グランド・イリュージョン 見破られたトリック / NOW YOU SEE ME 2 (7点) | 日米映画批評 from Hollywood

グランド・イリュージョン 見破られたトリック / NOW YOU SEE ME 2 (7点)

採点:★★★★★★★☆☆☆
2016年9月3日(映画館)
主演:ジェシー・アイゼンバーグ、マーク・ラファロ、ウディ・ハレルソン、デイヴ・フランコ、リジー・キャプラン、ダニエル・ラドクリフ、モーガン・フリーマン
監督:ジョン・M・チュウ

 

【一口コメント】
 前作の続編となっているが、ストーリー展開としては続編と言うよりも、2部作の後編という感じなので、そのつもりで見る分には遜色ないが、続編として見ると緻密さと爽快感に欠ける作品です。

 

【ストーリー】
 マジシャン・チーム、"フォー・ホースメン"、イリュージョン・ショーを通して不正に搾取された金を奪い返す世直し集団。そんな彼らが1年間の沈黙を破り、不正に個人情報を盗み取ると言われる携帯電話の発表会をジャックする。しかし、そこにウォルターというマカオの裏社会を牛耳る天才エンジニアの策略にはまり、4人は一瞬にしてアメリカからマカオへと移動してしまう―――。

 

【感想】

 ある日、映画館を訪れて本編上映前の予告編上映の際に奮えた!2013年に公開され、ここ数年でもトップ・レベルの作品だった「グランド・イリュージョン」の続編の予告編が流れたからだ・・・。
 

 最初に言うとすると、前作ほどの緻密さと爽快感はないが、イリュージョンは楽しめる・・・そんな感じ。
 前作ほどの緻密さと爽快感がない理由としては、前作はイリュージョンだけでなく、いわゆるマジックがいくつも散りばめられていて、そのマジックがイリュージョンの伏線となる流れが幾重にも絡まり合っていたのだが、今作はそこがつながっておらず、マジックはマジック、イリュージョンはイリュージョンと独立していた。
 例えば、マジックは最初の携帯発表会の裏に潜り込んだアトラスが歩きながら衣装を変えていく流れに見られた。ネクタイと襟が変わり、ジャケットが変わり、靴が変わり、そして寿司っぽいものが載ったトレイがカバンに変わる。この一連の流れが後にイリュージョンに組み込まれるというのが前作のノリだった。後は女性新メンバーの登場シーンもそのノリなのだが、せっかくの面白い登場シーンも後につながる流れにはなっていなかった(まぁ、それだけでも単純に楽しめるし、他の作品であればそれなりのレベルと言えるので、単純に前作の脚本の伏線の回収がハイレベル過ぎたとも言える)。
 しかし今作ではマジックらしいマジックがイリュージョンにつながるのはマカオのマジック商店に陳列されていた水が丸くなり、上昇する小道具くらいだった。

 

 またいくつか突っ込みどころもあったのが、前作とは異なる点。前作も1つ1つのマジックやイリュージョンを単体としてみれば突っ込みどころは合ったのだが、他とのつながり(伏線としての位置づけ)があったため、必然性というものが感じられた。しかし今作では伏線としての位置づけがなくなり、必然性を感じないため、そこまでする必要があるのか?というシーンがいくつか見られた。
 自分が一番違和感を感じたのが、マカオのとある設備からチップを盗む際のカード・マジック。金属探知機を通り抜け、とあるコンピューターからチップを盗み出すシーンがあるのだが、その中で見せるカード・マジック・・というかカードの受け渡しのシーン。一言で言うとくどい。テクニックとしてはすさまじいものなのだが、正直4人が複数回受け渡す必要性があったのか?というのが謎のままだし、その後の伏線にもなっていない(チップそのものはもちろん伏線となるが、カードの受け渡しに関するテクニックはここだけの見世物)。絵としては格好良いのだが、受け渡しに関わるのは2人でも良いし、何ならウォルターの催眠術を使っても良かったのではないか?

 前作はマジックとイリュージョンのバランスが絶妙だったのだが、今作はイリュージョンに比重がかかりすぎたとでも言えば良いだろうか?
 ただしそのイリュージョン自体は格段にレベルアップしている。前作は舞台がラスベガス⇒ニューオリンズ⇒ニューヨークとアメリカ国内3都市だったのが、今作ではアメリカ⇒マカオ⇒イギリスと3都市から3か国へとスケールアップしているし、1つ1つのネタも素晴らしい。特に最後のロンドンで見せるイリュージョンは今作でもエンドロールに名を連ねた"Magician of the Millenium"のデビッド・カッパーフィールドっぽい壮大な仕掛けでとても興奮した。
 既に上述しているが、この作品で唯一ともいえるマジックとイリュージョンに伏線としての関連性があるロンドンで行った雨を文字通りストップするイリュージョンも素晴らしかった。

 

 今作の悪役としてハリー・ポッターを演じたダニエル・ラドクリフが出演している。天才エンジニアとしてマカオの裏社会を牛耳る役どころなのだが、登場シーンから何とも憎たらしい演技で一気に物語へと引き込んでくれる。

 最後に、この作品は続編となっているが、ストーリー展開としては続編と言うよりも、2部作の後編という感じ。特にモーガン・フリーマンの役どころが、続編として見ると前作の設定を完全否定しているため、何かモヤモヤ感が残る。しかし続編ではなく、2部作の後編として見る分にはなるほど!感に満たされる。
 また前作がかなり緻密な脚本でマジックとイリュージョンのバランスがとても良かったのだが、今作はそのバランス感がイマイチで、続編として前作と同じバランスを期待しているとそこには気持ち悪さが残る。その点においても2部作の後編として見る分には前作のストーリーの核とも言える部分を否定していることが逆にバランスの悪さも良いスパイスにしてくれる。
 これから鑑賞する人には、続編ではなく、2部作の後編として鑑賞して頂ければと思います。