うちわまき | 徳富 均のブログ

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自分が書いた小説(三部作)や様々に感じた事などを書いてゆきたいと思います。

 毎年、5月19日は鎌倉時代の唐招提寺中興の祖である覚盛上人(かくじょうしょうにん)の命日であり、その日唐招提寺では「うちわまき」の法要がある。生前、覚盛上人がいかに深く戒律にかなう生活をしていたか、そのことを象徴するようなエピソードが残っている。

 ある日、覚盛上人が座禅を組んでいたとき、蚊(か)が飛んできて覚盛上人の肌を刺した。それを見た弟子の一人が、うちわで蚊を殺そうとした。その時、上人は弟子を制して次のように言った。

「私は蚊に血を与えている。これも菩薩行だ。叩くのは不殺生戒(ふせっしょうかい)に背(そむ)く」

 このように厳しく戒律を守った上人の徳を偲(しの)んで、近くの法華寺の尼僧によって葬儀の際に蚊を追い払うためのうちわが奉献された。

 この故事にちなんで、覚盛上人が亡くなった5月19日にうちわが奉納されて、法要の後にまかれるという。現在は毎年、舎利殿(鼓楼・ころう)から数百本のうちわがまかれ、約千本のうちわが抽選で授けられるということである。

 蚊と聞くと、聞いただけでもかゆくなる気がします。文覚も若い頃の修行で、竹藪の中で蚊に刺されながら座禅を組んでいたというのを聞いたことがあります。人間は、気持はだんだん弱くなっているのでしょう。やはり、利便性を追求した結果なのでしょうか、少々の不都合にも耐えられなくなってしまっているのかも知れません。「根性(こんじょう)」だけでは人生をまっとうすることは出来ませんが、少しぐらいの苦労ならばそれに耐える精神を養うことも必要だと思いますが。