めぐりあう時間たち(6点) | 日米映画批評 from Hollywood

めぐりあう時間たち(6点)

採点:★★★★★★☆☆☆☆
2003年5月22日(映画館)
主演:ジュリアン・ムーア、ニコール・キッドマン、メリル・ストリープ
監督:スティーブン・ダンドリー


 2003年のアカデミー賞主要9部門ノミネート、主演女優賞獲得の話題作。今までにない、どのジャンルにも属さないタイプの作品ということで非常に前評判の高かった作品。


 まず余談を一つ、この作品には「リピーター鑑賞割引」というのがあります。要するに何度でも見て欲しいという供給者の意図がこめられているのですが、そういう意図をこめたくなる作品であり、その意図を理解できる作品でもあります。


【一口コメント】
 何の予備知識もない状態で見るのはお勧めできません。ある程度内容を知っておいたほうが、より一層作品を楽しめると思います。


【ストーリー】
 1923年ロンドン郊外、「ダロウェイ夫人」執筆中の作家ヴァージニア・ウルフ。
 1949年ロサンゼルス、「ダロウェイ夫人」を読む主婦ローラ。
 2001年ニューヨーク、編集者クラリッサ。
 これら3つの時代を生きる3人の女性達の1日を順番にではなく、交錯させながら物語りは進んでいく。

【感想】

 見終わった後、この作品のタイトルは素晴らしいと思った。原題は「THE HOURS」(数時間)。そして邦題は「めぐりあう時間たち」。どちらのタイトルも素晴らしい。これほどまでに作品の内容をシンプル且つ的確に表したタイトルが今までにあっただろうか?と思わず考えさせられてしまう内容であった。(普段はあまりタイトルのことなど気にもかけないが・・・)3つの時代を生きる3人の女性達が最後の最後で文字通り、巡り会い、それぞれのエンディングを迎えるという演出には感銘を覚えた。

 しかし疑問に思った点も一つある。それはアカデミー賞主演女優賞が二コール・キッドマンだということ。もちろん彼女の演技は素晴らしいのだが、私としてはジュリアン・ムーアにオスカー像を贈りたいと思った。3人の女性の中で唯一息子がいて、夫もいるという設定であり、現代人にとってはもっとも馴染みやすいキャラクタということもあるが、(他の2人は精神病患者と同性愛者という設定)それ以上に日常の平凡さの中で揺れる"女心"を繊細に演じており、3人の女性の中で最も心をつかまれた女性であるから。

 次に3人の女性たちのそれぞれの見せ場と思えるシーンをそれぞれに挙げていきます。
まず、ウルフは迷うことなく、ロンドンへ帰ろうとする駅でのシーン。追いかけてきた夫に向かって、リッチモンドでの生活の不満、ロンドンへの憧れ、病気の苦しみ、すべての苦悩を爆発させる。この演技に関していえばオスカーに値する演技だったとは思う。
 次にローラ。彼女の場合すべてのシーンが印象深く一つに絞るのは難しいが、やはり子供を知人に預けてホテルへと向かう車の中だろうか。台詞こそないが、母親としての気持ちと一人の女性としての気持ちを非常にうまく演出していた。
 そして最後クラリッサに関しては、ある女性が訪ねてきた直後に、自分の部屋で同性の恋人サリーに感情をあらわにしたシーン。これに関しては後で台詞を紹介したいと思う。

 3人の女性のそれぞれの1日、わずか1日を描いているだけなのにも関わらず、とてつもなく奥深い。女性にとっての幸せとは何か?(男性の自分が語るのもなんだが・・・)それを3つの時代の3人の女性の視点を通して描いており、時代が変わっても、子供がいてもいなくても、同性愛者であっても、幸せというものはすぐ側にあって、なかなか気付けないものなのだということが非常にうまく描かれている。それを端的に表す台詞をクラリッサが言っているので紹介しておきます。

今日が幸せの始まりだと思った。でも違った。あの時こそが幸せだった。