現地からの写真や映像を見て、言葉を失った。国内3大急流の1つの球磨川は豪雨で「暴れ川」と化して氾濫し、街は洪水に飲まれてしまう。自治体によっては役所の機能が失われ、コンピュータシステムもダウンしてホームページのサーバーも異常をきたしたため、職員は総出で各所に電話をかけて被災者の状況確認を進めたと聞く。週末土曜日に肥後や薩摩、大隅を襲った集中豪雨は半世紀に1度という規模の未曾有の量で降り、気象庁は特別警報を出すに至った。

 前述のように、球磨川沿岸では相当級の被害が出てしまう。複数の犠牲者や行き方知れずの者も出た人的被害に加え、鉄道や道路は寸断された上に住宅も水没した。JR九州の肥薩線は人吉市の人吉駅など複数の駅で線路が冠水した上に八代市の球磨川第一橋梁が流失し、球磨川第二橋梁も水没したが、国内に2つしかないトランケート式という工法に加え、できてから1世紀という貴重な鉄道財産がこのような事になろうとは、地元の人だけでなく鉄道好きな方にも大きな衝撃を与えた。肥薩おれんじ鉄道では芦北町の佐敷駅で線路が冠水するなどし、くま川鉄道も人吉市の人吉温泉駅などで土砂が流入するなどの甚大な被害を出した。これらの路線が復旧するには相当の時間がかかるが、来月には豊肥線が全線で復旧するという時に天災でまた被害が出てしまった事には心が痛む。

 鹿児島は二重の衝撃である。この豪雨による被害に加え、鹿児島市内中心部の天文館にある若衆酒場を発端とした新型コロナウイルスの感染拡大(この感染被害は県外にも及んでいる)もあり、県はそれぞれの対策を講じなければならない。避難所ではコロナの感染防止のために密にならないようにしないといけないので、役所の職員も地元の住民もやりにくいであろう。今後も梅雨の豪雨は起こる可能性があるので、鹿児島だけの問題ではない。

 被災地は電気が復旧し、物流も九州自動車道の通行止が解除されて滞りがなくなりつつある。梅雨の大雨被害は毎年のように起こるが、その解決策はなかなか見出だせないのが現状と言えよう。できるだけ精度の高い予報を出して被害を少しでも抑える事を願うと共に、被災地の早い復興を願いながら、この話を締める事にする。