いよいよGW後半戦。子どもと一緒に自然の中に出かけたり、伝統文化に触れたり、スポーツ観戦したり、芸術鑑賞したり、博物館に行ったり、美術館に行ったりというご家族も多いでしょう。

 

そんなときに、教育熱心な親御さんほど気をつけてほしいことがあります。そこでいまからちょうど10年前に私が書いた本『続・子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?』から、絵本作家の五味太郎さんのことばを紹介したいと思います。

 

この本は、「子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?」というテーマで私が7人の識者にインタビューして、その内容をまとめたもので、シリーズとして3冊ほどあります。たくさんの中学入試、高校入試、大学入試でも使われています。

 

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本当に下品だと思うのは、キャンプに行って森に入っていって、たとえば昆虫に興味を持ってほしいみたいな発想。海辺に行って海の生物に関心を持ってほしいとか。そこで興味や関心を示さないと、そういう大人は怒るんだよね。はっきり言ってこれ、幼児わいせつみたいでしょう。「ちょっとおいで。おじちゃんがいいこと教えてあげようか」みたいな。子どもが望んでいるわけでもないのに大人の満足に子どもを付き合わせているという点で、同じでしょ。

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親としては学校のお勉強とは違う、生の体験をしてほしくってそういうところに連れて行くわけですよね。

 

その体験をすること自体に意味があって、そこから何を学び取るのか、何も学び取らないのかは、本来子ども次第なんですが、せっかくの体験から、できるだけ多くのことを学び取ってほしい欲に駆られて、親はつい余計なことをするんですよね。

 

簡単に言ってしまえば、「これはこうであれはああで」と、本来言葉にはならない体験を子どもが自分の中で消化して行く前に、気づいてほしいことや学んでほしいことを言葉にして説明しちゃうんですね。それは下品だと、五味さんは一喝するんです。

 

体験が子どもの中で時間をかけて意味を持ち始めるのを待てない。ここではこんなことに気づいて、こんなことを考えて、こんなことを知るのが正解!みたいになっちゃう。それじゃ、学校のお勉強と変わらなくなっちゃう。

 

もっと子どもの感性を信じて、本物の体験の力を信じて、ただ見守っていればいいんじゃないかと思います。期待していた通りのリアクションじゃないかもしれません。でも、そのときの子どものリアクションをそのまま受け止めて、それを面白がってあげるのがいちばんだと思います。

 

大人の期待通りになるように子どもをひっぱるようなことは、極力避けるように、自分を戒めながらさまざまな体験を子ども目線で楽しめるといいんじゃないかと思います。

 

ちなみに、絵本の読み聞かせ会みたいなところに呼ばれても、五味さんは「なんでそんなことするの?」と聞くんですって。「子どもは読めないから読んであげる」という答えに対して「余計なお世話だろ!」って言って、その場の空気が凍り付くんですって。

 

読み聞かせをたくさんしてあげると読書が好きな子になって、将来勉強が得意になるとかって、親がつい欲を感じてしまう気持ちは私もわかりますが、五味さんに言わせれば、子どもを尊重できていないという意味で下品な発想なんだと思うし、私も自戒を込めて、そう思います。