林真理子の「anego」を読んだけど・・・ | 三太・ケンチク・日記

林真理子の「anego」を読んだけど・・・


本の帯には、
まさに、恋愛ホラーともいうべき

新ジャンルを確立した衝撃の長編小説。
合コン、お持ち帰り、セクフレ、不倫、泥沼…。この小説の中には、女性ならだれしも経験してきた、思い出すだけで「痛すぎる」恋愛のすべてのパターンがある。恋愛ホラーともいうべき衝撃の長編小説。『Domani』連載中、丸の内OLの間に「anego系」という言葉や「anegoメール」なる現象まで生み出した、大人気小説。読み続けて最後の一行に至るとき、背筋まで凍り付くような濃密な愛の姿が見えてくる。


「働く女性にカリスマ的人気を誇る著者が、恋愛ホラーともいうべき新ジャンルを確立した、待望の恋愛長編小説」とありますが、なんですか、この「恋愛ホラー」って?そりゃあ確かに、林真理子は、って、あまり読んでいないから分からないんですが、たぶん、下らない小説やエッセイばかり書いている「ヒットメーカー」ですよね。でも僕はに当たるところで「純文学作家」だと思って、「文学少女」を読みこのブログにも書きました。それに続く作品を読みたいと思ってずっと探していたんですが、なぜかこの「作品」と言えるかどうか、まさにこの「通俗小説」の典型にぶち当たってしまいましたよ。そうそう「不機嫌な果実」という下らない本も読みましたけど。


章立ては、第1章合コンの掟 第2章姉御の正義 第3章見合い 第4章厄年 第5章不倫への序章 第6章甘い生活 第7章裏切り 第8章妻の呪い 第9章破局 第10章プロポーズ 終章心中、となっています。


anego」の全体像は、この章立てを見ればおおよそ見当がつくというものです。主人公は、33歳の総合商社勤務の独身OL野田奈央子。一般職OLのほとんどは派遣社員という中で、勤続10年の奈央子は親分肌で正義感の強い人柄から、後輩からも慕われる「姉御」的な存在です。合コンに行っても昔ほど熱くなれない。後輩の相談に乗っているうちにドロドロの人間関係に巻き込まれたり、自分を損な役回りだと思っています。男運にめぐり合わず結婚も出来ない。そんな奈央子のそばには結婚を言い出さないバツイチ男や、奈央子の容姿だけに惚れている年下男だけが残ります。きわどい年齢からか、良縁と思われた「官僚」との見合い話も、相手を値踏みしているうちに、相手にボロが出てきて、結局は破談になります。


が、しかし、この小説の核心は第4章からジワジワと始まります。奈央子が会社の後輩たちとゴルフに行ったハワイで、元会社の後輩鈴木絵里子と偶然出会う。幸福な結婚の見本のような絵里子に食事に誘われ、そこで絵里子の主人沢木から「僕たち家族の再生の旅だ」と告白される。沢木夫妻野田絵里子、この3人を軸に、ここからがまさに「ホラー」ですね。「ホントかよ」と思うような話が次から次へと出てきます。不倫は絶対にしたくないと思っていても、お決まりの泥沼へ。結局、そうなるんですね。


クリスマスの予定のない女4人が集まるパーティの席で「奈央子さん、知ってますか。男運が悪いのは、頭が悪いってことらしいですよ」と後輩の博美に言われる。「見極めが悪い決心がつかない。つまらない男とだらだら続ける。私たちに男運がなくって、こんな風にイヴの日に集まっているのにもちゃんと理由があったんです」


建設会社の社員たちとの合コンで、森山という広告代理店勤務の背の低いのが唯一の欠点であるラガーマンと出会います。強引にドライブに誘われます。男には書けない一節、「そのくせ奈央子は、着替える時に十分な配慮を怠らなかった。たぶん今夜は森山とそういうことになるだろう。――奈央子が選び出したものは城のバラの刺繍をほどこしたハーフカップのブラと、お揃いのショーツである。――あれこれシチュエーションを考えて選び出した下着は、予想以上の効果をあげ、――2時間後、二人はピザを食べながら、結婚の日取りと場所について話し合っていた。」この描写には笑いました。これでハッピーエンドかと思わせておいて、その後も二転三転、手が込んでいます。


それにしても醜い壮絶な争いです。「美人OLとの三角関係のもつれ」として、「絵里子さんとしては、自分の夫を信頼していた先輩に取られたことになる。このOLとは同棲を始め、絵里子さんは離婚を迫られていたようだ」と、週刊誌に書きたてられます。そして最後に、「私ね、もの凄く濃密なものを見てしまった。それまで男と女って、こんな風にどろどろと相手を奪い合うものだってこと知らなかった。ふつうの人はみられないわ。でも私は見てしまったの。」「だから私は、もう元には戻れないのふつうの結婚なんか出来ないの」あれほどふつうの結婚を求めていた奈央子が、こう言います。


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