【思索】幸運は金、幸福は水


執筆後に知ったのだが、アッタール(ファリード・ゥッディーン・ムハンマド・アッタール)によれば、8-9世紀のイスラームの神秘家、シャキーク・バルヒー(アブー・アリー・シャキーク・ビン・イブラーヒーム・バルヒー)は、第五代カリフであるハールーン・アッラシードとの間で以下のような会話をしている。


シャキークはハールーンに言う。
「砂漠にいて渇し、死に瀕しているまさにその時、一杯の水を得たら、あなたはいくらでその水を買いますか」
「いわれるだけの金額をいくらでもだそう」
「王国の半分より以下では売らぬ、と言われたならどうされますか」
「王国半分をやるだろう」
「もし、あなたが水を飲み、それが体外に出ず、死の危機が迫った時、一人の男がやって来て、治療してやるが、王国の半分をもらう、と言われたらどうしますか」
「その通りにあたえるだろう」
「では、たとえ飲んでも体外に出る、僅か一杯の水の値にしかならぬ王国をなにゆえ誇るのでしょうか」
ハールーンは涙を流し、シャキークを礼を尽くして見送ったと言う。
(「イスラーム神秘主義聖者列伝」アッタール(藤井守男訳))



「時折言うことであるが、木は金よりもすぐれている。このことはまったく驚くべきことである。」
(エックハルト(田島照久編訳) 「エックハルト説教集」(岩波文庫)「死して有る生き方について」)


金よりもすぐれた木が成り立つためにはぜひとも水が必要である。



「身と貨と孰(いず)れか多(まさ)れる」


「得難き貨を貴ばざれば、民をして盗(ぬすびと)為らざらしむ。」


「上善は水の若(ごと)し。水は善く万物を利して而(しか)も争わず。」
(老子(小川環樹訳))





【思索】正論を聞かされて僕らは育った。


「すぐれた比喩は知性を新鮮にする。」


「ときどき表現を言語から取り出して、きれいにしなくてはならない。-そうすれば、その表現をまた流通させることができる。」
(ウィトゲンシュタイン 「反哲学的断章-文化と価値」(丘沢静也訳))




【思索】そらあ、心の遠視じゃなかろうか。


気に入らないところがあったので、全体的に書き直した。




【思索】新しいことなんて何もない - 受け売りについて


「君は新しいことを言う必要がある。だがそれは古いことばかりだ。
もちろん君は古いことを言うだけでいい。-にもかからわらずそれは新しいのだ。」
(ウィトゲンシュタイン 「反哲学的断章-文化と価値」(丘沢静也訳))


「かつてあったことは、これからもあり
かつて起こったことは、これからも起こる。
太陽の下、新しいものは何ひとつない。
見よ、これこそ新しい、と言ってみても
それもまた、永遠の昔からあり
この時代の前にもあった。」
(コヘレトの言葉 1 9-10)




【思索】現実逃避じゃないんです、世間逃避なんです!


「『勇気』と呼ぶに値する唯一の勇気は、群集心理の囲いの外に出ることだ。私たちは群集のなかに生まれる。それは避けられないし、自然なことだ。私たちは群集のすべての過去とともに、群衆のなかで成長し、そして群集はあらゆる子どもにその迷信と愚かさのすべての重荷を負わせる。群衆は盲目の人々から成っているが、それは覚者(ブッダ)がきわめてまれにしか現れないからだ。群集は伝統に従って活動する。なぜなら、彼らには自らの洞察というものがないからだ-持ちえないのだ。」

(OSHO 「英知の辞典」)


「Tには、「それ自ら知られることを好まぬ」が病み付きになっていて、「一人で居られぬ不幸」にさいなまれている。つまりポオが云う群集の人なのだ・・・・・・と或る晩、江美留は寝ながら考えめぐらした。」

(稲垣足穂 「弥勒」)




【思索】奇妙な果実のなる人脈


「今のひとびとは自分のために交わりを結び、また他人に奉仕する。今日、利益をめざさない友は、得がたい。自分の利益のみを知る人間は、きたならしい。犀の角のようにただ独り歩め。」
(ブッダ 「スッタニパータ(ブッダのことば)」中村元訳)


「人々がデール・カーネギーの『友人を獲得し、人々に影響を与える方法』や、ナポレオン・ヒルの本や、そのたぐいの本を読むのはそのためだ。世の中にはいかにして自我を磨きあげ、それを飾りたてるかを教える、無数のいわゆる哲学者たちがいる。」
(OSHO 「英知の辞典」 他人の意見)


「周して比せず。」


「巧言令色、鮮(すく)なし仁。」
(孔子 「論語」)




【思索】親孝行はすべきか


「母は息子にとって毒であり、息子は母にとって毒であり、などなど。」
(ウィトゲンシュタイン 「反哲学的断章-文化と価値」(丘沢静也訳))




思索】本当にあなたは議論が好きだね

「善なる者は辨ぜず、辨ずる者は善ならず。」
(老子(小川環樹訳))


「愛すれども其の悪を知り、憎めども其の善を知る。」
(「小学」)




【詩】幸福のなる畑


「思想もまた、熟してもいないのに木から落ちることがある。」
(ウィトゲンシュタイン 「反哲学的断章-文化と価値」(丘沢静也訳))




【寓話】無神論者


「宗教的な信仰と迷信とは、まったく別物である。一方は恐れから生じて、疑似科学のようなものだが、他方は信頼そのものである。」
(ウィトゲンシュタイン 「反哲学的断章-文化と価値」(丘沢静也訳))




【寓話】探検家と考古学者


「ある考えを高い代償を払って手に入れたなら、その結果必ず、安い代償でたくさんの考えが手に入るものだ。そのなかには役に立つ考えも、いくつかある。」


「読者にもできることは、読者にまかせることだ。」
(ウィトゲンシュタイン 「反哲学的断章-文化と価値」(丘沢静也訳))




【広島漢詩】還甲宴(ファンガプヨン) 金笠(キム・サッカッ)


金笠(キム・サッカッ) 1807年(純祖7年)-1863年(哲宗14年)
朝鮮の放浪詩人。


「金笠詩集」 李応洙編 1939年 京城、学芸社
大増補版「金笠詩集」 李応洙編 1941年 漢城図書
「金笠詩選」 崔碩義編訳注 2003年 平凡社(東洋文庫 714)


このシリーズの広島弁訳については、崔碩義氏の日本語訳を参考にさせていただいていることをお断りしておく。




【広島詩集】寝んさい、アイリーン。


歌詞の出典は、以下のリンク先にある"Lead Belly's version"から。
http://en.wikipedia.org/wiki/Goodnight,_Irene


"Goodnight, Irene"( or "Irene, Goodnight" )は黒人歌手Leadbelly( or Lead Belly )によって知られる有名な曲。オリジナルはGussie L. Davisによる。いずれも、半世紀以上前の人物で、著作権上の問題はないことを付しておく。


なお、この曲はカバーバージョンも多い。個人的には、Ry Cooder、Kevin Ayers、Brian Wilsonなどのカバーを聞いたことがある。いずれもよい出来。また、Private CDで、John Lennonが、Yoko Ono、Phil Spectorらとホームパーティーで歌うのも聞いたことがある。



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