幸福について、我々が求めるべきものは2種類ある。


1.幸福のクラス


2.幸福のインスタンス


幸福のインスタンスは幸福のクラスから生成される。


世の多くの人たちは、幸福のインスタンスを自分のものにしようと狙っているが、本当に重要なのは幸福のクラスである。


インスタンスはクラスから生成すればよいからである。


幸福のインスタンスには所有権がある。


それ故に、幸福のインスタンスは以下の2種類に分けられる。


1.私の幸福のインスタンス


2.他人の幸福のインスタンス


前者は私以外の人にとっては何の役にも立たず、後者は私が負担するには荷が重い。



例えば、こう考えてみる。


あるところに、冷暖房のない部屋があった。


ある日、そこに住んでいる人がその部屋にエアコンを設置した。


その結果、その人は快適になった。


これは、その人にとって、「私の幸福のインスタンス」である。


この幸福のインスタンスは彼のものであって、彼以外の人にとっては何の利益もない。


また、あるところに、多少の私財のある人がいて、その人が、恵まれない国の小学校にエアコンを寄付した。


その結果、その小学校に通う児童たちは快適になった。


これは、その人にとって、「他人の幸福のインスタンス」である。


これは、世の中においてよいことだが、それを何の見返りもなく続けていくのは、彼にとって荷が重いだろう。



ところで、以下のような例も考えてみよう。


あるところに、ひとりのエンジニアがいた。


その人はある電機メーカーの研究所に勤務しており、エアコンの研究をしていた。


あるとき、彼はエアコンについての画期的な発明をした。


その発明を取り入れたエアコンは、従来のエアコンに対して、電気代は半分になり、熱効率は倍に高まるという。


上の例において、これは「幸福のインスタンス」ではなく、「幸福のクラス」である。


この幸福のクラスから、幸福のインスタンスが生成される。


ここで、幸福のインスタンスとは、つまり、上の発明を取り入れて作られたエアコン(という実体)である。


それは、自他を問わず、それを手にする人のすべてに行き渡る。



世の中には、以下の問いについて悩んでいる人がいる。


「私の幸福か?他人の幸福か?」


それに対して、私は答える。


「どちらにしても最上の幸福ではない。


何故なら、そのどちらもが幸福のインスタンスであって、幸福のクラスではないからである。


インスタンスは有限であって所有権があり、万人には行き渡らない。


あなたは幸福のインスタンスではなく、幸福のクラスを求めるべきである。」



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