アパートの裏庭に面したベランダの窓辺は見事にグリーン色に染まっている。少しづつ角度を変えて太陽を光を受けている葉の様子もまた美しい。お台所から聞こえてくる洗濯機が回る音さえも楽しい音に聞こえてきて、それが静かで穏やかな暮らしを表現している。


幼少期から私の勉強机はいつも緑の多い窓辺に向かっていて、枝がゆわりと動く様子をお茶を飲みながら眺めると静かな充足感が溶け出し、心にしみてくる。欧州に移ってから引越しを重ねてきたが、どの家も自分の日本の子供部屋のイメージが選択の基準になっているのだと気づいた。それは、こげ茶と白が基調で、木々の緑色と太陽の橙色が彩を添えている。旅行先のホテルやレストランで様々な基調のインテリアに触れる機会があった上で、自分の求める憩いのある住まいとは、昭和時代と自分の子供部屋の様子にモダンさを加えたものであるとわかった。


もう20年近くも前にELLEで紹介されていたInès de la Fressangeのパリのアパルトマンは北欧のグスタフ王朝時代のインテリアをエッセンスに取り入れていた。銀色のボールに活けられた真っ白なあじさい、木のぬくもりの残る食卓、透明すぎないガラスのコップ、強すぎない壁の色、明るい茶の木の床など、そこにある種の昭和らしささえも感じられた。その親近感のある美しさは今でも心に残り、家具や器を選ぶ時などにその様子が思い出される。そこに日本らしさを足したり引いたりして想像するのもまた愉しい。こんな風に自分の好きなものの原点を振り返っているうちに、彼女が寝室に取り付けたようなグレーがかった緑色と白のチェックのカーテンを作って貰いたくなった。