私の神保町 | 三太・ケンチク・日記

私の神保町

神保町のスズラン通り商店街のひとつ皇居側の通りの角地にその小さな建物は建っていました。 戦前に建てられたというその風格のある店構えは、かつては喫茶店などに利用されていた面影をしっかり残しています。2階と1階の間のモールディングはブルーのスペイン瓦が帯状に張られていて、角には30cm角の柱が立っていますが、幅1m位の入り口は道路の両方向から入れるようになっていて、その内側には今では珍しい大谷石が横張りしてあり、また3カ所ある窓周りは上部がアールが付いていて、ブルーのテントで覆われています。神保町には有名な喫茶店「さぼうる」もあります。ちょっとレトロだけど営業しているのであれば、若い人にはオシャレな喫茶店ということで、入ってみたくなるような建物です。

たまたまその建物の所有者であるTさんから、倉庫に使っている建物があるんだけど、きれいにして使いたい、という相談があったので見に行ったところ、これがまた凄い。2階は屋根が破れていて雨が吹き込み放題、床はボロボロに腐っていてうっかりすると踏み外し兼ねない。しかも、南側で大規模な再開発が始まっていて、ネズミが大挙して押し寄せてネズミの巣窟になっているという。そのボロ屋をなんとかしてくれないかという相談でした。知り合いの工務店を紹介して工事を行い、1階は倉庫、2階は事務所兼仮眠室に模様替えが出来て、なんとか喜んでいただきました。解体すればその廃棄費用だけでもバカになりません。古い建物も手入れさえすればけっこう長持ちが出来るんですね。

その後、Tさんにお会いしたのは、去年の今頃だったかな。あれからもう1年が経つんだ、早いものです。僕がI書店に用事があったのですが、神保町に早く着きすぎて、そのまま行くのには早かったので、「神田古本まつり」のイベントをやっていたのでスズラン通り商店街の様子をのぞいて歩いていた時でした。ちょうど東京堂書店の前あたりで、同じ商店街仲間のT書店の社長、F書店の社長の三人が立ち話をしているところに出くわした、ということでした。

神保町には最近はちょっと行ってなかったんですが、来週ぐらいから月に何回か行く用事が出来たので、また神保町の古本屋街をのぞいて歩けるので、それが今から楽しみです。

今朝の朝日新聞の読書欄に紀田順一郎の「私の神保町」という本が紹介されています。まあ、本の紹介というよりは、紀田順一郎か、はたまた神保町の紹介、といったところでしょうか。
「私にとってこの街は人生が投影されています。本好きの人との出会いがずいぶんありましたね」と言い、インターネットで本が手軽に買える時代に、「でも、足で歩き、手で触るという店の魅力は捨てがたい。」と、そして神保町とは「私の大学。足が大丈夫な限り、通います」と、紀田は言います。
紀田の本はほとんど読んでいなかったんですが、「私の神保町」は是非手に入れて読んでみたいと思っていました。

先日、紀田の「東京の下層社会」という、テーマがちょっと変わった本をブックオフで手に入れて、読み終わりました。
「あまりにも性急な首都近代化の流れに置き去られた人々の想像を絶する凄惨な生活を身をもって体験、記録した貴重な書物を掘り起こし、今はなき50年前の東京生活から、都市形成の過程、福祉対策の問題を考える。」と、本の帯に記されています。

神保町一帯では11月3日まで「神田古本まつり」が行われているそうです。