鷹が翔んだ日 in 氷取沢 | 冒険写真家 豊田直之 オフィシャルブログ

鷹が翔んだ日 in 氷取沢

 

「えっ、なんで???」
大岡川源流にあたる横浜市磯子区氷取沢(ひとりざわ)。
ここは野鳥のサンクチュアリー(聖域)とボクが呼ぶほど、野鳥の種類が多く、氷取沢の森に入ったとたん、多くの種類の野鳥の声に包まれる。はずだった。
ところが、森の中はシーンとして、鳥の姿すらない。
 

今回、実はとんでもないミスをして、最初に発表した大岡川探索ツアー開催日が、ボクの勘違いで1日ずれてこのFBで参加者を募集してしまった。そのため、多くの方たちにご迷惑をかけての大へこみの本日開催だったのだ。
しかも、本日参加してくださった方は、野鳥のハイアマチュアカメラマン。仕事にはしてはいないものの、野鳥撮影の腕はプロ並み。
いきしなに、氷取沢がいかに野鳥の楽園かを熱弁し続けて来ただけに、鳥のいない氷取沢を目の前にして、もう深海3,000メートルに沈められたテニスポールのごとくぺしゃんこに凹む寸前だった。

 

森を抜け、円海山頂上付近にある展望台でコンビニで買ったおにぎりをほおばり、熱いお茶を飲みながら雑談していたときのことだった。
目の前をかなり大きな鳥が猛スピードで横切った。
杉と杉の樹の間を、まるで空のF-1のごとくスラロームで抜けて行った。一瞬のことだった。
「豊田さん、今の見た? 鷹!。おそらくオオタカかハイタカのどっちかだと思う」
さすが野鳥のカメラマンである。ボクはこの鳥がカラスやトンビではないことには自信があったが、何が起きたのかさっぱりわからなかった。
「そうか、豊田さんがいつもとちがって、鳥が鳴かないし、姿も見えないといった理由がわかったよ。鷹が舞っていたから、鳥たちが怯えていたんだ・・・」

海の中でも、ロウニンアジやカンパチといった大型捕食魚が来ると、小魚たちはみんな姿を隠す。まったく同じ現象だ。
 

そして山を降り、帰途の途中、振り返ると、円海山上空を鷹が舞っていた。レンズがそんな鷹を撮れるような望遠レンズではないから、とりあえずの証拠写真だが、間違いなく鷹の仲間。
野鳥の種類が多いということは、エサとなる生き物たちも多い証拠。つまり生物多様性としては、環境の整っている証拠となる。さらに食物連鎖の頂点となる猛禽類である鷹が棲んでいるということは、かなりバランスの取れた環境が氷取沢には存在することになる。
 

そんな鷹の舞う姿を見ていたら、凹んでいた自分がいつのまにか膨らんでいて、なんか思わず涙ぐみそうになった自分に気づいたのだった。

 

次回の大岡川源流域探索ツアー開催予定日は、2/26(日)。このときは氷取沢から鎌倉の由比ガ浜まで歩く予定です。参加希望の方はご連絡ください!