真っ暗闇の今市(いまいち)でしばし立ち尽くす。


どうしたもんかのう。


このまま公園で野宿かのう。


その前にええかげん、腹が減ってきたわ。


夕方の湯葉しか食うとらん。


民宿でもあれば、部屋が空いてなくても何とか泊めてもらうんじゃが。



例えばじゃ。


今、目の前に古い民宿があるとするわの。


で、わしがそこに行って頼むわけじゃ。


「今日泊まる旅館がありません。どこでもかまいませんので泊めてください。(´;ω;`)


それから、腹が減ったので、おにぎりをください。沢庵があるとなおけっこうです。


お母さんから親切な人にもらいなさいと言われました。」


じゃが、東野英心似の主人に冷たく断られてしまうんじゃのう。


「ええい、この伝統ある旅館に、お前のような素寒貧を泊めてやるような部屋はねえんだよ。とっとと行きやがれ!」


で、わしがしかたがなくとぼとぼと立ち去ろうとすると、奥で見ておった磯山さやか似の女中さんに呼びかけられるんじゃのう。


「泊まるところがないんでしょ。いらっしゃい。泊めてあげるから。」


「本当ですか。助かるんだな。(´;ω;`) 」


で、布団部屋に通される。


「よかったら、ここに泊まりなさい。ご飯も持ってきてあげるから。」


「ほいじゃが、わしゃあ、今持ち合わせが・・・。」


「いいのよ。安心して」と言って、わしの手を握ってにっこり微笑むさやか。


そして、おにぎりと沢庵を持ってきてくれる。


ありがたいことだのう。(´;ω;`)



それから、わしゃ2日ほど世話になるんじゃわ。


その間、薪を割ったりして、あれこれ旅館の仕事を手伝うんじゃのう。




で、3日目の朝、わしは一人そっと旅立つんじゃ、自分が描いた絵を残して。


それからしばらくして、女中のさやかが、わしがおらんようになったことに気が付くんじゃのう。


そのかわりに部屋に一枚の絵が置かれておるのを見つけるんじゃ。


それで、彼女はあわててその絵を持って、合田雅吏似の番頭さんのところに駆けつけるんじゃ。


「番頭さん、たいへんよ。トラジさんがいなくなっちゃたわ。この絵を残して。」


「なんやて。」

(↑何故か関西弁)


それから、番頭さんはさやかから絵を引ったくり、食い入るように見つめる。


「こっ、これは! あの有名な・・・。」


目を合わせる二人。




で、わしが鬼怒川の土手沿いを傘の飛び出たリュックを背負ってとぼとぼと歩いておると、後ろから二人が追いかけてくるんじゃのう。



「toraji先生ぇーっ!」


「toraji.com先生ぇーっ!」



♪ のにさくーはなのよおーにー かぜにふかーれてー


  のにさくーはなのよおーにー ひとをさわやかにしてー



あっ、しもうた。見つかってしもうたわ。(`ω′)!


走り去るわしと追いかけてくる女中のさやか。


「toraji.com先生ぇーっ!サインしてくださぁーい!」


こんなところまで追っかけてくるとは。かわいいもんよ。(^ω^)



ほいじゃが、彼女が追いかけながら何か叫びよる。


「先生ぇーっ! お部屋の精算が済んでませぇーん!


明細書にサインをぉー!」


何っ。(`ω′)!


「((一般客室の85%+薪割体験コース+消費税+入湯税)×3日分+特別サービス料)になりますぅー!


カードでも安心してお支払いいただけますぅー。」


只じゃなかったんか。(´;ω;`)


布団部屋(おにぎり付)が一般客室の85%、高っ。(`ω′)!


ちゅうより、「特別サービス料」ってなんじゃ。



回想シーン:


>「いいのよ。安心して」と言って、わしの手を握ってにっこり微笑むさやか。


これか。(`ω′)!


やけにサービスがええと思うた。(´;ω;`)




それから、番頭の合田さんも追いかけてくる。


「オバQの落書きで、支払いの足しになるとでも思うとるんかーい! キッチリ払わんかーい!」


やっぱり、駄目ですか。(´;ω;`)


誰でも分かるように有名なモチーフを描いておいたんですけど。オバQ絵描き歌で。


隣にバケラッタのO次郎も書いといたんですけど。それしか絵が書けないんだな。




慌てて逃げるわし。


そうしたら、うっかり野良犬の尻尾を踏んでしまう。


「こっ、この野良犬は。(`ω′)!


番組の冒頭で尻尾を踏んで追っかけられた犬じゃなあか。」


(↑そういうシーンがあったとしよう。)


オバQのように野良犬に追っかけられるわし。


その様子を遠くから見ているイッセー尾形似の駐在員さん。


「ややっ。あれは先日、本官の制止を振り切って逃走したあのときのルンペンではないか。」


(↑イッセーさんの口調で、”ル(ン)ペ(ン)”と力を入れて言って欲しい。)


うむっ、と帽子を深く被り直してから、フレームの歪んだ白い自転車に足をかけて乗って、ギッタン、バッタンと追っかけてくる。


(↑ペダルに足をかけるとき、最初、慌てて、ちょっと踏み外すこと。フレームの歪んだ自転車がなければ、踏んづけて歪めておくこと。)


「ちょっと、待ちなさーい!」


「待てませーん。(´;ω;`) 」



♪ そんなっふうにーぼくたちもー いきてゆけたら すばらしいー


  ときにはくらーいじんせいもー とんねるぬければー なつのうみー


  るるるー るるる るーるるー


  るるる るるーるるー


  「野に咲く花のように」(作詞:杉山政美)



で、物語は振り出しに戻るのでした。


(↑家族で安心して見られるファミリードラマの定番のオチですな。)



ちゃんちゃん。



などと、妄想に浸ってしもうたわけですが、現実に置かれている状況は、夏の海じゃなくて、栃木の真っ暗闇です。


人っ子一人いません。(^ω^)


現在の時刻は21時を過ぎたところです。


この先、どうなるんでしょうか。


今晩は布団の上で寝られるんでしょうか。


それとも、このまま栃木の見知らぬ土地で凍死してしまうんでしょうか。(´;ω;`)



(以下続く。)



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