3月21日付けの朝日新聞朝刊に1ページに渡って「透析 お願いします」という記事が載った。普段はマスコミが取り上げることが少ない透析患者について、『患者「命を守る闘い」というテーマで、大地震被災の患者たちが取り上げられていた。1週間の人工透析の中止は、死に至るリスクを高める。岩手、宮城、福島3県で約1.2万人の透析患者がいると報じられていた。
 災害時には、日本透析医会のHPから「災害情報ネットワーク」 にアクセスが可能で、各地域の災害情報を知ることができる。受け入れ可能施設の情報も載っている。私たちの三多摩地区の情報にもアクセスできる。

 東京は、計画停電の影響が透析患者と透析施設に大きな影響を与えている。

 我がクリニックは、ビルの8階にある。停電時は、透析ができないばかりか、エレベーターも止まるので、透析後に血圧低下の患者や、高齢者が階段を降っていくのは困難なことである。計画停電は、その字の通りに「計画的」に行われるわけではないので、直前になってみないと次回の透析がどのようなものになるかもわからない。また、直前に停電が中止されても、停電を前提にした時間変更などを元に戻すことも難しくなっている。新聞にも紹介されていたが、平均4時間の透析は、10キロ走の運動量に匹敵するという。

 地震が起きる前に、東腎協の三多摩ブロックの集会で、「長期透析のメリット・デメリット」という講演があった。現在は、4時間透析がほぼ標準のようになっているが、本来は、長時間透析の方が、患者にとってはメリットの多いものである。しかし、様々な要因から、長時間透析を行っている施設は少数派である。なお、3時間透析は、4時間透析と比べると余命期間が極端に短くなる。

 さて、計画停電の影響で、透析時間の短縮が行われている施設が少なくないようだ。朝5時頃から開始したり、深夜に行なうことで、今まで通りの透析時間をキープしている施設はごく少数なのだろう。

 夜間透析を行っている施設は、利用者の就労などの事情からも、変更にはかなり苦慮している。

 昼間の透析も、停電情報を睨んでの調節が厳しい。

 3月17日 いつもは9時半、10時、10時半、午後に透析開始の患者に対し、朝8時までにクリニックに集合、8時半から透析開始となった。透析時間も3時間に短縮。

 3月19日の透析は、20日の日曜日に延期。18日の金曜日は、クリニックを閉院して、金曜日の透析患者を19日に透析変更したため。おそらくは、夜間透析者のために、会社・仕事が休みになる土曜日に変更したのだろう。

 変更美の3月20日の日曜日は、いつも通りの時刻にクリニックに行く。この日は、4時間透析ができた。

 3月22日 またもや、朝8時集合、8時半から透析開始。この日も3時間透析。

 そして今日。計画停電は中止となったが、クリニックの指示では、9時半集合。10時から透析開始。3時間透析の予定。計画停電の状態から、果たして4時間の透析ができるのだろうか。融通が聞かない可能性も大である。また、午前中から始まる当初の計画停電が行われていたら、階段で8階まで歩くことになっていた。結果は、帰宅後に記録する。

 3時間透析という患者の命を削る実験を、今、患者自身が行っていることになる。仕方ないことなのか。

付記:地元の各クリニックでも、一部を除いて、透析時間の短縮が行われているようだが、時間の短縮を単純に喜んでいる患者もいるという。極端に体重が軽い体の小さな高齢者でもなければ、3時間透析が患者の体にどんな影響を与えるのかは、しっかり認識してもらいたいところだ。当面は、患者自身の自己管理も求められる。
 また、一番影響を受ける高齢者と夜間透析者の内、後者は、ほとんど患者会にも入っていない。患者同士の挨拶すらしない人が多い。非常時にも、個人で対処するのだろうか。