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12月9日に新刊『大学付属校という選択 早慶MARCH関関同立』(日経プレミア新書)が発売になります。
立ち読み代わりに、著者として気に入っているフレーズを以下に抜粋します。

 

 

今、中学受験において、大学付属校への人気が高まっている。二〇二〇年度以降予定されている大学入試改革の影響だと考えられる。
消極的な理由としては、大学入試改革の不透明さを回避するため。積極的な理由としては、探究型学習や教養主義など、大学入試改革が目指す新しい学力観に基づく教育がすでに大学付属校にはあるからである。


 

大学付属校といえば、首都圏では早稲田・慶應・明治・青山学院・立教・中央・法政、関西では関西大・関西学院・同志社・立命館の系列が有名だ。実際の内部進学率が高いことでも他大学の付属校とは一線を画す。


 

そもそもこの内部進学という仕組みは、世界的に見て希有な制度であるようだ。大学付属の学校は世界中に存在するが、身内であることを理由に付属校の卒業生を特別扱いして入学させる制度を公にしかも大規模に運用している大学は聞 いたことがない。(中略)なぜ世界的に希有な仕組みが、日本では発展したのか。
これこそ、日本 のあまりに画一的な受験制度が、世界的に見て希有であることの裏返しであると私は思う。
逆に言えば、「立身出世」「勝ち組負け組」といった言葉に象徴されるように、日本の進学システムが過度に競争的で画一的で減点主義的であるがために、アンチテーゼとして内部進学制度が発達したのではないかと考えられる。


 

強大な受験競争圧力が学校教育のあり方をことごとく規定していく中で、あえて閉鎖性を高め、外圧がおよぶのを阻止し、独自の生態系を進化させたのが大学付属校だったのかもしれない。いわば受験競争の猛威を免れた「自然保護区」である。あるいは日本の教育におけるいい意味での「ガラパゴス」である。

 

 

表現の仕方はいろいろあるだろうが、これまで触れてきた、大学付属校で学ぶことの利点はおよそ次の三点にまとめられる。
⑴大学の資金力・人的資源を利用できる……高機能な校舎、高価な教具の導入、広大な校地、充実した体育施設、大学教員による特別授業、大学キャンパスでの特別聴講制度、大学研究室での実験、大学図書館の利用、大学での資格試験指導、大学留学生との国際交流、大学生によるチューター制度、大学生コーチによる部活指導など。
⑵社会に出るまで一つの集団の中で育つ……一生の友人、強い帰属意識、理念の浸透、同窓会組織の結束など。
⑶内部進学制度で大学に行ける……幅広い教養教育、探究型学習/プロジェクト型学習/アクティブ・ラーニング、実用英語、国際交流・留学、大学範囲の学び、部活や行事や趣味への没頭、大学以降の具体的プランなど。
ただしこれらは落とし穴にもなり得る。「両刃の剣」だ。


「大学受験がないということを生かすも殺すも生徒本人次第」という意見は卒業生からも教員からも幾度となく聞いたが、実は学校も同じ問題を突きつけられているのである。口では「大学受験に縛られない本質的な学び」と言いながら、実際にはペーパーテストでいい点を取らせることに必死になっているのだとしたらもったいない。


 

どんなに頑張っても一〇〇点満点以上はない。 より多く得点することよりも、人と違うことができることよりも、大事なのはミスをしないこと。しかも学歴社会の中では、一発勝負の入試本番でのたった一つのミスが人生を大きく左右することになる。 この構造が減点法の社会を成立させている。

 


多くの卒業生や教員そして専門家が、「楽して大学に行けて、世間に通用する学歴を手にすることができるといった理由で大学付属校を選択するのはお勧めできない」と口を揃える理由もそこにある。そんなせこい損得勘定では大学付属校の本当の価値はわからない。
むしろ両刃の剣によって大怪我をすることになりかねないというわけだ。大学付属校という選択をするのであれば肝に銘じなければならない。

 


同時にそれぞれの大学グループが、付属校ではない高校とも提携を結び、一対一ではなく複数対複数の大学・高校間提携を拡大する……。
いつの間にか全国の大学と高校が「内部進学制度」で結ばれるというわけだ。 そのとき「内部進学制度」という言葉が消える。

 


しかし今、「明治維新以来 の教育大改革」を実行するつもりが本当にあるのなら、まず明治以来受け継がれてきた「教育」という概念の再定義 が必要であろう。教える側が主体となるのではなく、学ぶ側が主体となる「教育」のあり方への転換が必要だ。
たとえば「教養(=自分で考える力)を育てる」などいかがだろう。

 

 

 

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