昨日母から電話があった
「ピアノの先生がなくなられたよ。」
「え?」
おもわず聞き返した
自分の耳をうたぐった
わたしの幼少の頃から
25歳までの付き合い
週1日レッスンに通った
結婚してから
疎遠になり
会うことが出来なかった
最後に会ったのは
とある喫茶店
先生が結婚祝いに
ケーキと紅茶をごちそうしてくれた
とってもうれしそうに、にこにこしながら
私の、のろけ話にうなずいていた先生
私はピアノのレッスンが大嫌いだった
先生はスパルタで
レッスンをちゃんとしてきてないと
容赦なくびんたがとんできた
イスをひっくり返すほど押されたこともある
毎週毎週びくびくしながらレッスンに通った
辞めたくて辞めたくて
それでも母は辞めさせてくれなかった
先生はとても美人でファッションセンスもよく
才女のうえ勝気
いつも遠い存在のようにこどもの頃から感じていた
先生の専門は声楽
オペラ歌手をめざしていたらしいが
紆余曲折の末
ピアノ教師を選んだそうだ
先生の歌声をきくたび
わたしも
声楽の道に進みたいと思うようになった
いつも遠い存在の先生だったが
保育士になってから
一時休んでいたレッスンを再開した
社会人になり
先生とも恋愛や人生、仕事の悩みについて話すようになった
レッスンはほとんどせず
話にはなが咲いてしまうときもあるほど
鬼教師だ思っていた先生だったが
話すと価値観が同じで
人生の先輩としてより一層近くに感じた
母とけんかして
先生の家に泣きながら飛び込んだこともあった
二人で
ビールを飲みながら
先生も涙して話をきいてくれた
私にとってだいすきな先生になっていた
生活がばたばたしていた私は
結婚後先生とも会えなくなった
60の若さで旅立ってしまった
最後のお別れの日
ひさしぶりに
先生と会った
白の布団に寝ている先生
いつのまにか髪に白いものが
増えていて
先生と呼んだけど
起きてくれなかった
やさしい笑顔
先生のご主人が
「かどのところに家建てたんだろ?」
と言われた
「先生私が家たてたの知ってたの?」
と聞くと
私の家をみるたび
家建てたんやな~て
言っていたそうだ
私が毎日を必至で生きてると
感じてくれてたのかな
いま
私は人生のなかで
先が見えなくてくじけそうだけど
先生が
がんばれって
応援してくれているような気がする
先生みててね
きっと
豪快に笑って見ていてくれるような気がするの