いきょくのまねーじゃーのブログ

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市立砺波総合病院の整形外科医です

未完成という

 

 サグラダファミリアは、100年以上経っても未完成だという。調べてみると、2026年に完成予定とのこと、そんなことが、なぜか頭を過ぎる。相変わらず、毎日忙しくしているためか、猛暑の疲れなのかはわからない。当院の外壁工事のために組まれた足場を見上げると、そこは、サグラダファミリアに見えた。頭がおかしくなったと言われても仕方ない。



 

 私が砺波に来た平成12年には、見上げた建物はなかった。現在の北棟と外来棟と医局棟はすでにあった。その後、工事が進められて、西病棟ができて、その後東病棟ができて、東日本大震災の後に南棟が新築された。現在工事をされているのが、西病棟と東病棟と北棟とのようである。詳細は知らないのだが。

 

 いずれの外壁もよくみると、損傷部分にはテープが貼られて、1箇所ずつナンバリングされている。かなりの数の損傷があるようである。風雪に加えて、最近の猛暑によるダメージなのかもしれない。院内で安心して、空調が効いた空間で仕事できるのもこの外壁のおかげだと言ってもいい。




 

 私が砺波に来たときに比べて、私自身の身体の劣化が進んでいるように思う。老眼鏡が時に必要となり、徹夜で仕事すると以前は次の日も通常通り仕事できたのに、今では、3日間後を引くのである。そして、医師として多くの経験を積んできた。しかし、肩こり、腰痛があり、それすら治せないヤブ医者のままである。(笑)

 

 病院の建物も私自身も、日々変化しているのだが、それに気づかずにいた。しかし、気づくと、大きな変化を起こしているのである。そして、変化し続けている。変化し続ける必要があるのかもしれない。というのも、先日、ある同級生がこんな話をしてくれた。「ダーウインの進化論って知っているよね。残る種の条件が書いてあるんだ。どうすればいいかって、変化し続けるものが残るんだ」って。

 

 そう考えると、当院の工事の様子は、やっぱり「サグラダファミリア」だわ。当院も医師としての私自身もまだまだ、未完成という…。

今が一番幸せ

 

「今が一番幸せ」長寿の秘訣だという。昨日のNHKニュースにて、102歳の薬剤師さんの言葉が紹介されていた。今日は、敬老の日だそうな。

 

 昨日、父の米寿の祝いをした。妹が連休を利用して帰省するのに合わせて、思い立って開催することにした。父は、来年2月に満88歳を迎える。米寿の祝いは、数え年で行うものという。今年2月にすべきところが、半年も遅れての開催となった。これは、親不孝の証である。

 

 以前から、歳を感じるから、お祝いはしなくていいと言っていた。そして、当日朝になって、父は「行かない。みんなで行ってこい」と布団から出てこなかった。小学生の甥っ子が30分以上説得してくれた。「おばちゃん(父の妹)と兄ちゃん(父の甥)が待っている」というとようやく動き出した。弟が予約してくれたお店に5分遅れで到着した。

 

 みなさんからお祝いの言葉をいただいた。嬉しそうだった。甥っ子が落語を披露すると、おひねりを出すことは忘れないのだが。父は、一昨年、慢性硬膜下血腫を患ってから、認知症の症状があるので、どれだけ覚えているかわからない。

 

 それでもいい。1日1日が奇跡である。そして、今が一番幸せであるといいね。それにしても敬老の日は、いつの間にか9月15日じゃなくなったのよね。調べると2003年に変わったそうな。20年も敬老の日を毎年過ごしてきたはずなのに、父の米寿の祝いをして、初めて気づいたわ。

 

 

 

 

  VUCA…

 

 VUCAの時代と言いますが…と演者の先生は話を始められた。あるwebでの講演会でのことである。VUCAとは、『Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語』。ちなみに読み方は、「ブーカ」というらしい。

 

 「Volatility」という言葉で連想してしまうのが、株価の動きである。最近の日本の株式市場は、まさにVolatilityが高くなっている。平均株価が1日で1000円以上変動することを目にすることが多い。その中での対応力が求められている。

 

 「Uncertainty」というのは、不確実性ということであり、今まで何度も医療には不確実性があると書いてきた。同じような病態の患者さんでも同じような経過を辿ることが保障されることはない。いかにその不確実性を小さくするには、確実な医療知識や技術が求められるのはいうまでもない。

 

 

  「Complexity」という言葉もまさに現代の一面を捉えられている。医療においても、私が医師になった時に比べると、技術が進み、使える治療法も多岐に渡り、複雑化してきた。例えていうなら、複雑な迷路のいくつもある選択肢の中を彷徨っているようにさえ見える。

 

  「Ambiguity」というのは、私にとって都合のいいことかもしれない。時に「どちらでもいいですよ」と患者さんにいうことがある。学生時代、試験では、答えのある問題で、正解を答えることをトレーニングされてきた。しかし、現実はそんな簡単なものではない。答えのないことも多い。そんな時、曖昧さを受け入れる必要かもしれない。

 

 『VUCA』…こんなおしゃれなことを言わなくても、混沌の世の中とでもいえなくもない。こんな世の中をどう生きていけばいいのか、多くの人の意見を耳にする。冒頭の講演では、患者個々の状況に合わせた手術を勧める内容だった。それはその通りだが、「まだ、コンセンサスが得られていない」という言葉もあった。そして、議論は続く。

 

 そういえば、私が子供の頃、母は、大きめの服を買ってくれた。それは今思えば、私自身の体格のVUCAを知っていたのかもしれない。そのズボンはブーカブーカ、これを書きたかっただけ。(笑)