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育児・教育ジャーナリストおおたとしまさのブログ


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6月18日発売の新刊『ルポ 父親たちの葛藤 仕事と家庭の両立は夢なのか』(PHPビジネス新書)の中から、仕事と家庭の両立のためのヒントとなりそうな、著者として気に入っているフレーズを、一部抜粋して掲載します。


はじめに

これでは「イクメンブーム」が、本当に単なるブームだったと言われてもしかたな
い。正論や理想が大々的に掲げられた一方で、現実は変わっていなかった。これまで
のイクメンブームの盛り上げ方に短絡的な部分があったと、認めざるを得ないのでは
ないかと私は思う。


第1章 自らブラック企業化する父親たち

しかしそれ(「仕事を効率化すれば成果を落とさなくても家族時間を捻出できる」という言説)こそが20世紀の日本企業が好んだ「やればできる、できるまでやれ、弱音を吐くな」的なマッチョイズムであるという矛盾をここで指摘しておきたい。

イクメン推進運動そのものが、「生産領域(賃労働)での成果が見込まれるからこそ再生産領域(家事や育児)への参画が認められるのだ」という仕事優先の理屈や「再生産領域よりも生産領域のほうが上位概念である」という旧態依然の価値観に乗っかってしまっているという痛烈な指摘だ。

イクボスは「業績も向上するということを実証」しなければいけないのだ。さきほど指摘した「生産領域(賃労働)での成果が見込まれるからこそ再生産領域(家事や育児)への参画が認められるのだ」という理屈が見事に踏襲されている。

・「残業などしないで早く帰ろう!」←→「業績は落としてはいけない」
・「男性ももっと育児や家事をしよう!」←→「仕事ができない男はかっこ悪い」
これらのダブルバインドメッセージが妻からも会社からも代わる代わる発せられる。そして父親たちはパニックに陥る。自分のあるべき姿を見失う。


第2章 夫の本音

どんなに妻のことを愛し、気遣っていたとしても、気持ちがすれ違うことはある。自分自身の心に余裕がないときには、つい妻を傷つけるような一言を発してしまうことがある。人間、死ぬまで未熟だ。


第3章 妻の本音

「会社として男性でも育休取得率100%を掲げているので、形だけでも育休を取ったことにしたいのでしょう。もともと休む予定だった日のうち1日を、形だけ育休にするんです。でももう子供は8カ月ですよ。いちばん夫にそばにいてほしかったときに、夫もわが子の顔を1日でも早く見たいときに、会社はそれを許してくれなかったんですよ。それなのに今さら、企業イメージアップのために育休を取れだなんて、勝手すぎます。全然ホワイト企業じゃありません」


第4章 会社の本音

「会社の研修では『あんなことは言ってはいけない、こんなこともダメ』と言われるばかりで、管理職であるこちらが萎縮してしまいます。特に女性社員については腫れ物を触るように接する感じです。あくまでもこちら側の一方的な理屈で本音を言えば、『女性というパワハラ』を常に受けている気分になります」

「その意味では例の宮崎謙介議員は失敗だった。不倫は置いておいたとしても。そもそも国会議員なんだから自分で働き方を設計できたはず。本当に妻をサポートし、子育てに重きを置きたいと思うのなら、育休制度なんて形にこだわらず、『妻が出産したら、私はこういう働き方をします』と具体的な絵を描いて世に示せば良かったのです。収入だって減らない保証があるのですから。そうすればそれが国会議員の新しい働き方として認められ、結果、育休制度に似たものもできたかもしれない。彼の場合は『育休』という響きを自分の宣伝に利用しようとして、かえって世の中に混乱をばらまいてしまったと言えるでしょう」

「大企業に勤めていて育休を取ると、社員は微妙な不安を覚えるのではないでしょうか。だって昨日まで『自分にしかできない』と思っていた仕事を手放したのに、会社は普通に回っているという現実を突きつけられるわけです。誰の口から言われるわけではありませんが、『お前の代わりはいくらでもいるから』というメッセージを受け取ることになるわけです。気づきたくなかったことに気づいてしまう残酷さが、大企業の育休制度にはあります。そこに目を向けたくないから、多くの大企業社員が育休を取ることに無意識の抵抗を感じるのではないでしょうか。会社の雰囲気がとか、同僚の目が気になるとか、育休を取らない言い訳はいくらでもつけられますが、根本はそこではないでしょうか」


第5章 かっこつけない、がまんしない

家族との時間を大切にしたいと思っているのなら、意識を向けるべきは「仕事を早く終わらせる方法」ではなく、「家族との時間そのもの」であるべき。それなのにまず仕事を終わらせることに意識をもっていかれること自体、無意識が仕事優先の価値観に乗っ取られている証拠なのだ。

まあ実際のところ、現代社会においてマッチョが求められるのは、キッチンに出現したゴキブリを退治するときくらいではないかと私は思うのだが。

夫婦喧嘩にはコツがある。一言でいえば、無理に結論を出さないことである。

家庭内の不満の原因を、社会のせいにすることは簡単だ。しかしそれは同時に、自分たちにはその不満を解決する能力がないと宣言することに等しい。自らの無力を認めることになる。

仕事と家庭の両立も、そんなものではないだろうか。ぴたっと適温になることなんてない。常に調整し続ける。でも実はそれこそが面白い。


おわりに

「仕事と家庭の両立」とは言うけれど、必要なのはマルチタスクのスキルではない。大切なのは、もっと頑張ることではなく、何かを手放す勇気なのだ。要するに、自分は何をして、何をしないのかをはっきり選択することに尽きる。
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