男の話なぞ時としてぞっとすることがあるもので、その最たるものが自慢話とウンチク話である。男というものはどうしてこうも自分のおろかさを理解できず、必要以上に自分をよく見せようとするものなのだろうか。

特に中高年に多い。
そんなに惨めな半生を虚飾してまでも、自分を認めてもらおうとする努力にいいかげんうんざりすることもある。
自慢とウンチク話をする男には決して近寄らないようにしているが(はっきりいって軽蔑している)、じゃあ自分はどうなのか。

実はウンチク話が大好きなのである。

タイに来てからはウンチク話をする相手もいなくなったし、タイ人にそれをするだけのタイ語もできない。最近では少し日本語の上達した学習者に数学や科学の話をして悦にいたっている程度であった。

ところが最近では、日本語能力試験1級(N1)をパスした学習者の個人授業を受け持つこともあり、普通の日本人と話すような感覚で違和感なく授業が進められる。今回は若い女性であった。

そうなると、自分の学習者に対する優位性は日本語なんかではなく、自分の経験や知識になってしまう。

女性の先生ならファッションや、食べ物など日常的な話で話題が弾むであろうが、そんなものとは無縁の自分は日本の歴史や物理・科学の話を滔々と始めてしまった。

歴史は戦国時代から江戸、明治、そして世界大戦に至る日本とそれを取り巻く世界の状況。(そもそもは彼女が上杉謙信の名前を書いたストラップをくれたことから始まった)
また科学では光より早い物質が発見されたこと(再実験で否定された)、それにともなうタイムマシンの話。統一理論の話(いずれも断片的知識をひけらかしただけである)。

彼女が興味津々で聞いてくれたため、こちらもつい力が入ってしまい、延々とウンチクを垂れ流した。愉快であった。

彼女は日本留学していたことがある。そして痛感したのがタイ人はタイのことを良く知らなければならないということである。そして彼女は今タイのことを改めて勉強しているらしい。

これは自分も全く同じ思いをした。海外で評価される日本人は日本のことを深く知っている人間である。自分も日本を改めて勉強したのはタイに来てからである。

この面でも話題はおおいに盛り上がった。

来月から彼女は日本で働き始める。
ぜひ頑張ってもらいたいものだ。