新訳「星の王子さま」続々 岩波版半世紀、独占権が消滅 | 三太・ケンチク・日記

新訳「星の王子さま」続々 岩波版半世紀、独占権が消滅

さまざまな新訳「星の王子さま」

多くの人に読み継がれてきたサン・テグジュペリの「星の王子さま」が、来月から様々な出版社から新訳で続々と出版される。日本での著作権が今年1月で切れ、これに伴い岩波書店が持っていた独占的な翻訳出版権も消滅したためだ。倉橋由美子さんや池澤夏樹さんら著名作家による新訳もあり、新しい「王子さま」像が話題を呼びそうだ。


「星の王子さま」は、フランス人作家のサン・テグジュペリが飛行機で飛び立ったまま行方不明になる前年の43年に英語版とフランス語版が出版された。日本では53年に岩波少年文庫として出た。王子の純粋な心が読者の胸を打って日本だけで約600万部に達し、今なお売れ続けている大ロングセラー。岩波版はフランス文学者の故内藤濯(あろう)さんの訳。新訳本は新味を出すのに懸命だ。10種類近く出るのではないかと見られている。出版を決めた4社の本はいずれも題名に「星の王子さま」を使う予定だ。原題を直訳すると「小さい王子」。「星の王子さま」は、濯さんのアイデアだ。

アサヒコム:2005年05月26日


岩波少年文庫版

このような新聞の記事を目にしましたが、それから約2週間、諸般の事情で記事に出来ないでいました。この「諸般の事情」というのは、実は僕は「星の王子さま」を読んだことがなかったからです。たしか家に何冊かあったと思い、本棚を探しましたが、見つかりません。家人に聞くと、子どもの本は子どもが持っているとのこと。1冊も無いのと聞くと、私のならあるという。嫌がっていたのを無理に借りてみると、1999年 2月 22日第86刷発行の「岩波少年文庫」版。 区民大学だか婦人大学だかで使った本らしく、縦線を引いて横に書き込みがあったり、欄外にも書き込みがいっぱいありました。これがけっこう要点をついていて、面白い。本人には無断で以下に書き移します。



「もっとたいせつなことで、見当ちがいしそうです」のところは「真理を語ることは出来ないが、守ることはできる」。「バオバブに気をつけるんだぞ!」は「軍事力」。「キノコなんだ」は「外見だけがきれい」。「ぼくは、しごと道具を手放していました」は「飛行士は自己中心に気がつく」。「なぐさめなければならなかったのです」は「心と心が通い合う」等々。欄外の書き込みには、「悲しいことも日と共に沈んでしまわせたい」、「愛することと愛されることは、心と心の出会いの大きな課題である」、「自分のことは後にして、まず相手のことを考えるのは難しい」、「愛を確認したい気持ちが深い」、「相手の心を受け止めて心で見る、相手のことを願う」、「お互いの気持ちを読みとる努力、想像力を育てること」、「愛情は育てていかないと、自然には深くならない」などとあります。この本には、隠された深い意味があるんですね。



それはそれとして、本題に。とはいえ、皆さん、読まれた方が多いので、いい加減に書くわけにはいきません。どちらにせよ、僕は月並みな感想しか言えませんが。一読しての印象は、たしかに訳は古い。今では使われていない言い回しがあちこちに見つかります。サン・テグジュペリがこの印象的な挿し絵まで自分で描いたんですね。専門家と言われる人の臭みを嫌がったそうですが。初めて知りました。この本、比喩というのか、隠喩というのか、かなり高度で哲学的で、よく解らない箇所が多々あります。人生の悲しさ、諦め、虚しさ、儚さ、失恋、絶望、等々、大人でなければ解らないことがいっぱいあります。僕の読み込みが足りないんでしょうが。子どもはホントに解るのかな?


バオバブの木

「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)」とサン・テグジュペリは言います。「この物語を書いたサン・テグジュペリのねらいは、つまるところ、おとなというおとなに、かつての童心を取り戻させて、この世を息苦しくなくしようとしたところにあるのでしょう。さもなければ、いつまでも子どもごころを失わずにいるおとなこそ、ほんとうのおとなであることを、子どもにもおとなにも知らそうとしたところにあるのでしょう。」と、訳者は「あとがき」で述べています。薔薇の花を見て戻ってきた王子にキツネはこう言います。「心でみなくちゃ、ものごとはよくみえないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ。」


バオバブの木セット

宝島社版の新訳を担当した倉橋由美子さんは「内藤さんの訳はすばらしい。ただ、子どもの読者を意識して訳しておられるので、私は大人のために訳した。だから、これまでのイメージを裏切ってしまうかもしれません」と話しています。さすがは1年あまりで50刷の大ベストセラー「大人のための残酷童話」を書いた人、この本読んだはいいけど未だに記事に書けないで困っていますが、いずれにせよ「星の王子さま」の新訳が待たれます


*星の王子さま公式ホームページはここ

http://www.lepetitprince.co.jp/

*みんなで訳そう!インターネット版「新訳・星の王子さま」はここ

http://www.tbs.co.jp/lepetitprince/