今回は、夏の終わりに聴きたい、気持ちのい~いアルバムを一枚ご紹介しましょうお月様


宝石白Raul Midon 「A World Within A World」宝石赤


2005年にシーンに飛び出したラウル・ミドン、待望のセカンドアルバム。スティービーワンダーのようなわかりやすいソウルフルさに独自の音楽センスをプラスさせたオシャレなサウンドで、デビューアルバムはここ日本でも大いに注目された。あれから2年、飾らないラウルの生き様がより反映された意欲作「A World Within A World」がドロップドキドキ

前作「State Of Mind」は伝説のプロデューサー、故アリフ・マーディンが50年にわたる輝かしい歴史の中で最後にクレジットされ、彼が最後に自らプロデュースを申し出たアルバムとしても注目を浴びた。そのアリフの息子、ジョー・マーディンが今作のプロデュースを担当。亡き父の魂(Soul)を感じながらのレコーディングだったという。

早速中身を見て行こう。

4.ain't happend yetクローバーはアカペラのドゥワップ調のコーラスに乗って自由に楽しみながら歌うラウルの伸びのあるボイスが印象的。とにかくグルーヴィービックリマークコーラスの各パートは本人が担当。(一番低音のみジョーが担当)

ロマンティックなR&B好きにたまらないのが5.all because of youチューリップ赤 いきなり甘いコーラスから入るこのナンバー、ゆったりとした曲調だが、歌われているのは妻に対する気持ちのこもったストレートなラブソング

まだ人々が活動していない早朝、ちょっぴり早起きして聴きたいAORサウンドは6.the more that i knowブーケ1 歌詞の中では「walking through the afternoon(午後に散歩しながら)」という一節もあるので昼下がり、カフェオレを一杯いただきながら聴いてもいいかもしれないコーヒーそよ風のように気持ちのいい一曲だ。

アルゼンチン人の父を持つラウルのルーツが窺える

7.tembererana9.caminandoヒマワリ7.ではスパニッシュ・ギターを鳴らしたり、南米の民族楽器であるケーナを使ったり・・・また9.はこのアルバムの中で唯一スペイン語で歌われているナンバーである。(写真下:ケーナ)
ケーナ2









 今作の様々なレビュー等において共通して強調されていることが「歌詞の世界がより深みを増した」ということ。確かにどの曲をとってもラウルの心から伝えたいこと、声を大にして皆に叫びたいことが歌に乗せてしっかり届けられている。ときにそれは愛の必要性を説く純真なラブソングであったり、子供の頃に見た情景であったり、亡き母への想いであったり、はたまたネット社会に対する疑念「人々は、武器を持つことで平和が保たれる」という過激な言葉であったりする。そんな数々の力強いメッセージに胸打たれつつ、私が特に感銘を受けたのは、以下に挙げるような盲目のラウルならではの言い回しダウン


「I've been listening to the month of June」

6月の声に耳を傾けた)

「As sunlight turns to cooler moon

(太陽が涼しげな月へ変わる頃)

「Just to ride on this invisible train

(この透明列車に乗るために)


6月に耳を傾けたり、月を「cool」と表現したり、列車が透明だったり・・・私たちが普段気づかない部分にも敏感に反応し、ラウルなりに感じ取る。そしてその情景を私たちが使わない言葉で美しく表現する。これぞまさにラウル・ワールドではないか・・・!更にこのアルバムの中でtommyが一番愛するナンバー「pick somebody up」では、ラウルがなぜ人前で歌うのか、一体何のために演奏しているか、との問いに対してラウルらしくこのように答えている。

「I mean, I love it! I can hear it! I listen when somebody smiles at me!」

(とにかく、好きなんだ!聞こえるんだ!誰かが僕に微笑んでくれるのが聞こえるんだよ!)



 レコードの音に徹底的なこだわりを見せるプロデューサー、ジョー・マーディン。そのこだわりの甲斐あって今作は前作に増してとっても温かみのあるサウンドに仕上がっている。一音一音が大切に演奏されているからなのだろう。音は和音となって、ラウルの美しい歌声と嬉しそうに交わっていく・・・。いろんな音楽ジャンルが織り成す空間、そしてラウルの詞の世界にどっぷりと浸かっていただきたい。きっと聴き終わった後、どこかへヴァーチャル・トリップしたかのような心地のよい感覚に陥るはずである。


「このアルバムを持って、旅に出かけてほしい。アルバムの中にはいろんな世界が存在していると同時に、それらはどこかひとつに繋がっている。R&B、昔ながらのソウル、アルゼンチン、これまでになかった歌詞、アカペラナンバー・・・・・様々な要素があるんだ。」by Raul Midon


raul