浮世絵モダーン 深水の美人!巴水の風景!そして… | けろみんのブログ

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町田にある町田市立国際版画美術館にて前期が4月21日から5月20日、後期が5月22日から6月17日と、開催されています。展覧会の概要はこちらの浮世絵モダーン 公式サイトがとても詳しく載せています。また、こちらのプレスリリースは図版が豊富です。

大正期のモダーンな浮世絵は、美人画と高相性で伊東深水、北野恒富、山川秀峰、鏑木清方など、東京藝大大学美術館で開催された「東西美人画の名作 《序の舞》への系譜」に出品されていた画家の版画が沢山ありました。
雲母擦やきめ出しなど伝統的な浮世絵の擦りを使いながらも題材が新しくて素晴らしい作品ばかりです。


展覧会チラシの表紙にある伊東深水の「対鏡」に私はなぜかピエール・ボナールのふんわりした印象をもちました。説明を読むと衣紋の表現に「影擦」という方法をとっているようで、柔らかな衣装の曲線と白い顔と黒髪のコントラストに良く映えて美しいです。
こちらは最終章に展示されている小早川清
のダンスシリーズ。

第1章 女性ー近代美人画の諸相
私はこの章が1番気に入りました。美人画の大正時代〜戦前の雰囲気はいつ見ても古いものに見えずいつも新鮮です。

「浴場の女」
橋口五葉は夏目漱石の小説の装丁を手がけたあと、浮世絵研究に没頭し「新版画」ジャンルを製作しました。日本画と西洋画を学びながらも裸婦は肉密度が低く淡白な印象。


橋口五葉「髪梳ける女」髪の一本一本がしなやかに画面下へながれとても美しいです。


小早川清「ほろ酔ひ」服の模様や髪の毛やカクテルグラスの中の円形が楽しいムードを作っています。頬の赤みがまさにほろ酔い。

「モダンガール」というと三白眼に描かれることが多い気がします。こんな目つきで見つめられたらドキドキ💓!


背景の馬連の擦りあとが、新しい試みとして良くみられます。



第2章 風景ー名所絵を超えて

坂本繁二郎は故郷の玄界灘を丸みのあるフォルムでとらえ、伊東深水は多摩川の夕べをザラッとした質感で表しました。
北川一雄は「竹林の初夏」この一点のみ伝わる大正期の画家でした。

川瀬巴水 東京十二ヶ月 三十間堀の暮雪
「期間を定めず研究的に」
「思いの儘の手法を試み」
「こじんまりとした気の利いたものを作りたい」という思いで製作されましたが未完におわりました。
この作品は雪吹雪にタワシや砥石を使って版を削るなど実験的な試みがされています。





吉田博「瀬戸内海海集 帆船 朝」
 「瀬戸内海海集 帆船 午後」
「瀬戸内海海集 帆船 夕」
同じ版木で色を変えて時間の経過を表現。海で日没を眺めるのが好きで旅行先でじっと眺めることがあります。その時この色合いを留めたいなぁと思う、そんな気持ちがこの傑作にも感じられます。
海の色合いも素晴らしい…
「プーシキン美術館展」ではクロード・ジョゼフ・ヴェルネの「日の出」「日没」を見ました。同じく帆船と時間の経過を描いていて、繊細。

第3章 役者ー歌舞伎から新派まで

「蝙蝠安」
このプロフィールには惚れるしか無い



ジャンバルジャン
この作品ロビーに巨大な起き上がり小法師となって、叩いて遊べるのですがどうしてこの作品を起き上がり小法師にする発想が浮かんだのかお聞きしたくなります。



第4章 花鳥

花鳥の版画は風俗とは無縁の精神世界を感じさせます。「浮世絵」とは全く違う分野ですが。






第5章 自由なる創作ーさまざまな画題と表現

浮世絵が長い歴史のなか培ってきた技法をそのままモダンな題材に使い、すごくオシャレな作品になってます。

アール・ヌーヴォーの雰囲気を感じたんですが専門家によると「アールデコです」と指摘されました。私はサントリー美術館で見たアールヌーボーのダンスのテーブルピースを↓思い起こしてそう感じたのですが、その方は対象のファッションで判断したのです。着物でドラマやってたので現代劇だといったら、服装が着物だから時代劇だ、みたいな(例えがうまくない)
この章の題名は「自由な創作」枠に当てはめるのは本意でないかも。

セーブルの作品です。






常設展は古い西洋版画。印刷の技能の初歩をまなべます。







嬰児虐殺、酷い…

カーテンを開けて数秒だけ見てもどす。通の楽しみ方ですね


美術館の後、館内にある喫茶店で「お茶と生麩みつまめ」を食べました。おいしい。豆が香ばしかった!