ゲート、ニューヨーク、セントラル・パークのためのプロジェクト | 三太・ケンチク・日記

ゲート、ニューヨーク、セントラル・パークのためのプロジェクト

「ユディトⅠ・Ⅱ」とか「ダナエー」とか「エミリー・フローゲの肖像」の傑作を描いた「クリムト」じゃないですよ、オーストリア・ウィーンの画家「グスタフ・クリムト」じゃないですよ。こちらは「クリスト」です、ブルガリア生まれの「クリスト・ヤヴァシェフ」、あの「梱包芸術家」、「ラッピング・アート」というんでしょうか、なんでも「梱包」しちゃう人です。当初は梱包がテーマでしたが、近年はそれにとどまらず、あつかうものも巨大になって、活動の範囲も広がっています。

先日の新聞記事に、次のような見出しが。「ニューヨークに7500の門、芸術家夫妻セントラルパークに25年越しの夢」と。おー、やっと実現したか、という率直な感想です。なにしろ、クリストは、1979年に「ゲート」の計画を打ちあげているんですから、あれから4半世紀ですから、凄いものがあります。

以下、新聞の記事から転載。
ニューヨーク・セントラルパークの遊歩道26.8キロに、7500のゲート(門)を立てる。旧ドイツ帝国議会議事堂を布で包んだり、太平洋をはさんで茨城県とカリフォルニアに巨大な傘を並べたりするなど、日常の風景をひとときの芸術に変えてきたクリストさん(69)夫妻が手がけた芸術「ザ・ゲーツ」が12日、幕を開く。高さ4.87mのビニール製の門が、平均3、4m間隔で並んでいる。上部の梁の部分に、サフラン色の布が繭のように巻き付けてある。12日朝(日本時間同日夜)、600人の作業チームが繭をほどいてゆく。

計画はニューヨークに住む夫妻が79年に打ち上げ、24年後の03年に許可が出て実現した。全費用は夫妻が作品を売るなどして集め、約2千万ドル(約21億円)かかるとされる。夫妻は「作品に意味もメッセージもない」としながら、「揺れ動く明るい布は有機的な公園のデザインを際だたせ、四角い門は公園周辺の格子状の街並みをほうふつさせるだろう」という。ブルームバーグ・ニューヨーク市長によると、同市に8千万ドルの経済効果をもたらす可能性がある。

なにもニューヨーク市長がしゃしゃり出て、経済効果について言及する必要はないと思いますけど、ま、いいや、それは。12日に始まるというので、今朝の新聞記事を楽しみにしていたのに、残念ながら、今日は新聞は休刊日、残念です。とは言え、決してメジャーなアートではないし、一部にはクリストに批判的な人もいますし、どれだけ取り上げてくれるかわかりませんが。

クリストの作品、というより活動ですね、「ゲート」以前は何があったのか。まず旧ドイツの帝国議会議事堂「ライヒスターク」の梱包ですね。これは1971年に計画が発表されて実現したのが1990年ですね。なにしろとても実現不可能と思われていたんですが、「ベルリンの壁の崩壊」という歴史的な事件に助けられて実現したというプロジェクトです。その前は、「アンブレラ、日本―アメリカ」ですね。1991年10月9日、茨城県とカリフォルニア双方で3100本の傘が開花するという壮大なプロジェクトですね。これには僕も、参加しました。というか、見学者に一人として、茨城県へ3回、足を運び、写真を撮りまくりました。その前は、セーヌ河に架かる橋「ポン・ヌフ」の梱包ですね。「ポン・ヌフ」というとジュリエット・ビノシュの「ポン・ヌフの恋人」を思い出される方もいらっしゃると思います。この橋全体をシートで梱包しちゃうというから、凄いプロジェクトです。なにしろ、クリストの作品を取り上げたらキリがありません。

クリストのプロジェクトの特徴はというと、資金はクリストがすべて出す。期間限定、2週間あるいは3週間という短い期間に限定。会期終了後、即撤収、現状復帰。役所や町の人やメディアをを巻き込み、多くの人たちとの共同作業で行う。従って、専属のカメラマンや映像作家により、記録を残します。改めて「アンブレラ」についても述べたいと思います。