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『男性漂流』(講談社)、『男がつらいよ』(KADOKAWA)、『男はなぜこんなに苦しいのか』(朝日新聞出版)、『男という名の絶望』(幻冬舎)などなど、寅さんもびっくりするほどに、男性に同情的な本が続々出版されている。


そして6月1日にはタレントの小島慶子さんと男性学研究者の田中俊之さんの対談本『不自由な男たち』(祥伝社)が出版される。小島さんとは女性誌のイベントでご一緒したことがある。田中さんとはときどきお話しする仲である。そして本日たまたまこの本の編集担当者と打ち合わせをした。本当にたまたま。ちなみに6月18日には拙著『父親たちの葛藤 仕事と家庭の両立は夢なのか』(PHP研究所)が発行される。田中さんにも取材にご協力いただいている。


冒頭に紹介したこの手の本は、読んでいるとちょっとしんどくなることがある。あんまり明るい話ではないので。でもこの本は、小島さんのぶっちゃけトークを田中さんがアカデミックに受け止めるという構図で非常にバランスが取れていて、そのほかの類書よりも気軽に読める。


仕事に家庭に、小さなストレスがちり積もって万年雪のようになっている男性におすすめだ。万年雪がじわりじわりと溶け出すかもしれない。


盟友常見がこの本のことを書いたブログ、面白かった。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/tsunemiyohei/20160531-00058292/


就活で「男らしさって何ですか?」と会社に聞けというのだ。これはいい。「やりがいってなんですか?」とかはいくらでもきれい事が言える。しかしこれは答えにごまかしのきかない質問だ。就活でこういうやりとりができるようになると、日本の就活も変わってくることだろう。


ちなみに私は、就活でリクルートを受けたとき、人事採用担当者に「おおたくんは、10年後、どんな男でいたいと思う?」と聞かれた。今考えると、いい質問だ。「10年後ということは、32くらいということか……」。そう考えて私は答えた。「強くて優しいお父さんでいたいと思います!」。担当者はずっこけていたが、これもまた、今考えると、いい答えだったと我ながら思う。そして実際、9年後には、仕事と家庭の両立をあっさり諦め退職し、今のライフスタイルになった。


さて、『不自由な男たち』の中で私が個人的に膝を打ったのは、P137の小島さんの台詞。


「イクメンはえらく、仕事人間はアホ」ではなく「稼ぐ男もあり、家事する男もあり、両方あっていいじゃない」という言い方に変えていかないと、結局歴史はくり返すだけです。


そしてそれに続く田中さん応答。


「そもそも、自分がイクメンであることを本当に誇りに思っているのなら、一生懸命に働いている人を見下す必要はないはずです」


さらに小島さん。


最近「イクメンの俺が意識高くて、えらい」みたいになる、男の人の良くないところが出てきていると思います。


これこれ。


私が田中さんと出会ったとき、まさにこの気持ち悪さを強烈に感じているころだった。男性の育児が推奨されるのはいいのだけど、「意識高い系イクメン」が跋扈し始めていて。


男性学の観点からはどうなんだろうと、おそるおそる田中さんに近づいて、「男性にも多様な生き方が認められることが大事で、男性がみんな育児をしなくちゃいけないと押しつけるのも違うよね」という問題意識を共有し、ほっとしたのを覚えている。


私もよく勘違いされる。「おおたさん、世の中にもっとイクメンを増やしてください!」と言われるのだ。たしかに私は悩んでいる父親支援をしている。しかし私は、子育てをしようとしているのに困っている人の手助けはしたいと思っていても、イクメンを増やそうなどとはもともと思っていない。それは本人あるいはその家族の自由だからだ。


というわけで、この本の主題は「男らしさ」に縛られている男たちなのであるが、たとえば、日本人であるという属性ゆえに「日本人らしさ」を押しつけられたり、それに縛られたりするのは嫌なのと同じように、男であるという属性ゆえに「男らしさ」を押しつけられたり、それに縛られたりするのが嫌なのは人間として当然だろう。


そんなことを考えながらこの本を読んでいたら、ふと、小島さん自身が「小島慶子らしさ」に縛られていないか、「不自由な小島慶子」になってはいないか、という問題もちょっと気になってしまった。


いつもあのテンションでいろんなことに怒りをぶつけながら、かつ、面白くいなくてはいけないというのも大変だろうなと。タレントというのはそういう職業なのかもしれないし、人間とはそもそも演じる生き物であると平田オリザさんなんかも言っているから、まあいいのか。余計な心配であった。


しかしだとすると、「男を演じる」というのも、自覚的にできているのなら、まあいいことになる。「男らしさ」に縛られるのはばかばかしいが、自分が「男らしさ」に憧れていて、それが自分にとっても周りの人にとっても心地よいのなら、まあそれはそれでいいのかもしれない。「男らしさ」から解放されようと思うあまり、そこまで否定しようとするとそれはそれでつらくなることもあるだろうから。


あ、そういえば、ちょうどそんなことを、前述の拙著『父親たちの葛藤 仕事と家庭の両立は夢なのか』では、「男らしさを意識化する」「マッチョ度を意識的に調整する」と表現した。


いや、本当に、我田引水するつもりでは全くなかったのだが、自然な流れで、最後は自分の本の宣伝になってしまった。思いは通ずるものだ。あしからず。


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