経済財政諮問会議議論、年間移民20万人の岩田委員の「思い入れ」がそのまま政府の方針になるリスク! | 匿名のブログ

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気になったニュースに関して自分なりに考え、掘り下げて、分析した結果を記録して行きたいと思います。ですから更新はかなり不定期です。どうぞよろしくお願いします。

今回は経済財政諮問会議における検討が報道されております移民政策について取り上げたいと思います。移民政策は経済的な観点だけでなく、社会・政治・安全保障等様々な問題が絡むもので、国民一人一人の生活にも大きな影響を与えるものです。安倍総理は以前、国民的議論が必要である旨発言をされていますが、下記の通り、経済財政諮問会議においてこれを含んだ議論が始まってしまった以上、国民としてはその懸念事項等について積極的に発言をしていくべきと考えます。既に、多くのブログ等においても移民受け入れに伴う問題点・懸念事項がアップされており、更にネットユーザーから内閣府への電話の様子も拡散されています。

1 経済財政諮問会議における審議について

 まず、基礎的情報として、経済財政諮問会議における審議の仕組みについて説明します。この諮問会議は内閣府設置法第18条~第25条に基づいて内閣府に設置され、経済全般の運営の基本方針等について調査審議し内閣総理大臣等に意見を述べる機関です。政令(経済財政諮問会議令)により、専門調査会を置くことが出来るようになっていて、今年(2014年)1月20日の会議で専門調査会である「選択する未来」委員会の設置が決定されました。
 この決定を受けて1月30日「選択する未来」委員会(会長:三村明夫新日鐵相談役名誉会長)の第1回会合が開催され委員名簿が明らかになりました。この日の委員会で、会長代理として岩田一政日本経済研究センター理事長が指名されるとともに、今後の委員会の検討体制として、3つのワーキンググループ(成長・発展WG<岩田一政主査>、人の活躍WG<吉川洋主査>、地域の未来WG<増田寛也主査>)の設置が決定されています。

2 1月30日、岩田会長代理から提出された資料に「毎年20万人程度の移民受け入れ」明記

 1月30日の「選択する未来」委員会第1回会合では体制やスケジュールの話に続いて、事務局である羽深統括官から委員会の論点の説明が行われた後、各委員に発言の機会が与えられます(第1回「選択する未来」委員会議事要旨参照)。当日は委員9名のうち岩田一政委員は欠席していましたが、他の委員からの資料とともに岩田委員から提出された資料も配布されました。移民に関する記述は(会長代理で成長・発展WG主査でもある)この岩田委員から提出された「2050年への構想:長期予測」と題する資料で、その10ページ(関連グラフ18ページ)に下記のように記載されています。

(以下 岩田委員提出資料10ページより「2050年への構想:長期予測」)

7.成長・改革シナリオ:
 人口規模と生産年齢人口の維持
 1.100年の計で9000万人の人口規模を維持することにしてはどうか?
 ‐
 子育てについてフランス並みの環境を整備すれば、出生率を1.8まで回復することが可能であ
 る(費用は8兆円程度)。
 2.毎年20万人程度の移民受け入れを2050年までに実現することにしてはどうか?
 ‐
 現在、5万人外国人労働者を受け入れているが、留学生(14万人)を倍増する。さらに、介  護、子育てのための外国人受け入れを緩和すれば可能。

(以上、引用終わり)

同様の内容が記述された資料はいずれも「岩田委員提出資料」として、「選択する未来」委員会第2回会合(2月14日)の「岩田委員提出資料」第3回会合(3月24に)での「岩田委員提出資料」として配布され、特に3月24日の第3回会合では事務局である内閣府が作成した資料「目指すべき日本の未来の姿について」中「Ⅲ選択の視点」の表中に「技能者、技術者中心に移民受入れ (例えば、年間20万人)」と明記され、3月19日に開催された第3回経済財政諮問会議、第1回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議に提出された内閣府作成資料「人口減少と日本の未来の選択 (「選択する未来」委員会の検討状況)」として報告も行われています。
(岩田委員が主査を務める成長・発展WGでも第1回会合(3月6日)での「岩田主査提出資料」として提出されています)

3 諮問会議においては「委員個人の思い入れ」がそのまま政策になってしまうリスクがある

 政府のこの手の審議会・諮問会議は、「大臣に意見を述べれば仕事が終わり」なので、執行段階での問題について委員が責任を問われることはまずなく、意見が「一見もっともらしければいい」といった安易な方向に流れるリスクが小さくありません。委員についても、「政府から頼まれて」引き受けていることが多く、自分の得意な分野についてはそれなりの意見は述べても、答申の出来上がりについては自分の発言内容・専門分野以外は関心がないことが普通です。もし委員のうちに誰か「ある施策」に思い入れが強い人がいた場合、他の委員は自分の専門の立場から反対出来なければ、その委員の「思い入れ」を尊重する方向に動きがちになります(報告書の草稿は、事務局である官僚の手で行われることが多いのですが、委員の「強い思い入れ」については、これを盛り込んだ「上手い文書」を作成しなければ会議で了承されません)。
 上記を見れば分かる通り、岩田委員は「年間20万人の移民受け入れ」に関する資料を執拗なまでに各種会合に提出しており、非常に本件への思い入れが強いことが分かります。従って、岩田委員の提案に対しその懸念事項について議論できる委員がいなければ、提案が孕む問題点についての検討が行われることなく、岩田氏の提案そのままに「成長・発展WG」⇒「『選択する未来』委員会」を経て、経済財政諮問会議の答申に盛り込まれる可能性が高くなります。経済財政会議の答申が正式に行われれば、官邸主導でこれに基づく法令面の整備等が政府において行われ必要な法令の立案や予算措置等、政府全体が動き出すことになります。
 このように答申が出てしまえば、次に国民が議論に参加出来るのは政府案が完了して、予算や法律の議論が国会で行われる段階であり、それまで政府では「答申の内容を実現するための施策」の立案を使命として動くことになります。一度政府案が出されれば、国会でそれなりの議論は行われることになると思いますが、最後は政治的な駆け引きの中、多数決で政府案が押し通される可能性が高くなります。

4 今の段階から議論への国民参加が必要

 冒頭で申し上げました通り、移民問題については経済的な観点だけでなく、社会・政治・安全保障等様々な問題が絡むものであり、多方面から議論が必要なものであるにもかかわらず、現在の経済財政諮問会議・「選択する未来」委員会の審議体制では、岩田委員の「思い入れ」を背景に、移民受け入れに伴うリスクの議論が不十分なまま国の政策が作られてしまうリスクがあります。移民受け入れに伴うリスクに関しては国民の間に大きな懸念があり、また、そもそも必要なのかということに関してもコンセンサスが形成されていないものと筆者は認識しております。冒頭で取り上げたネットユーザーの内閣府への電話のように、我々国民としては最終答申や国会審議を待つことなく、関係先へこの懸念を前広に伝えて行くことが必要だと考えます。
 経済財政諮問会議関する議論の様子等は下記URLから参照することが出来ます。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/

 以上、今回は基礎的な情報としては諮問会議の体制とこれまでの議論を中心に書かせて頂きました。重要な問題ですので本件話題に関する考え方等については別エントリを立てて議論を深めたいと思います。


(今回は以上です。適宜更新します。)