津波被害と「失敗学」 | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

東京大学名誉教授で、現在は工学院大学教授である畑村洋二郎先生。


もともと機械工学の先生ですが、「失敗学」を提唱し、現在はその活動を精力的に進められている。

Wikipediaで、専門の最初に失敗学と書かれているのを見てちょっとびっくり。

自分もその考えに共鳴して、10年前くらいに会社の出張で講演を聴講することを願い出て許可されたこともあります。


失敗学とは、畑村先生が世界で最初に提唱し、確立されてきた活動。


「失敗に学び、同じ愚を繰り返さないようにするにはどうすればいいかを考える。さらに、こうして得られた知識を社会に広め、ほかでも似たような失敗を起こさないように考える活動。」


現在では、特定非営利活動法人「失敗学会」も発足している。

http://www.shippai.org/shippai/html/index.php


先生の2000年の著書、『失敗学のすすめ』 (現在は文庫本も出ているようです)


失敗学のすすめ (講談社文庫)/畑村 洋太郎

¥560
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ここに、三陸海岸の津波被害のことが書かれていたのを思い出し、本を引っ張り出してみました。

書かれていることを引用してみます。

(単行本でp.80~)


 失敗事例が減衰することを示す典型例をもうひとつあげましょう。昔から何度となく大規模な津波被害を受けてきた岩手県三陸海岸を歩いたときに実際に見聞きした話です。


 津波というのは、海底地震や海面への氷河や岩石の崩落によって発生した海面が伝わり、高い波となって海岸におしよせるもので、天候に起因する高潮とは区別されます。入り組んだ海岸線を持つリアス式海岸では、先に来た波が後ろから来る波に追いつかれて徐々に波高を上げていくという現象が起こりやすく、Y字型湾ないしU字型湾の湾奥にある集落に大きな被害をもたらします。


 三陸海岸は、津波被害を受けやすいリアス式海岸であるばかりか、沖には地震の巣である日本海溝があるため、世界一の津波常襲地帯として知られ、何度となく津波被害を受けてきました。津波は学術用語として「Tsunami」で世界に通用します。 


 その三陸海岸の町々を注意しながら歩いてみると、あちらこちらに津波の石碑を見つけることができます。大規模な津波が押し寄せるたびにつくられたもので、犠牲者も多かった古い時代の石碑は慰霊を目的にしていました。その中には、教訓的な意味合いがこめられたものもあり、波がやってきた高さの場所に建てられ、「ここより下には家を建てるな」という類の言葉が記された石碑も少なくありません。上の写真を見てください。この石碑にはここより下に家を建てるなと描いてあるのに、そのすぐ下に家が建っているのです。日々の便利さの前にはどんな貴重な教訓も役に立たないことを物語っています。


 昔から伝わるそんな忠告を人々が忠実に守り、いまでも石碑より下には絶対に家を建てないなど徹底した津波対策をとっている地域ももとろんあります。かと思えば別の地域では、便利さゆえに先達たちが残した教訓を忘れて、人が次第に海岸線に集まっているところもありました。


 

 畑村先生の発案で、過去の失敗を集めた「失敗データベース」というのが作られて公開されていますが、そこで「津波」で検索してみると、スマトラ島沖地震や日本海中部沖地震などの津波被害がヒットします。

http://shippai.jst.go.jp/fkd/Search?kw=%C4%C5%C7%C8&op=0&fn=1&dt=0&bt=1


 そして、その中で明治三陸大津波という項目を開くと、マグニチュード8.5の地震で、1896年に最大津波高さ38.2m、死者22,066人の被害をもたらしたという津波被害について記されています。

http://shippai.jst.go.jp/fkd/Detail?fn=0&id=CA0000616&kw=%C4%C5%C7%C8



 今回の地震・津波での死者・行方不明者の数字は発表により異なりますが、例えば9時のテレビ朝日では「1,900名を超える」とされています。しかし、町全体が壊滅的被害を受けた地域で約10,000名が行方不明との報道も見ており、正確な数字はわかりません。

 

 月並みな言葉しか書けないですが、被害にあわれた方に心よりお見舞い申し上げます。

 

 今回の津波被害については、何よりもまず一刻も早い捜索・救援が急務の課題です。

 さらに仮設住宅の建設、被災された方々への支援等々、やるべきことがたくさんあるでしょう。


 それと同時に、長期的な課題としては、実際に何が起きたのか、過去の教訓はどう活かされ、またどう活かされなかったのかをしっかり検証し、数十年後、数百年後にもまた同じ被害をもたらさないように、しっかりした教訓を残すことが我々の世代の責務と考えます。