「何かを取れば何かを失う」のが選択 | 坪井秀樹の起業実験日記 いくつになっても「理由なき反抗期」

坪井秀樹の起業実験日記 いくつになっても「理由なき反抗期」

反抗しているんじゃない。反抗期が続いているだけなのさ。



ちょっとスーツを着ないといけない用事があって、街に出ました。



相変わらずスーツとかネクタイは好きじゃないけど、


お正月らしく気持ち改めるには、まぁいいか、


ダッフルコート着られるからまぁいいか、


スーツ姿も結構カッコいいからまぁいいか、


とか何とかどーでもいいこと考えながら。



この時期、街では、冬物衣料のセールがあちこち一斉に始まります。



欲しいモノがあってもなくても、「街と店と人と商品」を体感するのにもってこいなので、


毎年必ず定点観測していますので、ちょうどいいやと思って、遅がけでしたが駆け足で


チェックしている商業施設や小売店を観て回りました。



時間が遅かったというのもありますが、全体を通して今年はちょっと元気がなかったような


印象を受けています。



景気なんてホントに良くなっているんだろうか?とか、逆に、景気が良くなっているからセール


なんて行かずにプロパーで売れているかな?なんて思いながら、あちこち見て回ってた


んですけど、そんな中、


高級路線で売っている某有名百貨店の「靴売り場」で、私にとっては驚くほど印象に残った


出来事があったんですね。



私、スーツがキライだから、よってドレスシューズもあんまり履かないでしょ。


かと言って、スーツの時に、適当に安っぽい靴を履くのもイヤだから、それなりにいいのが


欲しいんだけど、でも、バカ高いお金出してまでは欲しくない(苦笑)。


(欲しいのは、セールになってもバカ高いから買わないんだけど(笑)。)



そんなワガママな感じだから、欲しいブランドのドレスシューズがひょっこりセール価格に


なって、「超ラッキー!」なんて掘り出し物に出会えるかどうかを、私的には楽しみに


しながら回ってみるんですね。



それで、その某有名百貨店の靴売り場。



いつもとは売り場や什器がセール用に変わってて、靴の棚がセール用の島状態に


レイアウトされてて、各コーナーは結構な人だかり。


あちこちで、試着している人や、忙しそうに接客している店員さんもたくさん。


この日の為に増員もしていそう。



なんかねーかなぁ、と思いながら、「ここに〇〇がありますよ」的な表示を見ながら


プラプラ棚を見ていたら、背後から女性店員さんが、ヒャッと割って入るように手を伸ばして、


持っていた靴のつま先部分を持って、棚の上に放り上げるように置いたんです。



「ゴドッ」という鈍い音がするかしないかのうちに、その店員さんは次の場所へ足早に。



日頃は高額な靴を売っていて、両手を前で合わせて、ただただ立ち続けているような


店員さんがいる売り場なので(笑)、そりゃ大層忙しくて結構なことだとは思うのでした(笑)。



これね、私はこんな店では買いたくないとか、この人は自分の商品を愛していないん


だろうなぁとか、そういうことが言いたいんじゃないんです。




仮に、もし、この売り場の責任者とかリーダーとか、あげくは社長とかが、このブログを


読んだり、あるいは、私のように感じたお客が、ご丁寧に「気分を害した」とかって、


メールやお手紙を送ってきたとするじゃないですか?




そうするとね、恐らく、次の日の朝礼とかミーティングで、


「皆さん、昨日、こんな内容のメールをお客様からご丁寧に頂きました。


私達に教えて下さるありがたいお客様です。


セールでいつもより忙しいとは思いますが、お客様は皆さんの一つ一つの動きをよく見ています。


どうか、そこをよく考えて、プロ意識を持って行動して下さい。


ここにある商品をどうか愛して下さい。商品を愛していないから、気の緩んだ時にそういう動きに


なってしまうんです。


我々のそういう一挙手一投足をお客様は観ているのです。」


みたいなこと言うんじゃないか、と勝手に思ったんですね(笑)。



私が売り場責任者なら、きっと同じようなことを、取り敢えず言ってるんじゃないか?と


思うんです(笑)。



間違っても、公の場で、


「皆さん、昨日、とんでもないアホな客からこんなメールが着ました。


セールに関わらず、通常通りのサービスを要求してくる身の程知らずです。


確かに客は客ですが、こっちもセールでくそ忙しい中精一杯やってるのですから、


一切気にせずに今日もスピードアップで頑張って下さい。


大体、セールというのは、いつもよりずっと安くする分、いつものようなサービスは


できませんよ、期待しないで下さい、というのが当たり前の考えです。


いつもプロパーでは買わないくせに、安くなった時だけ、やってきて、それでいて


通常のサービスや対応もして欲しいなんてのは言語道断・横断歩道(笑)。


ウチは、安いですよ、でも丁寧なサービスはできませんよ、これがセールなのです。


と、いうわけで今日もガンガンいきましょー。」


とは口が裂けても言わないでしょう(笑)。


(思ってたとしても・・・・・(笑)。)



正解は、私は後者だと思ってはいますが(笑)、まぁ、大抵は前者の発言となったり、


社内報やFAXなどで啓蒙することになるんじゃないかと(苦笑)。



でね、こっからなんですけど・・・・・・・・・、


仮の仮に、そういう模範的な内容を従業員全体に伝えたとしてです・・・・・・・・・、


あの女性店員さんは、今日以降、行動が見違えて変わるのだろうか?ってことをフと


思ってしまったんです。



変わりませんよね?(笑)



まぁ、そう言われたその日や、暇になった時には、ちょっと行動は変わるのかも


知れないけれど、同じような状況になったら、また同じように行動してしまうでしょう。



「商品を愛しなさい」なんて、何をどうしたらいいのかクソ曖昧なことを、さも商道の本質のように


全体で言われたところで、行動なんて具体的にゃ変わらないんですよ。



大体、高額な靴のトゥ(つま先)の部分を、親指で押さえつけるように持つなんて、


そんなもんはプロでもなんでもありません。



靴好き程度の素人の私ですら、ドレスシューズの見た目の生命線であるトゥの部分は


無造作に掴みませんから。


(まぁ、靴好きだし、靴屋さんでアルバイトしてたし、ファッション業界にいたから知ってる


ってのもあるんでしょうが・・・・・。


皆さん、靴屋さんで靴のつま先をグニッと掴むと嫌がられるから止めましょうね。)



いくらセールだからって、靴売り場のプロ側が、こんなことしてるの見たら、通常の時なんて


なおさら絶対に買いに行かない(笑)。


だって、店員が日頃から靴のつま先をグニグニいじってるかも知れない店で靴なんて


買いたくないもん(苦笑)。



こういうことが起こるから、セールってのは売り手側にとって、実はリスキーだと思うんだよなぁ。



こうなると打開策は二つしかありません。


①そもそも靴が好きで好きで大好きで、経験上、靴の扱い方を身を持って当然のように


  知っている人を売り場に立たせる。


②「愛してる」とか「愛していない」とかそんな目に見えないことどうでもいいから、そう見える


  行動行為が身に着くまで、一つ一つの動きを細かく指導する。


です。


ただ、この二つとも、できているかどうかを判定する「メンター」みたいな人がいることが前提


なんですけどね。



こう考えると、百貨店の平場と呼ばれるスペースは、高額品を扱えば扱うほど不利な状況に


追い込まれるでしょうね。


だって、専門じゃなくて百貨あるわけですから(笑)、スタッフにしてみれば、いつどこの


売り場に移動になるとも限らない。


そうなると、移動した売り場では、こと商品面においては、客以下のド素人からまた一から


スタートですからね。メンターになるどころの騒ぎじゃない(笑)。



両手を股間の前で合わせて、一日微動だにせずずっと立っていることに関しては、毎日


練習しているでしょうから、それについては「プロ」にはなれるかもしれませんが、


商品を扱う人としては素人以下な訳です(苦笑)。



だから、彼らの接客というのは、


「他のサイズや色もございますので、よろしかったらお探しいたしますよ。」


のバカの一つ憶えしか言えなくなるんですね(笑)。責められません、当然ですから(笑)。



私はそういう考え方をしますが、そうじゃなくて、逆に百貨店のようなとこで買いたいと言う人も


当然いるでしょう。




価値観の多様化とはいいますが、


こんなこと考えながら、歩いていると、改めて、ビジネスっていうのは、


何かを取って、何かを手放すという選択の連続なんだろうなぁ、と思うんですね。



ウチは、安いですよ、でも、ボロいですよ。


ウチは、最先端のオシャレですよ、でも、来年は着れませんよ。


ウチは、最高のサービスで気持ち良くなりますよ、でも、高いですよ。


ウチは、いまセールですよ、でも、いつものように対応しませんよ。


ウチは、いろんなモノがあって選べますよ、でも、専門知識はないですよ。


ウチは、フレンドリーですよ、でも客に対する態度はなってませんよ。


ウチは、探検気分が味わえますよ、でも何がどこにあるか分かりにくいですよ。


ウチは、商品保障は10年ありますよ、でも値引きはしませんよ。


ウチは、専門的ですよ、でも品揃えはそれ以外はないですよ。


ウチは、上得意さんを大事にしますよ、でも一見さんには冷たいですよ。


などなど、そういうことです。


何かを取ったら、何かは取れないのですから、自分は何を取って、何を手放すかの


意思を明確にしておくということです。



私が経営者さん達と話していて困るのは、


「専門的なんだけど、品揃えもたくさんある。」とか、


「売上も大事だが、粗利率も大事だ。」とか、


「高額商品も大事でが、低単価商品も負けたくない。」とか、


「探検気分を味わえるんだけど、クレンリネスも行き届かせたい。」とか、


「大型店なんだけど、小型店のような魅力」とか、


「どこよりも安いんだけど、どこよりも最高のサービスで」とか、


そういう


「走るんだけど、歩け。」


みたいな訳の分からないことを真顔で言われる時です(苦笑)。


訳が分かりません(笑)。




自分の超ウルトラ得意分野は何で、不得意分野は何だから、


ウチの商売はこれで行くということを決めておくことは、


ビジネスの大前提なのだろうな、というようなことを


「革ジャンにジーンズが好きだけど、ドレスシューズもいいのが欲しい」


と思いながら歩いた商業施設でした(笑)。





          何かを取ったら、反対側を手放しなさい。


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 買取王国・坪井副社長の販促実験日記「それって誰が嬉しいの?」