一年ぶりに悲しい出来事があった。


一年前にとても悲しいことがあって、でもしばらくは望みがあった。


でも、あれから一年たった今日、その望みがなくなった。


今はどこで何をしているのだろう。



ずっと昔、東京に出てきて一人暮らしをはじめた。


生まれて初めて大金を手にして、あっという間に使い果たしてしまった。


毎月、毎月、大金があっという間になくなってしまった。


その後も、ずっと物欲の強い生活をしてきた。



20代の頃、価値のあるものを手に入れると安心した。


そのうち、四六時中価値のあるものに手を伸ばしてばかりいるようになった。


やがて、手を伸ばしたものが手に入らないと、とても不安になるようになった。


ところが、苦労して手に入れたものは、かならずどうでもよくなってしまった。


かわりに、脇に押しやっていたものが、いつの間にか、何処かへ行ってしまったことに気がついた。



毎日毎日、前へ前へ、先へ先へ。


いつも横にあるものが見えなくなる。


手に入るのはどうでもいいものばかり。


手に入るのは金で買えるものばかり。



もっと大切にすればよかったと思うものがたくさんある。


でも、それらを大切にしていたら、今日までやってきたことを何も出来なかったかもしれない。


僕は、ずっと、自分の夢と、それらは両立しないものだと思っていた。


自分のすべきことで頭が一杯になっていた。


でも、それはただの思い込みだったのかもしれない。


うまくやれば出来たのかもしれない。


あるいはその方がずっとよかったのかもしれない。


未来には苦しみがたくさん、過去には幸せがたくさん。



僕の人生には、ほんの数年間、とても幸せな時期があった。


とてもわがままで幸せな一時期。



僕は大人のようなことを言いながら、子供みたいなことをしていた。


君は子供みたいなことを言いながら、大人びた絵を描いてみせた。


僕がすることに君は首をひねり、君が描く絵に僕は首をひねった。


首をひねっているときが一番楽しかった。



さようなら。


苦しい時間を共にした友。



さようなら。


けんかばかりしていた友。



さようなら。


君が幸せでありますように。




(別のブログからの再録)


2007 (c) toraji.com All Right Reserved.