ハングオーバー 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い(7点) | 日米映画批評 from Hollywood

ハングオーバー 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い(7点)

採点:★★★★★★★☆☆☆
2010年7月24日(DVD)
主演:ブラッドレイ・クーパー、エド・ヘルムズ、ザック・ガリフィアナキス、ジャスティン・バーサ
監督:トッド・フィリップス


 2009年度ゴールデングローブ作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞した作品にも関わらず、日本ではDVDスルーの予定だったが、映画ファンの署名により急遽劇場公開が決定した作品。


【一口コメント】
 コメディーでありながら、ミステリー要素も兼ね備えた傑作です。


【ストーリー】
 結婚を控えた花婿のために男友達が集まってハメを外すバチェラー・パーティー。2日後の結婚式を前にしたダグは、親友のフィル、スチュ、そして婚約者の弟アランと共にラスベガスへ向かう。
 翌朝、ひどい二日酔いと共に目を覚ました彼ら。荒れ放題の部屋になぜか鶏がいる。さらにバスルームにはトラが!?そしてクローゼットには赤ん坊。しかもダグが部屋にいない。しかし皆二日酔いで昨夜の出来事をまったく覚えていなかった・・・。


【感想】
 日本のコメディー映画とハリウッドのコメディー映画の大きな違いは何だろうか?自分が思い描く大きな違いは日本のそれが、"脳の奥で笑う"というイメージに対し、ハリウッドのそれが"抱腹絶倒"というイメージである。
 平たく言えば、日本のそれは、シュールな笑いというか、目の前の展開を見て、それをちょっと考えてから笑う。一方のハリウッドのそれは目の前の展開を見た瞬間に笑える。
 この映画はその両方を兼ね備えたコメディーといえる。

 例えば二日酔いから目が覚める。そしてトイレに向かう。そこになぜかトラがいる。まずトラがトイレにいるという見た目で笑える。そしてなぜトイレにトラがいるんだ?という考えをめぐらした後にまた笑える。
 そしてこの映画はその考えるという行為をさせることを前提として作られている点も面白い。どこからどうみてもコメディ映画なのだが、花婿が行方不明でその行方を捜すというミステリーの要素が入っていることで、他のコメディー映画とは一線を画している。しかも1つ謎を解くたびに新事実が発覚し、次から次へと謎がつながっていく。
 例えば、前夜に訪れたチャペルに行って、ダグがその時点では一緒にいたという事実が判明したと同時にステュが見知らぬ女性と結婚していたという事実が発覚し、その見知らぬ女性が誰なのか?という謎が生まれる。まさに謎が謎を呼ぶ展開であり、そのあたりはコメディーではなく、超一級のミステリー作品である。

 また各登場人物のキャラが際立っていて、その言動1つ1つが笑えるというのもこの作品の上手いところ。ヒステリックな恋人に行動を監視されているまじめな歯医者のスチュ、教師でありながら一番軽い性格のフィル、そして天才でありながら変人テイストなアラン。
 ステュはヒステリックな恋人との電話をする度にその会話の内容で笑わせてくれるし、フィルはその破天荒な行動で笑わせてくれる。そしてアランに至っては1個1個の言葉や動きが、すべてコミカル。
 さらにその他の登場人物やアイテムもキーワードだけ並べてみても面白い。ホテルの部屋の鶏と虎、ベンツのはずがなぜかパトカーになった乗用車、見ず知らずの美人ストリッパー、中国人マフィア、そしてマイク・タイソン。

 これらすべてが微妙につながりあって、導き出されるダグの行方。ここまで見事な伏線回収は久しぶり。しかもそれがミステリー映画ではなく、コメディなのだから、素晴らしい。
 オリジナル作品かつ、一流有名俳優が出ていないくても、アメリカ国内では2009年度年間第6位の興行収入を挙げ、ハリウッド映画もまだまだ捨てたもんじゃないということを認識させてくれた作品。
 ジャッキー映画よろしく、エンドロールでもデジカメの写真で謎解きをして、最後まで大いに笑わせてくれる点も好感が持てる。