かなりひさびさに「digital_publish(電子出版)」のカテゴリの記事を書いてみます。
(1年以上ぶり!)

僕がアメブロでブログを書き始めたきっかけが、電子出版・電子書籍に関するメモ書きをためていくことだったのですが、それが今から4年弱前の2010年7月。

CSS Nite in Ginza, Vol.51

CSS Nite初出演に関してのメモ書きでした。

この当時は、ちょうど日本で初代iPadが発売された直後、スマートフォンからスマートタブレットの時代!インタラクティブコンテンツ!そして、(何度目かの)電子出版元年!と騒がれた時期でした。

実際、僕が今、2代目の代表幹事を務めさせていただいている「電子書籍を考える出版社の会」が立ち上がったのも、この年、2010年6月8日。

それから約3年が経過して、ようやく市場としての電子出版、そして、コンテンツとしての電子書籍の認知度が1つ上のフェーズに上がったのではないかと思います。

このあたりについては夏ぐらいにまとめて一度発表してみたいところ。

■街の書店とインターネットの書店

で、今回は振り返りではなくて、先日体験した、インターネットの書店、いわゆる電子書店での本の購入に関してのメモと個人的考察を書いてみます。

本棚

先日のブログでも書いたとおり、2週間ほど前に名古屋広島出張に行ってきました。

このとき新幹線の中で本でも読もうと考えていて、せっかくだからiPhoneから車内で購入して読書をしてみるというのを意識的にしてみました。そのときの自分の動きを備忘録的にまとめてみます。

■インターネット書店へ行こう

まずはAmazonへ。

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僕は今、「鍋、つつこ。」というブログをみんなで運営しているので、せっかくだから「鍋」に関する本を探してみよう!と、検索。

すると。

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あれ?これ本じゃなくて、リアル鍋じゃんw
そう、あたりまえなんですが、Amazonでいきなり探すとこうなっちゃうんですね :-)

ということであらためてKindleストアへ移動して「鍋」で検索。

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でも、検索結果多すぎ!185って。で、よくよく見てみたらほとんどがレシピっぽい。さすがに移動中にレシピは読まないのでw、もうちょっと絞り込もうということで。文芸・小説に絞り込み。

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すると、14種類まで減りました。

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そこからどれにしようかと思って選んだのが、この『鍋奉行犯科帳』

鍋奉行犯科帳 (集英社文庫)/集英社


購入。iPhoneを選びます。

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そして、Kindle for iPhoneでダウンロード。無事手元に届きました。

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この一連の流れが、ネット接続とiPhoneがあれば移動中に実現できるっていうのは、本当に便利な時代になったなーと思いました。

■セレンディピティはないのか?
さてさて、ここまでの流れで。

僕はKindleストアのようなネット書店があたりまえになっていったら、いわゆる街の本屋さんで体験できるようなセレンディピティ、いわゆる偶然の出会いと、衝動買いという体験って減るもの(いずれはなくなるんじゃないか)と思っていました。でも、今回、移動中にこういう体験をしてふと思ったのが、セレンディピティって実は無意識の中の意識としてあるものなのかと。

なんか禅問答みたいですねw

まず、僕が言っているセレンディピティについて説明してみます。

たとえば、自分が「あの漫画の最新刊を買いに行こう」という意識で家の近くのTSUTAYAにいったとき。たまたま雑誌コーナーを通った際にメジャーリーグ特集特別号を見かけて思わず買っちゃった、というのがここでいう本屋さんの「セレンディピティ」です。

ネット書店ではこの「セレンディピティ」っていうのは体験できないものという先入観がありました。

たしかに自分自身、AmazonやKindleストアにアクセスして何かを買うときって、リアルの書店に行くとき以上に買うものへの意識(≒何を買いたいかという目的意識)が強くて、当然ながらそれを探す行動“のみ”に注力している自分がいます。

でも、先ほどの、移動中に何か本を買おうかなっていうのは、とくに目的がなくて、でも「本が欲しい」というかなりアバウトな欲求があって、(たしかに「鍋」というキーワードはありましたが)結果として想定外の本を買うというセレンディピティが成立していたと思っています。

くどくど書きましたが、実はネット書店でもセレンディピティは成立するんだなと。これって、昔で言うところの「ネットサーフィン」に近い感覚です。

(余談ですが、これって方向音痴でも同じことが言えて、方向がわからない人間って、ある一定レベルを超えてしまうとそれ(たどり着かないこと)を楽しむ気質を持っていると思っています。自分がそうなのでw)

■検索とレコメンドの先にあるもの
とはいえ。

街の書店とネットの書店で大きく違うのは、絞り込まれ具合。

とくに、最近のネット書店をはじめとしたネットショップでは、技術的にアクセスしてきたユーザの属性を追うことを当たり前のように行える仕組みが整備されてきているため、「この人が好きそうなもの」「この人が探しているもの」を先回りして探しておいてくれるようになってきているので、まったくの想定外のものと出会いにくいのも事実。たぶん、その雰囲気が、僕の中での先入観となって「ネット書店ではセレンディピティがない」と感じていたように思います。

ちなみに、レコメンドをはじめとしたネットショップ・ECでの検索に関しては、zakiさんのgihyo.jpの連載で詳しく書かれていますので、ぜひご覧ください。

ECの成長の鍵は検索にあり~あなたのサイトにもネットコンシェルジュを
http://gihyo.jp/design/serial/01/ec_search

話が発散しちゃいましたが、目的があるときの購入・購買っていうのは最短ルートを探したいものですが、目的がない(小さい)ときの購入・購買は、逆にどれぐらい寄り道できるかというのが大事なんじゃないかなーと思いました。これって、リアルとかネットとか関係なく、偶然(の出会い)を求めているかどうかなんですよね。

で、具体的にどうすれば良いかというのはこれからの技術進化と、それと平行して積み重なっていく読者体験の結果でわかっていく(決まっていく)ことだと思います。

ただ、その感覚、その世界観が充実するために、これだけは必ず必要だと僕が思っていること、それは「選択肢の数」です。

ネット書店やネットショップであれば、いつも同じ品揃えの店だったら一回行けば飽きちゃうけど、訪れるたびに品揃えが増えて、更新されているお店であれば行くこと自体が目的になりますしね。その上で、きちんと探しやすい品物の並べ方、そして、適度な遊び(偶然創発)が求められていくと思っています。

久々の電子出版・電子書籍ネタを書いていたら、まとまりがなくなっちゃったんですが、ここ数ヵ月の電子出版市場の盛り上がりを内側の立場(提供する側)で体感しているからこそ、改めてネットで本を買うことというのを考えてみて、そして、これからより良い電子出版市場・電子書籍業界を作っていけたらいいなと思い、書いてみました。

Kindle Paperwhite(ニューモデル)/Amazon