GISHIKIの示すもの | 空の太陽が落ちる前に

GISHIKIの示すもの

ドームから3日がたった。
まだ、以前のペースに戻れず、皆さんの記事も全部は読めないまま
昨日も寝てしまった。
読ませて頂いた記事には今回のドームに賛否が分かれ、
特にコアなファンの方程、少し不満が多いのかなという感じ。
音響や3人との距離、セットリストetc、過去の経験をたくさん
持ってるだけに期待する物も大きい訳で、仕方ない。
でも、今回のドームは今迄のライブと全然違うもの、
ライブをする目的が全く性格のちがうものだったはず。
従来の興行としてのライブとは違って当然だし、そこに求めるものの
ズレがあるんだと。

今回のライブはイベンターや事務所が主体で企画したものではなく、
3人が希望して、主体として場所を選び実現した。
そして選んだ場所が東京ドーム。
何故そこを選んだのか。ただ自分達の歴史の金字塔にする為に?
あこがれの場所だから?
いつもファンの事、Perfumeの事を物心がついてからの
全人生をかけて深く深く、考え続けて来た3人がそんな軽い
理由で選ぶ訳が無い。
音響の悪さも距離の遠さも全部分った上で、あえて選んだ場所。
何故?
3人は特別な記念の年のお祝いの日と言った。
10年の区切りその感謝、新たな11年へ向かう決意、想いを出来るだけ
多くのファンに一同に会してもらった場で伝えたい。
ドームはその為の特別な日、特別な場所だったんだ。
記念じゃなくて祈念の日なんだと。

オープニングはインパクトがなかったという人が多い。
僕はものすごく感動した。
あれから、もう3日がたったというのにオープニングの光景、
あの時僕の中を駆け抜けた衝撃が、いまだに繰り返し繰り返し、
僕の目を潤ませる。
あの時、あの場所では痺れたようになり、近付いてくるかしゆかを、
のっちを、あ~ちゃんを瞬きをする事も忘れて見つめるだけだったのに・・・
声も忘れ、ひたすら夢が始まった事に、夢が現実に起こった事に鼓動を
限界まで高めながら。

あの時、突然幻のように姿を現した3人。
遠い花道の先に現れた3人にすぐに気付かず、スクリーンに映った3人の姿を、
イメージ映像だと最初は思い・・
そして3人のナレーションが耳に飛び込んできて。
「私達の夢にみた・・・」凛とした、でも何故かかすかに震えて聞こえた声。
そして、カウントアップ。
近付いてくる彼女達の表情には、この場に対する歓喜と同時に、
すごく強い決意と、すごく厳かで神聖なものを感じた。

時間のたつのも忘れて、50,000人の観客すべてが、こそとも音をたてず
見つめる3人の道行き。
純白のウエディングドレスのような衣装に身を包んだ3人は、ヴェールを
両手でかかげ、しずしずとセンターステージに近付く。
その間静まり返った会場に、3人のカウントアップだけが響く。
いつものように澄んだ、でも落ち着いた3人の声。

「GISHIKI」という名前を知ったのは、家に帰ってからだが、
あの時の3人の姿は物凄く神々しく、凛々しく人間離れして見え、
まさに、すごく大事な儀式が今行われているんだと感じた。
今、行われていることこそ、今日の彼女達の想いを象徴している
んだと、ひとり思っていた。
「これは単なるパフォーマンスなんかじゃない」と
目頭を限界まで熱くするものを、必死でこらえながら
3人の道行を見届けた。

道の終点にはテント。
神殿のような神聖な場所に足を踏み入れるかのように、一礼をして
中へ姿を隠す3人。
テントに投影されていた数字は0。
元に戻る、初心に帰る、生まれ変わる為の0。

「GISHIKI」。それは禊(みそぎ)なんだと、僕は感じた。
死に装束や無垢なるものを表す純白の衣装は、再生のために必要な
自分の無への帰結を示しているんだと。
禊、それは新たに生まれ変わるための命の蘇りを意味する言葉。
そして、生まれ変わると言う事は後ろに戻ってやり直すことではなくて、
前へ進む事。
前に進む為には過去に囚われず、過去の想いを感謝にする事が必要。
それが出来てはじめて心の蘇りが出来、前へと進む生まれ変わりができる。

常に進化し続け、挑戦し続け、夢追い人で先導者でありつづける為に、
必要な過去との訣別。
思い出を捨て去るなんてバカな意味じゃなく(そんなことあの娘らが
するわけがない)けじめをつける為に。
禊が出来るのは、10年間ひとえに支え続けて来てくれたすべてのファン、
スタッフに心の底から感謝が出来るから。

身を清め、心を清め。神聖なその時の為に。
そしてかしゆかの旅の目的も、そこにあったのかもと思う。
五十鈴川の聖水を汲んで来たのかもと。

その想いを声高に説明する事も無く、静やかに厳かに執り行われた
「GISHIKI」。
それは、すべて僕たちファンの為に考え抜かれた事。
過去の感謝とこれからの決意を、溢れる想いを伝える為に。
ただその為に。
なんと気高く、なんと真摯な想い。
だから、この娘達は最高だ。