『岡山温泉旅』
古代吉備桃太郎伝説の原型そのモデルと言われるのが、
大和朝廷の四道将軍の一人、吉備津彦命(きびつびこのみこと)だ。
「ドンブラコッコ」と川を流れる桃から生まれた桃太郎。
悪事を働く鬼を退治し、宝物を手に入れた桃太郎。
日本一有名な昔話の真実と「めでたし、めでたし」の結末に、
想像力を膨らませてみたい。
鬼は悪者なのか、宝物とは何なのか――。
民を苦しめる温羅(うら)を吉備津彦命が退治し、
吉備を平定した逸話を伝承する。
互いの弓矢を射落とすほどの激戦の末、吉備津彦命は温羅を
討ち取り、首をはねる。
その首を御竃殿(おかまでん)の釜の下に埋めても
唸り声を上げ続ける温羅は吉備津彦命の夢に現れる。
「妻の阿曽女(あぞめ)に御竃殿の釜炊きを任せよ。
釜の音を鳴らし吉凶禍福を占おう」。
これが不思議に釜が鳴動する「鳴釜神事」の由来だ。
温羅の居城跡とされる鬼ノ城。
復元した板葺城門から吉備平野や児島湾を一望できる。
国指定史跡吉備津神社の鳴釜神事。
百済渡来の王子とも言われる温羅命を製鉄や稲作などの
技術を伝えた恩人として祀る。「鬼」とは異質な存在の総称。
節分には桃太郎と鬼が仲良く「福は内」と豆をまく。
善悪の対立軸ではなく多様性を受け入れ、活かし合うことが
「宝物」。そう桃太郎伝説が教えているようだ。 |