に湖水が減少したため神通力を失い、身を悶えながら小川を上り、天祖神に訴えました。


 「私は、長い間この湖に住んでいた龍です。湖のすべては望みません。唯、この地に少しばかりの安住の地を与えてください。そうしてくだされば、ここに清水を湧き出させ、永くこの地を護りましょう。」


 竜の願いは聞き入れられ、「岳本の池」が残されました。こうして今も「岳本の池」には清水と温泉が湧き出ています。湖の痕跡には、黒々とした土が現れ、女神はさっそく人々を集めて、お米の作り方や作物の育て方を教えられました。


 山麓に家を建て、狩りをして暮らしていた村の人々は、女神に教えられたとおりに田畑を耕し、作物の種を撒き、あたたかい日ざしと岳本の池から湧き出る清水にめぐまれて、作物の豊穣をもたらしました。


 その後、竜は再び神通力を得、雲を巻いて昇天しました。大足彦忍代別命(おほたらしおしろわけのみこと)【景行天皇】12年(82年)10月、里人は宇奈岐日女神を「由布院開拓の祖神」として、大きな社を建てお祀りしました。これが現在の宇奈岐日女神社のはじまりです。湖壁を蹴り裂いた権現【道臣神(みちのおみのかみ)】は川西の蹴裂権現社(けりさきごんげんしゃ)にお祀りされています。


豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-宇奈岐日女神社②  豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-宇奈岐日女神社③
宇奈岐日女神社の神門と社殿

豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-宇奈岐日女神社⑤  豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-宇奈岐日女神社④
扁額・「宇奈岐囧女神社」(左)、「宇奈岐日女神社」(右)

 さらに、慶長の大地震で大きな池だった岳本の池も今のように小さくなったそうです。明治時代まで、「岳本の池」とよばれていましたが、儒者の毛利空桑がこの地を訪れ、魚の鱗が夕日に輝くのを見て、「金鱗湖(きんりんこ)」と名付けたのが現在の名称の起こりだそうです。


 境内には、清らかな霊水が湧き出ているポイントがあります。龍の口から注ぐ清水は、由布岳の「めぐみ」そのものです。拝殿・社殿が建つ池にも清水が注ぎ、鯉もゆったりと泳いでいて気持ちよさそう。


豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-宇奈岐日女神社⑧  豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-宇奈岐日女神社⑥
境内の清水

豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-宇奈岐日女神社⑩  豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-宇奈岐日女神社⑨
池に注ぐ清水

豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-宇奈岐日女神社⑦
池を泳ぐ鯉たち

 往古の昔、大きな湖だった由布盆地は、今も清水と温泉が湧く「めぐみ」の郷。その「めぐみ」は、由布岳などの大自然に育まれています。宇奈岐日女神は、その由布岳の女神。この神社の拝殿から由布岳を遥拝すると、そっと女神の声が聞こえてきそうです(笑)金鱗湖と天祖神社については、また後日に掲載させていただきます。

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