- 第八話 『存在の意味』
午後五時。
ニューソクの外れの夕日が射す森の中。
そこにクルト博士の元・研究所があった。
数年前から誰も使っておらず、壁はツタだらけ、窓ガラスも割れており
とてもじゃないが人がいるような雰囲気ではなかった。
その廃墟とも言える少々規模が大きな研究所に、一人の影。
クーだ。
川 ゚ -゚)「……また、ここに戻ってくるとはな」
一人呟く。
自分の存在が定義付けられた因縁の場所。
失敗作と呼ばれ、ここを出て以来一度も来ていない場所。
二度と、来たくは無かった場所。
川 ゚ -゚)「…………」
無言で足を進めていく。
今の彼女に躊躇はない。
彼女は、『これから』強くなろうとしているのだから。
- ――遡ること、四時間前。
『バーボンハウス』で過ごすようになって数日が経った。
仕事にも慣れつつ、少しずつ心の氷を溶かしていくようにも見えた彼女に
一つの仕事の依頼が舞い込んできた。
依頼主は、弟者。
(´・ω・`)「ちょっと、ここに行ってきてほしいんだ」
ショボンが詳細を書いた紙を差し出す。
受け取った彼女の表情が、青ざめるように一変した。
川 ゚ -゚)「私に……ここへ行け、と?」
(´・ω・`)「うん、申し訳ないと思うんだけどね。
でも三人の中で、そこに一番詳しいのは君なんだよ」
川 ゚ -゚)「確かにそうだが……」
(´・ω・`)「駄目かな?」
川 ゚ -゚)「…………」
嫌だから仕事から断るのは、どうなのだろうか。
嫌だからといって、避けることの出来る仕事なのだろうか。
それは、相手にとても失礼ではないのだろうか。
- クーの頭に様々な疑問が浮かぶ。
そして、ふと苦笑。
自分の常識の無さを、今さらながらに痛感する。
川 ゚ -゚)「……解った、私に任せてくれ」
(´・ω・`)「ありがとう。
帰ってきたら、オレンジジュース奢るよ」
川;゚ -゚)「いや、別に私はオレンジジュースが特別好きなわけでは――」
(´・ω・`)「じゃあ、何が良いかな?」
川 ゚ -゚)「あ、いや……わざわざ注文するつもりもない。
オレンジジュースでいい」
(´・ω・`)「そう?」
――それが四時間前だ。
今、彼女はクルト博士の元・研究所にいる。
仕事のためとはいえ、いつかは来なければならなかった場所。
過去の自分に決着をつけるために。
- 川 ゚ -゚)「しかし……荒れ放題だな」
中は凄惨の一言だ。
机は倒れ、椅子は破壊され、棚は無惨にも倒れ、本や資料はバラバラ。
まるでわざと荒らしていったかのような光景だ。
だが――
川 ゚ -゚)「…………」
クーは見つけた。
床が見えぬほど荒れているそれに、足跡と見える泥がついていることに。
点々と、一定の方角を目指して続いていた。
つまり、誰かがここを通っていったことになる。
しかも最近に、だ。
川 ゚ -゚)「……用心するか」
隠していた刀を腰に差す。
点々と続くそれは、ある部屋に入っている。
ドアを少し開き中を伺うが、人の入る様子はない。
川 ゚ -゚)「……?」
足跡と思われるそれは、そこで途切れていた。
部屋の中は相変わらず乱雑としているが、床が見えることはない。
- 川 ゚ -゚)「どこへ――」
( )「動くな」
男の声と、カチャリという音と共に、クーの後頭部に硬い何かが押しつけられる。
冷たい感触の正体はおそらく拳銃だろう。
川 ゚ -゚)「…………」
( )「……名乗れ」
川 ゚ -゚)「クー、だ」
( )「クー……? あの、失敗作か?」
その言葉は、今の彼女にとっては禁句だった。
瞬間、クーの身体から殺気が溢れる。
背後の男の視界から消えるように、膝を折りしゃがむ。
( )「!?」
- 銃口を下に向けようとした時には、既にクーの腕が男の腕を捕らえていた。
(;´_ゝ`)「クッ……!」
その見覚えのある顔に、クーは目を見開いた。
川;゚ -゚)「お、弟者……さん?」
続いて男も目を見開く。
(;´_ゝ`)「え?」
川;゚ -゚)「え?」
- ブーンの部屋にメロディが響く。
それは、ブーンの携帯から鳴っていた。
( ^ω^)「お?」
取り出し、通話ボタンを押す。
聞こえてきた声は――
( ,,゚Д゚)『内藤か』
( ^ω^)「ギコさん?」
意外な相手に、ブーンは戸惑う。
ギコはそんなブーンに構わず話を続けた。
( ,,゚Д゚)『話がある。 今、時間はあるか?』
( ^ω^)「はいはい、いつでもどうぞですお」
そうかと言い、しばしの沈黙。
確認するような口調で
( ,,゚Д゚)『……クーはそちらに戻っていないな?』
(;^ω^)「え、いや、その……はいだお」
- ( ,,゚Д゚)『焦るな……事情は知っているからな』
(;^ω^)「どこにいるか知ってるんですかお!?」
思わず、声を荒げる。
( ,,゚Д゚)『知ってはいるが……教えることは出来ん。
彼女はまだお前とは会えない』
(;^ω^)「ど、どういうことですかお……?」
( ,,゚Д゚)『いずれ解る時が来る。
それよりも――』
( ^ω^)「?」
( ,,゚Д゚)『お前……強くなる気はあるか?』
(;^ω^)「え? どういう――」
( ,,゚Д゚)『答えろ』
- ( ^ω^)「……はい、ありますお」
( ,,゚Д゚)『なら、今からニューソクの……お前らが『キタコレ山』と呼ぶ山の頂上に来い。
ついでにドクオとやらにも聞いて、ついて来ると言うならつれて来い』
(;^ω^)「い、いきなりどうしたんですお?」
( ,,゚Д゚)『伝えておきたいことがある。
それも、指輪に関してだ』
(;^ω^)「わ、解りましたお……んじゃあ、今から行きますお」
( ,,゚Д゚)『待っている』
通話が途切れる。
ブーンは携帯でドクオの番号を出しながら思った。
( ^ω^)(よく解んないけど、強くなれるっていうなら頑張るお。
皆を、自分を、クーを護れるように……)
- 静寂が支配する空間。
乱雑した部屋の椅子に座るのは、二つの影。
先ほど出会った、兄者とクーだ。
( ´_ゝ`)「そうか……弟者を知っているか」
川 ゚ -゚)「貴方は彼の兄なのか。
彼が唯一適わないと言っていた――」
その言葉に兄者は笑みを浮かべた。
( ´_ゝ`)「アイツ、そんなこと言ってたのか」
双子、というヤツだろうか。
その笑顔も何もかも、あの弟者と瓜二つだった。
川 ゚ -゚)「貴方は何故、ここに?」
( ´_ゝ`)「おそらくアンタと同じような目的だ。
クルト博士の研究資料の捜索……しかも依頼主は弟者、だろ?」
川 ゚ -゚)「あぁ」
( ´_ゝ`)「さて、どうする? 俺を殺すか?」
川 ゚ -゚)「…………」
- ( ´_ゝ`)「気付いているんだろう? 俺が『VIP』の一員だということに。
あの病院の一件で、荒巻達とお前が同時期に遭遇したのも
俺が弟者のPCをハッキングして情報を得たからだと、気付いているんだろう?」
兄者はベラベラと真相を語っていく。
川 ゚ -゚)「確かに、許せんな」
( ´_ゝ`)「ならどうする?」
川 ゚ -゚)「以前の私なら問答無用で切り殺していたかもしれんが……今はそんな気分じゃないんだ。
後は勝手にしてくれ」
(;´_ゝ`)「え? あ……おい!」
クーは背を向け、部屋を出ようとする。
予想外だった返答に兄者は戸惑いながら、彼女を呼び止めた。
( ´_ゝ`)「俺、敵なんだけど?」
川 ゚ -゚)「だが、弟者の兄だろう?」
あっけらかんとした返答。
- ( ´_ゝ`)「おいおい、まさかそんな理由で――」
川 ゚ -゚)「悪いか?」
( ´_ゝ`)「…………」
兄者は腕を組み、少し考える素振りを見せる。
( ´_ゝ`)「アンタ……随分とイメージと違うな」
川 ゚ -゚)「何のイメージかは知らんが、私は私だ」
( ´_ゝ`)「自我を確立した、のか?」
川 ゚ -゚)「……貴様に何が解る?」
己への呼び方が変わったことで、兄者はクーの逆鱗に触れてしまったと気付く。
慌てるように
(;´_ゝ`)「あ、いや、悪気があって言ったんじゃないんだ」
川 ゚ -゚)「……時間の無駄だ。
捜索するなら勝手にしろ……ただ、私の邪魔はをするな」
- 再び背を向けるクー。
(;´_ゝ`)「お、おい、だから待てって」
再び呼び止める兄者。
二度目の振り返った彼女の顔には、少しの苛立ちが見えた。
川 ゚ -゚)「……まだ何か用か」
( ´_ゝ`)「まぁな。 これ、見てみなよ」
兄者がファイルを投げて寄越す。
受け取ったクーはそれを怪訝そうな顔で開く。
もちろん兄者への警戒は忘れない。
だが、そのファイルを見ていく彼女の表情が、みるみる変化していく。
川;゚ -゚)「これは……」
( ´_ゝ`)「実に興味深い内容だとは思わんか?
ウェポンに関しての情報もそうだが……って、全部揃ってないけど
それ以外の情報……特に最後の資料はどうだ?」
- 川;゚ -゚)「これを、どこで?」
( ´_ゝ`)「荒巻が集めていた資料だよ」
川 ゚ -゚)「荒巻の? よく手に入ったな……」
その言葉を聞き、兄者は思い出したように顔を上げた。
( ´_ゝ`)「あぁ、そうか……アンタは知らないんだな」
川 ゚ -゚)「何をだ?」
( ´_ゝ`)「荒巻は死んだよ」
川;゚ -゚)「……え?」
兄者は適当に、あの時起こった事を話した。
( ´_ゝ`)「まぁ、ぶっちゃけると俺にとっちゃどうでも良かったけどな。
クルト博士の研究成果を知りたいと思って、『VIP』に接触したわけだし」
- 川 ゚ -゚)「じゃあ、貴方は――」
( ´_ゝ`)「もう『VIP』って名乗る気は無いってことだよ。
後に残ったのは馬鹿と馬鹿と馬鹿だからな」
ジョルジュとツーとクックルのことだろう。
そして彼らが荒巻という司令塔無しで、連携して動くようには見えなかった。
むしろ好き勝手に暴れ出すに違いない。
それはそれで問題だが。
川 ゚ -゚)「それで……この情報を私に見せて、何がしたい?」
( ´_ゝ`)「いや、アンタは知るべきだと思ってね」
川 ゚ -゚)「?」
( ´_ゝ`)「俺の勘なんだが……アンタは、アンタが思っている以上に『重要』な存在だ」
川 ゚ -゚)「重要、だと?」
( ´_ゝ`)「勘だから確証は無いがな。
けど、アンタにクルト博士の情報は見せるべきだと思った」
川 ゚ -゚)「私は失敗作だぞ? 何故、重要だと思う?」
( ´_ゝ`)「今まで、おかしいとは思わなかったのか?」
( ´_ゝ`)「アンタ……何で生きてるんだよ?」
- 意外な問いかけ。
クーはつい言葉をなくしてしまう。
川;゚ -゚)「…………」
( ´_ゝ`)「俺は一応、科学者の端くれだから解るんだが
失敗作や欠陥品ってのはな……本当に役立たずでクズだから、そう呼ぶんだ。
そしてそんな失敗作は、すぐ廃棄か分解さ。
存在が無駄だからな」
川;゚ -゚)「それはつまり――」
( ´_ゝ`)「アンタが生きているってことは……
クルト博士にとって、何らかの意味があるんだと思わないか?」
川 ゚ -゚)「私に……意味?」
( ´_ゝ`)「だってそうだろう。
あの鎖馬鹿も言っていたが、優秀作だの失敗作だの……所詮はサンプルに過ぎない」
- 川;゚ -゚)「まさか――」
( ´_ゝ`)「あるんだよ、『完成品』ってヤツがな。
優秀作のジョルジュ、失敗作のアンタ……そして何かの完成品が、な」
川;゚ -゚)「だが、何故サンプルであるジョルジュと……特に失敗作の私を生かす必要が?」
( ´_ゝ`)「そこまでは解らん。 だから、俺はここまで来た」
川;゚ -゚)「…………」
( ´_ゝ`)「俺は既に『VIP』ではなく、そしてお互いにクルト博士の情報を得に来た。」
だから
( ´_ゝ`)「俺と組まないか? もちろん、この研究所内だけという限定で構わんが」
川 ゚ -゚)(最近の私は……選択を迫られてばかりだな)
だが、悪くない提案だ。
自分はここを知ってはいるものの、専門知識は皆無だ。
兄者と一緒に行動することで、知れる情報が増える可能性がある。
川 ゚ -゚)「……解った、少しの間一緒に行動しよう」
( ´_ゝ`)b「OK、把握した」
- (;^ω^)「ふぅ、疲れたお」
('A`)「久しぶりに登ったな、ここ」
この山は、二人にとってとても懐かしい場所だった。
お互い一緒には遊んだことは無かったが、幼少の頃からの遊び場だった。
頂上までの近道を通り、草木を掻き分け進む。
キタコレ山の頂上に着くころには、既に夕日は沈みかけていた。
一面草原。
頂上には木は生えていない。
昔はこの広大な草原で、サッカーや野球をやったものだ。
よくボールを無くしたが。
( ,,゚Д゚)「来たか」
その草原の中央付近で、ギコとしぃが待ち構えていた。
( ^ω^)「こんばんわだお、ギコさん、しぃさん」
('A`)ノシ「こんちゃーす」
( ,,゚Д゚)「さて……早速話をしようか」
- 挨拶もそこそこに話を切り出すギコ。
その彼の台詞に、ブーンはふと疑問を持った。
( ^ω^)「ギコさん……何か急いでいるのかお?」
( ,,゚Д゚)「……まぁな」
('A`)「?」
(*゚ー゚)「…………」
少しの沈黙。
ギコが、それを破るように口を開く。
( ,,゚Д゚)「で、話の続きだが……お前らは強くなりたいからここへ来たのだろう?」
('A`)「でも、そう簡単に強くなれるもんなんスかね?
漫画とかじゃ、ちょっと修行するだけでメッチャ強くなったりするけど」
( ,,゚Д゚)「簡単なようで簡単じゃない。
本人の素質と、指輪の相性次第だ」
( ^ω^)「素質と相性?」
- ( ,,゚Д゚)「指輪に擬似的な精神が宿っていることは知っているな?」
('A`)「あるのは知ってるッスけど、その存在はよく解んないッスね」
( ,,゚Д゚)「その存在を、今からお前達に知ってもらう」
( ^ω^)「……知ると、どうなるんですかお?」
( ,,゚Д゚)「指輪を知ることは、更に力を貸してくれるという意味に繋がる。
つまり――」
('A`)「それが更に強くなる方法、ッスか?」
( ,,゚Д゚)「あぁ、そうだ。
そしてこれを『OVER ZENITH』と呼ぶ」
( ^ω^)「おーばーぜにす……?」
覚えがあった。
確か始めて戦ったときに、ジョルジュが言っていた言葉。
その言葉を言った直後、彼の持っていた鎖が巨大化したのを憶えている。
- あれがそうなら――
( ^ω^)「ブリーチで言う卍解みたいだお!」
( ,,゚Д゚)「ばん……?
何やらよく解らんが、理解したならそれでいい」
( ^ω^)「卍解っていうのは、刀と会話して――」
( ,,゚Д゚)「さぁ、とりあえず始めよう。
二人とも、指輪を出せ」
( ^ω^)「…………」
押し黙る親友の肩を、ドクオが叩きながら
(;'A`)「ブーン、お前、何ていうか……ドンマイ」
- クルト博士の元・研究所の調査は思いの外、順調に進んでいった。
元々ここにいたというクーと、科学者の端くれである兄者。
この二人が組んで調査すれば、仕事が速いのも当然であるが。
しかし――
川 ゚ -゚)「……無い、な」
( ´_ゝ`)「あぁ、おかしい」
二人の調査は、それこそ無駄が無い完璧なものだった。
そこそこ価値のある資料も手に入ったのだが
川 ゚ -゚)「見付からない……」
( ´_ゝ`)「完成品の情報……ここに無ければおかしいのだが」
手に入った情報は三つ。
一つ目は、クルト博士の経歴。
二つ目は、3rd-Wの情報。
三つ目は、クーとジョルジュについての資料。
- 一つ目は特に重要では無い。
二つ目は割と重要だ。
3rd-Wの場所が記されている。
『ミーディ=アストクルフ』という人物に、指輪を託したらしい。
この情報はショボンの方へ送っておいた。
三つ目は更に重要だ。
クーとジョルジュについての資料。
何故、クーとジョルジュが失敗作・優秀作と呼ばれるかの理由が詳細に書かれていた。
(;´_ゝ`)「これは……!」
川;゚ -゚)「……!」
それは、兄者の疑問を解決……いや、予想を確定する内容だった。
攻撃力はウェポンが司る。
では、体力は?
その疑問の答えが、クーとジョルジュだったのだ。
つまり、クルト博士のとった手段とは――
- 『一から人間を作り出すこと』
(;´_ゝ`)「人造人間……!?」
川 ゚ -゚)「その失敗作が私で、優秀作がジョルジュ……」
何を以って失敗・優秀とするのかも、そこには書かれていた。
クルト博士が作り出した人造人間は、ただ体力が優れているだけではなかった。
ウェポンとの適合適正が調整されているのだ。
その点で失敗したのが、クー。
そして成功したのが、ジョルジュ。
成功したジョルジュには、更なる改造を進めていく。
そしてあの9th-W・ユストーンを使いこなす個体が出来上がったというわけだ。
最後に注釈がある。
戦闘能力を上げすぎ、その分知性を失ってしまった、と。
その結果、あの戦闘狂が出来上がってしまったのだろうか。
対するクーには、ウェポンの適正が無かった。
故に戦闘力強化もされることなく、しかし何故か廃棄されなかった。
クーは、己が失敗作だとは聞いてはいたが、その理由を知るのは初めてだった。
- 川 ゚ -゚)「…………」
資料は更に続く。
そこには、失敗作・優秀作・完成品の定義が記されいた。
失敗■(女性■) 能■は低い。
完全な失敗作である。
し■■■■■■■■■、■■■■■。
優秀作(男■型) 能力が高■、ウェポン適正■一番の反■を示■。
が、改造を重■た結果、情■が欠け落ちている故に■■■■■■。
完成品(■■■) 能力が非■に高■、ウェポン適正も完■。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。
川 ゚ -゚)「ふむ、読めんところが多いな……」
- 隣にいる兄者に資料をまとめて渡す。
受け取った彼は、額に汗を浮かべながら
(;´_ゝ`)「しかし……一から人間を作り出すなど……
ありえんことではないが、よくやる気になったものだ」
川 ゚ -゚)「……うむ」
( ´_ゝ`)「この読めない部分……研究所内にバックアップとかあるのだろうか?」
川 ゚ -゚)「それは考えにくい。
全て、私と貴方で完璧に捜査したからな」
( ´_ゝ`)「そうだな……」
川 ゚ -゚)「そして、一つ疑問がある」
( ´_ゝ`)「疑問?」
川 ゚ -゚)「これほどの研究……特に人造人間やウェポンの開発はどこでしていたのだ?」
( ´_ゝ`)「そういえば……」
各階、各部屋を調査はしたが
そんな大規模ともいえる研究・開発をするための部屋や機械類が、まったく見当たらなかった。
- 川 ゚ -゚)「……隠されている、とでも言うべきか。
探す必要があるな」
( ´_ゝ`)「あぁ、おそらくそこに――」
川 ゚ -゚)「完成品とやらがある、か」
( ´_ゝ`)「考えられる場所は?」
川 ゚ -゚)「地下だな。
それでなければ……時空が歪められた部屋、とかな」
(;´_ゝ`)「いや、時空が歪んでって……そんな非科学的なこと、無いだろ」
川;゚ -゚)「……気付け、冗談だ」
ぷいっと顔を背け、部屋を出て行くクー。
その微かに見えた耳は赤かった。
一瞬、笑いが込み上げてきた兄者だが、殺されるのは勘弁なので慌てて黙って後を追った。
- ( ^ω^)「…………」
('A`)「…………」
二人は草原の中で座っていた。
それぞれの手には、指から外した指輪。
彼らはジーッとそれを見つめている。
( ^ω^)「ドクオ……何か聞こえたかお?」
('A`)「……いんや」
( ^ω^)「僕も聞こえないお」
先ほどからやっているのは、指輪との意思疎通だ。
詳しい方法をギコが教えてくれなかったので
二人はとりあえず指輪とコンタクトをとるために、ジーッと見つめていたのだが……。
('A`)「うーん、やっぱこういう方法じゃ駄目なんじゃね?」
( ^ω^)「そうかお……」
('A`)「だってさ、考えてもみろよ。
ジーッと見つめられて、友好的だと判断するヤツっているか?」
(;^ω^)「それは無いお……むしろ不審者だお」
- ('A`)「ギコさんはあの調子だし……どうするよ?」
ドクオが振り返る。
その視線の先には、やはり草原に座ったギコとしぃだ。
二人は寄り添い、しぃの手の中にある一つのものを見つめていながら、会話をしている。
( ^ω^)「何してるんだお、あれ?」
('A`)「さぁ……」
とりあえずアドバイスは聞けそうに無いので、違う疑問の議論に入る。
( ^ω^)「そもそも、おーばーぜにすってどんなんだお?」
('A`)「何かガシーンってなって、グシャーンってなるんじゃね?」
(;^ω^)「意味が解んないお」
('A`)「お前、一回発動見てるんだろ?
それの真似するのはどうよ?」
( ^ω^)「おっお、やってみるお」
- 立ち上がり、指輪を装着。
( ^ω^)「8th-W『クレティウス』! 発動!」
いらぬ言葉、そして発光と共に、ブーンの両手に白いグローブが装着された。
その様子を見ながら、ドクオが
('A`)「そうやって発動出来るってことは、見捨てられてはいないんだよなぁ」
今以上の力を欲したとき、何を見せれば良いのか。
今以上の力を欲したとき、何を聞かせれば良いのか。
今以上の力を欲したとき、何を感じさせれば良いのか。
( ^ω^)「えーっと、ジョルジュがやってたのは――」
思い出す。
あの男は鎖を手元に引き寄せ、『OVER ZENITH』と叫んだ。
( ^ω^)「じゃあ、僕も――」
グローブをはめた手を、眼前に持っていく。
- 深く息を吸い、発した。
( ^ω^)「OVER ZENITH!!」
ゼニス……
ゼニス……
ニス……
響いた声の後は、虫が鳴く音と風によってざわめく草原の音のみだ
(;'A`)「見事に無視されたな」
(;^ω^)「ちょっとショックだお」
あーあ、と言い、ドクオが草原に寝そべる。
('A`)「全然駄目じゃん……どうすりゃいいってんだよ」
つられてブーンも隣に寝そべる。
( ^ω^)「……指輪が、僕達に更なる力を与える理由、かお」
うーん、と二人で唸るが答えは出ない。
- と、そんな時だ。
( ^ω^)「お、流れ星だお」
('A`)「マジ?」
ブーンが指を指す。
その方角の空には、動いている光点があった。
( ^ω^)「クーが戻ってきますように、つよきす大好き、強くなれますように――」
念仏、もしくは早口のような口調でブーンが呟く。
(;'A`)「同じ願いを3回、だろ。
それに何か間にノイズが入って――」
ドクオの言葉が止まる。
( ^ω^)「……どうしたお?」
(;'A`)「お、おい……アレ、流れ星なんかじゃねぇぞ?」
( ^ω^)「え?」
- 見れば、先ほどと同じ位置に微かに揺れ動く光の点があった。
それはみるみる大きくなっていく。
否――
(;^ω^)「ち、近付いてる……?」
(;'A`)「なぁ、あれ……ヘリじゃねぇか?」
(;^ω^)「お?」
耳を澄ませば、断続的なヘリ特有の音が響いてくるのが解った。
流れ星と思っていたのは、ヘリのライトだったというわけだ。
しかし――
(;^ω^)「なんでこっちに近付いてきてるんだお?」
(;'A`)「お、俺が知るかよ……」
思わず立ち上がり、向かってくるヘリを見つめる。
ふと視線をズラせば、ギコとしぃも立ち上がりヘリを見ていた。
( ,,゚Д゚)「来たか……」
呟く。
が、その声もヘリの奏でる爆音でかき消された。
- ヘリが、とうとうブーン達の頭上まで達し、移動が止まった。
(;^ω^)「い、一体何事だお……」
(;'A`)「嫌なヨカーン」
ヘリが巻き起こす風と音が、ブーンとドクオの動きと声を止める。
と、ヘリの側面のドアが開いた。
(;^ω^)「お?」
淵には人が立っていた。
藍色のスーツを着込んだ、利発そうな男。
その睥睨するような鋭い視線は、ギコを見ていた。
('A`)「誰だ、ありゃ……」
声と共に動きがあった。
スーツの男が飛び降りたのだ。
いくら低空を飛んでいるといえど、その高さは10m前後はある。
(;^ω^)「あ、危ないお!」
人影が地面に墜落するが、すぐに畳んだ身体を広げ、立ち上がる。
どうやら無傷で着地したようだ。
驚くべき運動神経である。
- ふと、男が腕を上げた。
それを合図とするように、ヘリが高度を上げる。
一陣の風と爆音と男を運んだヘリは、星が輝く夜の闇へと遠ざかっていった。
残るは静寂。
そして降り立ったスーツの男。
彼が見ているのは、ブーン達ではなくギコの方だ。
対するギコは、鋭い視線で男の視線と向き合っている。
ヘリの音が聞こえなくなった頃、男が口を開いた。
( ・∀・)「久しぶり、とでも言うべきかね?」
( ,,゚Д゚)「……二度と会いたく無かった」
( ・∀・)「おやおや、手厳しい。
だが、それにしては広い場所を確保しておいてくれているではないか」
( ,,゚Д゚)「アイツらの修行のためだ、お前のためじゃない。
来るのは解ってはいたがな」
ギコが指だけを、ブーン達の方向へ指した。
スーツの男がつられるように視線を移す。
- (;^ω^)「…………」
(;'A`)「…………」
( ・∀・)「ふむ……彼らも適合者かね」
( ,,゚Д゚)「だが、彼らは俺達とは関係ない。
そして……彼らが手を出すまでも無く、俺が勝つ」
何故なら
( ,,゚Д゚)「俺はあの時とは違うからな」
対する男は右手をポケットに手を入れ、何かを取り出す。
それを左手に移しながら
( ・∀・)「君は昔から少しばかり結論を急ぐ癖があるね?
少しは落ち着いて物事を判断した方がいい」
スーツの男が、左手を掲げる。
その人差し指には、黄色の指輪。
- 途端、ギコの青い指輪が共鳴を開始した。
(;,,゚Д゚)「なっ……?」
( ・∀・)「懐かしいね。
君と対峙するのは、これで二度目だ」
男は優雅に両手を広げ、天を仰いだ。
( ・∀・)「一度目は君が逃げを決め、我々の元を去った。
さぁ……今回はどうかね? ん?」
( ,,゚Д゚)「……共鳴を起こしたという事は」
( ・∀・)「そう……君にとって最高の相手が、2nd-Wを持ったようだね」
まるで他人事のように話す男。
その様子を気に入りはしないのか、ギコの口調と視線は厳しい。
- ( ,,゚Д゚)「…………」
(*゚ー゚)「ギコ君……」
( ,,゚Д゚)「下がっていろ、しぃ……俺はここでやられるつもりはない。
そして、お前を一人にするつもりもない」
( ・∀・)「そこの彼女は誰かね? 当時の君の側にはいなかった女性だが……」
( ,,゚Д゚)「貴様には関係ない」
ギコが、右手を前方に突き出す。
瞬間、青光。
まず柄が現われ、青く太い刀身が伸びていく。
完成されたのは巨剣。
片手でそれを軽く振り回し、肩に担う。
( ・∀・)「やはり美しいよ、1st-W『グラニード』は。
私が最も気に入っていたウェポンであったことを知っているかね?」
( ,,゚Д゚)「美しいの後に能力が高い、を付け足し忘れているぞ」
( ・∀・)「私にとっては能力など在って無いようなものだよ」
- 男が、指輪をはめた手をポケットに突っ込む。
片方の手でネクタイの位置を調整しながら
( ・∀・)「能力に頼ってばかりではいけない。
それは自身の停滞といい、そして君は立ち止まってしまった男だ」
( ,,゚Д゚)「貴様の定義は貴様のものだ。
俺に勝手に適用するな」
( ・∀・)「相変わらず現実的だね、君は。
好きだよ、そういうところは」
( ,,゚Д゚)「吐き気がする」
( ・∀・)「そうかね。
何なら嘔吐用の袋を用意するが?
あの飛行機とかに用意されてるアレだよ、アレ」
( ,,゚Д゚)「……くたばれ、クソ野郎」
( ・∀・)「ふふふ……君に言われるのなら、その度にゾクゾクするよ」
- 月下。
怒りを露わにするギコと、肩を揺らし笑う男。
見事に対照的な二人は、しかし似たような気配を匂わせ始める。
それは強者という猛獣特有の気配だ。
呼応するように風がざわめき、草原を揺らす。
普段の様子とは違う彼に、ブーン達は戸惑いを隠せない。
(;^ω^)「きょ、今日のギコさん……何か怖いお」
(;'A`)「っつか、俺達完全に蚊帳の外だな……」
とりあえず座って観戦することにした。
コイツら、何気に余裕である。
( ・∀・)「さぁ、そろそろ始めようか?」
( ,,゚Д゚)「何をだ」
( ・∀・)「ははは、グラニードを構えて言う台詞じゃないね?
ナイスジョークだよ」
( ,,゚Д゚)「貴様は昔から何を考えているか解らんからな。
後で後悔しないよう、聞いておきたい」
- ( ・∀・)「ならば言おう。
目的は、グラニードの回収だ」
( ,,゚Д゚)「それだけか」
( ・∀・)「組織としては、ね。
私個人としては、君と決着を付けたいと思っている」
( ,,゚Д゚)「それは都合がいい」
( ・∀・)「何故かね?」
( ,,゚Д゚)「貴様を叩き伏せたいと思っていた……!」
ギコの身体から殺気が噴き出す。
少し遠くまで離れているブーン達にも明確に感じ取れるほどだ。
対する男は涼しい顔をしている。
が、その目つきは刃のように鋭い。
因縁の二人が対峙する。
『1st』と『2nd』の戦いが始まろうとしていた――
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