シカの暗い部屋 ―A STUDY OF TERROR―

シカの暗い部屋 ―A STUDY OF TERROR―

私の私による私のための芸術論です。

美術の時間です。
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これ以上のミステリを私は知りません。
恐らく永遠に出会えないでしょう。

要約も、目次においてなされているため、繰り返すことはおそらく無意味ですが、一応以下にまとめました、、

舞台は14世紀のイタリアのとある大きな修道院です。

この閉じた世界で、修道院僧たちを襲う死の連鎖に、偶然居合わせた余所者である老僧と若い弟子が遭遇し、修道院長から事件の解明を依頼されます。

被害者は死の直前に存在が噂される「禁断の書物」に関わりを持ってしまったらしき痕跡が、、

しかし、修道院の図書館は外部の人間に対して排他的で、禁断の書物も、捜査の手がかりがないままに、事件全体が終末の予言を忠実になぞるような超常現象的なる姿を店始めます。

事件を作る殺人者はいるのか?すべては「神の計画」なのか?

ウィリアムとアドソの師弟コンビは、真実に到達できるのか?



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高木彬光『刺青殺人事件』/ハルキ文庫



謎…B
構成…B+
珍味…B
怪奇色…B+

総合評価…B



※以下、真相への言及はありませんが、ストーリーに関する若干のネタバレはあります。



日本の戦後ミステリーとして大変に有名な作品。


恥ずかしながらようやく読みました。


今読むと古臭さは否めませんが、構成には技が効いています。


ミステリーファンならば一読の価値はある…といったところでしょうか。


以下あらすじ。


時は1946年、夏、舞台は銀座。


ここでバーを営む美女・絹江の背中には、妖術師<オロチマル>の見事な入れ墨が彫られています。


入れ墨職人として名高かった父・彫安の手によるものです。


ある晩、彼女のもとに日本一の入れ墨コレクターである早川博士が訪れます。


博士は、自らが審査員を務める入れ墨の出来を比べあう催し「競艶会」への出場を絹江に依頼しにきたのです。


この誘いに乗り、絹江は競艶会に出場、見事優勝を果たします。


元軍医・松下研三は、会場で絹江と知り合い、彼女と入れ墨の魅力に引かれて親密な仲になってゆきます。


ある日、研三は絹江から写真を渡されます。


そこには絹江、双子の妹・珠江、さらに兄の常太郎の三人兄弟の裸体が写っており、それぞれの背中には<オロチマル><ツナデヒメ><ジライヤ>の図柄で入れ墨が施されています。


絹江は、自分は入れ墨のせいで何者かに殺されようとしているのだとして、研三に相談に乗ってもらいたいと頼みます。


断り切れない研三は、指定された晩、絹江の家に向かいます。


しかし彼を待ち受けていたのは、浴室でバラバラにされて投げ捨てられている絹江の死体…


死体からは、入れ墨の施された胴体部分だけが持ち去られており、さらに現場となる浴室は、内側から鍵がかけられた密室でした。


警察は絹江の入れ墨に偏執的なこだわりをみせていた早川博士に嫌疑の目を向けますが…



【注意】
※以下、真相への言及があります!!




















密室は陳腐で語る意味が全くありません。


特筆すべきは随所にさりげなく使われている叙述トリックでしょう。


プロローグでは、東大研究室の人皮標本を紹介しながら、入れ墨の文化論をぶつ中で、さりげなく「事件後、オロチマルの入れ墨の持ち主がすでに死者となっている」ことを読者に印象付けています。


また、広島で原爆を受けて死んだと思われていた珠江が実は生きていることを読者に明かすくだりでは、「珠江の背中にも入れ墨が彫られている」ことをさりげなく確認させています。


こうした推理小説的企みは買う一方、機械的トリックのしょぼさ、勘でわかってしまう犯人が詰めの甘さとして惜しまれる作品です。



【ミステリー好きの皆様へ】
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グル名は物々しいけれど管理人は放任主義だしみんないい人ばかりの自由な気風です!
一応形ばかりの試験がありますが、ここまで読んだ物好きなアナタなら十中八九、有資格者です。

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島田荘司『魔神の遊戯』/文春出版



謎…B+
構成…B+
珍味…A-
怪奇色…A-

総合評価…B+



※以下、真相への言及はありませんが、ストーリーに関する若干のネタバレはあります。



探偵は御手洗潔。


作者の遊び心に満ちた良作。


バラバラ殺人が行われた理由に対して面白い解答(ただし島田流だけれど)を示しています。



以下あらすじ。



ネス湖のほとりにある寒村ティモシー。


老人ばかりが平和に暮らすこの村でオーロラの夜、大木の梢から村の老婆ボニーの頭部が発見されます。


彼女の首は、すさまじい力で「ひきちぎられ」、プードル犬の体と縫い合わされて、あたかも人面の奇妙な獣のように加工されていました。


村始まって依頼の大事件に、警察署長バグリーは名探偵として高名なミタライ教授を引き連れて捜査に当たります。


しかし、事件は始まったばかりでした。


消防車の上、飛行機の座席、村のあちこちで発見される死体のパーツ。



警察に包囲された村で、老婆ばかりが次々と殺害され、その体はいずれもバラバラにひきちぎられた状態で村の思いもかけない場所から発見されるのです。


あたかも強大な魔神によってなされた悪夢的遊戯のようなこの事件の背後に、かつて異端として村を終われたユダヤ教徒の少年が容疑者として浮かび上がります…


事件を操る「魔神」は誰なのか?


なぜ犯人は被害者の体をバラバラにして撒き散らすのか…?








「バラバラのわけ」について明らかにされるラストは圧巻です。


映像にしてみると見応えがありそうです。


ただ、これは島田ミステリー全般に言える特徴ですが、言葉の量的な過剰さ、繰り返しの多さ、くどくどしさはもう少し何とかならないものかという気がします



【注意】
※以下、真相への言及があります!!



















犯人も意外といえば意外でしたが、叙述的な仕掛けについては先行例を読んでいたため思いもしなかったというわけにはいきませんでした。



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吉村達也『トリック狂殺人事件』/光文社文庫



謎…B
構成…B
珍味…B
怪奇色…B

総合評価…B-




※以下、真相への言及はありませんが、ストーリーに関する若干のネタバレはあります。



クローズドサークルものの平均的娯楽ミステリーです。


烏丸ひろみという刑事が主人公として活躍するシリーズものなのですが、いかにも頭の中だけで書いたなという安っぽさが物語全体に溢れまくっています。


まぁパズラーミステリーはすべからく頭の中だけで書かれたものだと思うのですが。


あと、誤字が多いです。



以下あらすじ。



ナナハンバイクを駆る敏腕美人刑事・烏丸ひろみの元に、トリック卿と名乗る謎の人物から一通の招待状が舞い込みます。


トリック卿が「トリック荘」で主催するクイズに参加し、正解を出すことができれば一億円を払うとの常識はずれの内容。


招待状には、これが単なるいたずらではない証拠に百万円の札束が同封されています。


ひろみは、事件の予感と好奇心に動かされ、ひとりトリック荘に向かいます。


果たして豪雪に覆われたトリック荘にやってきたのは、ひろみを含めて、政治家、小説家、女優など、男女七人でした。


食堂に集められた一同にボイスチェンジャーで歪んだトリック卿の声が流れ始め、七人のうちの三人の殺害を宣言!


ほどなく参加者の一人が消え、捜索の結果、彼女は氷漬けになって冷凍庫の中から発見されます。


現場に残されたメモにはトリック卿からのメッセージ…


「第一問 いかにして彼女は氷の柩に閉じ込められたか」


狂乱状態の六人はトリック荘からの脱出を図りますが、地響きとともに建物は雪の大地の下へ降下してゆきます…


巨大な密室となったトリック荘で繰り返される殺人。


殺人のたびにクイズを出題するトリック卿の意図は…?







作者はあとがきにおいて本作のテーマを、クローズドサークルにおける二つの洋式美への挑戦だと述べています。


洋式美その1として挙げられている「吹雪による外部との断絶」はともかくとして(油圧ジャッキで建物ごと地下に沈めるってW)。


その2として挙げられている「登場人物に探偵や警察関係者が含まれていること」に必然性を与えるという点において、作者の推理小説的企みは成功していると言えるでしょう。


ただ、「トリック荘」「トリック卿」といった命名や、テレビに映し出される「トランプのジョーカー」「ボイスチェンジャー」などといった小道具のチープさが、半ば意図的であることは認めつつも減点要素と映ってしまうのは、作者の筆力なのか私の狭い了見なのか。


これを見定めるのは、今後の課題です。


ただし映像化を意識したとはいえ、ラストシーンと、「雪の山荘で起きる恐怖の殺人者あてゲーム!」という帯の文句は陳腐すぎるのではないでしょうか。




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島田荘司『ゴーグル男の怪』/新潮社



謎…B+
構成…B+
珍味…A-
怪奇色…A-

総合評価…B+



※以下、真相への言及はありませんが、ストーリーに関する若干のネタバレはあります。



ゴーグル男と呼ばれる通り魔的怪人による殺人事件を描いた警察小説です。


やや複雑かつ散漫ですが、なかなか面白い。


ただし、少なからぬページ数を使った高速増殖炉の話は(作者の趣味なんだろうけど)あえて指摘するならいらない♪



以下あらすじ。



舞台は都下、煙草横丁と呼ばれる下町風情の残る通り。


ここには三軒の煙草屋が密集しています。


ある晩、そのうちの一軒・鉢呂屋で店番の老婆が頭を殴られて殺害されます。


通り掛かりの作詞家・実相寺は、現場から逃走する不審なゴーグルの男を目撃。


警察は、現場からマーカーで黄色い線を引かれた奇妙な五千円札を発見します。


捜査の結果、同様の札が付近の二軒の煙草屋からも発見されます。


誰が、いつこの奇妙な札を煙草屋に持ってきたのかはわかりません。


それからしばらくして煙草屋殺人事件の目撃者である実相寺が、再びゴーグル男を目撃します。


街中でチンピラ風の男性から絡まれる知り合いの女性を見かけ、近寄ろうとしたところ、突然走り出てきたゴーグル男がチンピラを突き飛ばして逃走したというのです。


この時、ゴーグル男に助けられたかに見える女性の名は榎木光子。


モデル並みの美貌を持つ光子は、複数の男性たちからまるで女王のようにかしずかれた生活を送っています。


光子の周囲には、彼女を愛人として囲う悪徳社長、一途な彼氏、作詞家の実相寺、大家、さらに謎のストーカーまで…


警察は、手配中のゴーグル男=光子のストーカーではないかと疑いますが、彼女はゴーグル男など知らないと言い張ります。


警察には多くの目撃情報が寄せられるも正体待不明のまま、次第に都市伝説と化してゆく怪人ゴーグル男。


刑事の田無と砂越は、地道な聞き込みでゴーグル男の正体に迫りますが、第二の殺人が…


なぜ犯人はゴーグルを装着しているのか?



【注意】
※以下、真相への言及があります!!


















面白いのですが散漫です。


特に、も○じゅくん批判はいりません。


無理に社会派ミステリーにしなくていいです。


明らかにストーリーに関係の無い日本の原子力政策批判が登場人物の口を介して延々と語られるのは、面白いけど興ざめです。


島田先生はいらんことしなければ面白いんだから。



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鮎川哲也『りら壮事件』/講談社文庫



謎…B+
構成…B+
珍味…B
怪奇色…B

総合評価…B+



※以下、真相への言及はありませんが、ストーリーに関する若干のネタバレはあります。



善くも悪くもきっちり作られたパズラーミステリー。


古臭い感じはあるけれど、それはそれ、実際に古い時代の作品であるわけだから。


1950年代の日本の作品であることを勘案すれば間違いなく歴史に残すべき作品です。


個人的には鮎川氏の代表作とされているアリバイ崩しモノ『黒いトランク』より遥かに面白かったです。



以下、あらすじ。



7人の芸術大学生たちが夏休みに避暑のため、大学所有の施設・りら荘に向かいます。


彼らを迎え、一週間の滞在期間世話をするのは管理人の老夫婦です。


ある晩、学生の持ちこんだトランプからスペードのカードばかり13枚が抜き取られているのが発覚。


一体誰がなんのために盗んだのかといぶかしむ学生たち。


翌日、りら荘に刑事が訪れます。


近くの崖で、近所に住むきこりが転落死しているのが発見されたというのです。


きこりは、何故か学生の一人が持ち込んだレインコートを被って霧雨の山道を歩いていたらしく、また、死体の近くには紛失したトランプの一枚、スペードのAが残されていました…


この事件を皮切りに、りら荘では学生たちが次から次へと殺害されはじめます。


毒殺、刺殺、絞殺、撲殺、射殺…


何故か毎回手口を変えて行われる殺人によって、みるみる減ってゆくりら荘の滞在者たち。


そして毎回死体の脇にはトランプのカードが置かれています。


動機不明の連続殺人の犯人は…?


そしてカードの意図は…?






あらすじを見る限り、クローズドサークルにありそうな内容に見えますが、実際は警察も鑑識も医者も、最初の最初から事件に介入してきます。


それでも連続殺人に歯止めがかからないというのが<警察=無能>というお約束の図式ともいえますし、まぁ奇妙といえば奇妙です。


結局、警察が散々迷走したあげくに終盤に、突然名探偵が現れてアームチェアディテクティブ同然に事件を説き明かしてしまうのがいささか拍子抜けで、おいおいといった感じですが、全体としてはよく練られた本格ミステリーといえるでしょう。


私はこの作品から坂口安吾の『不能連続殺人事件』を少し連想しました。


行儀よく大人しくまとまっているのは『りら』、破天荒で型破りなのは『不連想』でしょうか。



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綾辻行人『アナザー』/角川書店



謎…C
構成…B-
珍味…B-
怪奇色…B

総合評価…C



※以下、真相への言及はありませんが、ストーリーに関する若干のネタバレはあります。



ミステリータッチのホラー。


一応形ばかりのフーダニットは用意されていますが、謎の大半は結局のところは超常現象に回収されてしまうため、本格ミステリーを期待している人は注意。



以下あらすじ。



幼い頃に母を無くした中学生・榊原コウイチ。


父が仕事でインドに渡り、夜見山町の祖母の家で一年間生活することになった彼は中三の春から夜見山北中学に転校します。


しかし転校早々に肺がパンク。


自然気胸です。


一ヶ月の入院生活を送るはめになり、登校できたのは五月に入ってから。


新しいクラス三年三組の雰囲気に、コウイチは初日から違和感を覚えます。


クラスの一番後ろに座る眼帯の少女・見崎鳴を徹底して無視するクラスメートと担任の教師。


皆はコウイチに何かを伝えようとしつつも口に出すことを恐れている風です。


「いないものの相手をするのはよせ」


友人からの助言を振り切って、鳴に接近するコウイチ。


鳴はつぶやきます。


「気をつけて、もう始まってるかもしれない」


やがてコウイチは3年3組だけに伝わる申し送り事項、死にまつわる異常な「現象」について聞かされます。


そのきっかけは26年前に事故で死んだ生徒を「いるもの」として扱い続けたあるクラスでした。


以来、数年に一度、三組の教室にいるはずのない死者が紛れ込むことがあるというのです。


死者が紛れた年は、クラスの関係者に異常なリスクの偏りが生じ、毎月クラスの構成員…生徒、教師、及びその二親等以内の家族からランダムに死者が出るというのです。


数年に一度の大量死を繰り返し、やがて経験則として導き出された「現象」にたいする唯一の防御方法。


それが死者の紛れたクラスの人数を合わせるために誰か一人を「いないもの」として扱うという奇妙なルールだったのです。


「いないもの」を務めていた鳴にケンイチが接近したことで破られてしまったルール。


やがて三組では凄惨な死の連鎖が起こり始めます…







はい、ホラーです。


ミステリーではありません。


てっきりミステリーだと思って読んでいたらホラーかよ!


たまにありますよね。


こういうこと。


たいした話でもないのに長っ尻。


ほのめかしばっかりでじれったい作品でした。


ホラーとしても二級品です。


綾辻先生のファン以外は読む必要ありません。


ちなみにこの夏休みに公開された映画のほうも観ました。


こちらは『ファイナルデステイネーション』の劣化コピーなので小説以上に観る意味ナシです。


中学生が偶然の重なりとしかいいようの無い死の連鎖から逃げ惑う…みたいな話で、しかも予算に比例してショボイ感じでした。




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J・D・カー『火刑法廷』/ハヤカワ文庫



謎…A-
構成…A-
珍味…A-
怪奇色…A

総合評価…A



※以下、真相への言及はありませんが、ストーリーに関する若干のネタバレはあります。



ディクスン・カーの代表作のひとつであり、怪奇色の強い不可能犯罪モノ。


非常におもしろい作品でした。



以下あらすじ。



出版社に勤務するスティーブンズは、担当作家の新作歴史ミステリーの原稿に添えられた写真を見て驚愕します。


そこに写っているのは数十年前にギロチンで処刑された毒殺犯の顔。


しかし彼女は三年前に結婚した妻にそっくりだったのです。


単なる偶然の一致か、それとも妻は毒殺犯の生まれ変わりか…


釈然としない思いのまま、妻の待つデスパードパークの別荘に到着したスティーブンズ。


別荘に帰り再び確認すると問題の写真はいつの間にか無くなっています。


その夜、スティーブンズは隣人であるマーク・デスパードから秘密の相談を持ち掛けられます。


最近胃腸炎で急死したマークの伯父は何者かに毒殺された疑いがあり、遺体を確認するのを手伝ってもらえないかというのです。


「毒殺」という単語から妻を連想し、内心動揺しつつもマークの頼みを引き受けたスティーブンズ。


その夜、マークとスティーブンズを含めた四人の男達が、デスパード家の敷地にある霊廟の入口を破壊し、三週間前に葬られたマークの伯父マイルズの柩を改めます。


しかし…


蓋を開けられた柩に遺体はありませんでした…


葬儀を執り行い、衆人監視のもと地下に納めた遺体が消え去ったのです。


霊廟のそばに暮らす管理人は、葬儀の直後にコンクリートで入口を塞いで以降、誰ひとり霊廟への出入りは無かったと断言します。


さらに、マークが衝撃的な内容の打ち明け話をします。


伯父が発作を起こして死んだ夜、ベッドにいる彼に飲み物を与えている女性を隣室から見た者がいるというのです。


問題の女性は、マイルズにカップで飲み物を与えた後、壁を通り抜けて姿を消したのだといいます……


こうして事態はにわかに怪奇色を深めてゆきます…







ミステリーにおいて人体消失にまさる魅力的な謎はありません。


どうやらカー本人もそのように考えていたようです。


本作品には二つの奇怪な謎があります。


密室である地下の霊廟から消失した遺体と、壁を通り抜けて消えた女です。


どちらも大きな意味では人体消失であり、これだけでもワクワクするのですが、さらに本作品にはカー特有の怪奇趣味や魔術色がちりばめられているのだから堪えられません。


カーの作品の中ではかなりよいのではないでしょうか。


久々のオススメ作品でした。



【注意】
※以下、真相への言及があります!!




















純粋にトリックだけ見ると古臭いのですが、おどろおどろしい雰囲気のお陰で気になりません。


カーは怪奇趣味をミステリーにうまく煙幕に使っているなぁとの印象を強めました。


幽霊は若干やり過ぎな気もしましたが…


また、あのエピローグが必要かどうかは賛否があると思います。


ま、私はあっても気にはならないというところでしょうか。




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森博嗣『有限と微小のパン』/講談社



謎…C+
構成…C+
珍味…B-
怪奇色…B

総合評価…C



※以下、真相への言及はありませんが、ストーリーに関する若干のネタバレはあります。






犀川と模絵他、いつものメンバーがテーマパークを舞台に活躍する<S&Mシリーズ>最終作。


やたらめったら長いうえにミステリーとしてヒジョーにつまらない…つまりろくでもない作品です。



以下あらすじ。



舞台は、新進企業ナノクラフトがヨーロッパの景観を模して作りあげた<ユーロパーク>。


ここには、スタッフの間で語り伝えられている二つの噂があります。


ひとつはシードラゴン事件と呼ばれる死体消失事件。


あるスタッフが、パークのロボットのドラゴンが霧の夜に人間を噛み殺した現場を見たというのものであり、ただちに警察が呼ばれたにも関わらず、わずかの時間で死体は消失したのだといいます。


もうひとつは、パークのどこかに三年前の殺人事件に関わった天才科学者・真賀多四季博士が匿われているというものです。


ナノクラフト社長の塙(はなわ)氏によって、ユーロパークに招待された萌絵。


彼女は、塙氏に薬を飲まされ夢うつつのままでに四季博士と再開します。


四季博士は、萌絵の大学の担当教官である犀川に興味を持っており、萌絵に働きかけることによって犀川をパークへ呼び寄せようとしているように見えます。


連絡を受けて萌絵の身を案じ、パークに向かう犀川。


しかし、犀川の到着を待つことなく事件が発生しませす。


長崎県警の警察官とともに犀川の到着を待っていた萌絵の周囲で、次々と変事が起こり始めます。


パーク内の教会に転がっていたスタッフの死体が、わずかな時間で片腕だけを残して消失します…


社長秘書の女性が密室で殺害されます…


確かに存在したはずの地下へのエレベータが消失し、ただの倉庫に変わっています…


バーチャル・リアリティ体験の最中に仮想空間に現れた「影」によって、参加者が殺害され、それと同時に現実世界の参加者の体にもナイフが突き刺さっています…


連続する奇怪な事件は、天才四季の描いたシナリオなのか?


犀川に子供の遊びと形容される犯罪の目的は?






これ、非常にくだらない内容です。


犯人もトリックもくだらない。


繰り返して恐縮ですが、無駄に長いだけで全く内容がありません。


本当に時間の無駄なので読む必要はありません。


子供の遊びなのは、この作品のほうです。


しかも悪い意味で。


腹が立つので以下にトリックを書いてしまいます。


あらすじを読んで気になる人はそれを確認してください。


しつこく繰り返しますが本当にくだらないので読まないのが身のためというものです。



【注意】
※以下、真相への言及があります!!

























以下でトリックを明かします。


ミステリーファンならば、この内容を見れば私が読む意味が無いといった理由がおわかりいただけるでしょう。



シードラゴン事件→
話題作りのためにパークのスタッフが金を貰って作り話をした。
つまり事件そのものが存在しない。


教会での死体消失→
現場にいた目撃者が死体を裏口から移動させて嘘をついた。
つまり目撃者が犯人。


密室殺人→
現場を確認した目撃者が嘘をついた。
密室殺人など起こっていない。
現場を調べた警察も偽警官でありグル。


バーチャルリアリティ殺人→
単なる早業殺人。
装置の装着を手伝った助手が素早くナイフを使った。
仮想世界のキャラクターはコンピュータが動かしており、被害者は最初から死んでいた。


…以上、大半が目撃者・証言者の偽証という、この「トリック」を使う限りどんな不可思議も説明が可能、要するにミステリーにおいて最も安直で面白くないな解決策というわけです。


作中では、この種をバーチャルリアリティにこじつけて一席ぶっているのですが、そのあたりの言い訳臭さが、ますます残念感を高めてしまっているように思われます。


ハァ…



【ミステリー好きの皆様へ】
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今邑彩『赤いべべ着せよ…』



謎…B
構成…B
珍味…B
怪奇色…A-

総合評価…B



※以下、真相への言及はありませんが、ストーリーに関する若干のネタバレはあります。



20年ぶりに夫の故郷に帰る未亡人とその一人娘の周囲で不気味な「子とり鬼」の調べとともに繰り返される連続幼女殺人事件…


火曜サスペンス劇場にありそうな内容です。


適度な恐怖、適度な刺激、適度な謎。


とにかく難しいことは何もありません。


読みやすいのでおやつにどうぞ。



以下あらすじ。



娘の紗耶を連れて20年ぶりに夫の故郷へと帰ってきた千鶴。


彼女はこの町に嫌な思い出があります。


子供の頃、よそ者の幼女が地元の子供達に寺の境内に置き去りにされ、何者かに扼殺されて井戸に捨てられる事件が発生したのです。


その事件で千鶴は一旦殺された幼女を遊びの輪に入れてやったことから、被害者の母親に逆恨みを受けているのです。


田舎町で親戚の家に厄介になる千鶴と紗耶香。


表面上は明るく受け入れられる二人ですが、居候先では居心地の悪さを感じ、ストレスからか娘は問題行動を繰り返します。


やがて20年前の幼女殺人事件とそっくりのシチュエーションで千鶴の幼なじみの子供が次々と殺され始めます。


20年前の事件の同一犯が再び殺人を開始したのか?


被害者の家に電話をかけ、奇妙な童謡を唄う犯人の真意とは…?







ちなみに作者によると本作は『とおりゃんせ殺人事件』というタイトルで出版されたものを『赤いべべ着せよ…』に改題されたということです。


『とおりゃんせ殺人事件』だといかにも童謡殺人モノのようですが、実際にはそんなことは全くありません。


改題して正解です。



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