今年も11月11日から17日まで「国民の皆様に、税務行政に対する理解と信頼をより深めていただくことを目的(国税庁HPより)」とした「税を考える週間」だったので、各地で関連行事が開催されていました。

今回は「税を考える週間」にちなんで少し真面目に税金について書きたいと思います。

このところ税制改正の方向性がちらほらと報道されています。

例えば法人税率は下げるけど特例を整理して課税ベースを増やそうとか、高額な給与については給与所得控除額を縮減しようとか、相続税の納税者数をもう少し増やそうとか、タバコ税増税は見送りとか、年金受給者の確定申告を不要にする新しい制度を作るとか。

でも報道を見る限り、今後日本という国がどのような方向性を持っているのだから税制を通じてこのようにそれを推進していきたいのかについて、あまり伝わってくるものがないような気がします。

法人の75%くらいは赤字で法人税を払っていないのだから、法人税率が高くても関係ないじゃないかという意見もあります。

でも残り25%の国際的競争力を維持している法人について法人税率が高いことで国際競争上不利になったり国内での事業を縮小せざるを得なかったりという状況が少しでもあるのであれば、その25%の国際的競争力を維持している法人の状況を改善させることは雇用維持等により国全体として見たらプラスの方が大きいかもしれません。

また海外の企業が日本に進出してもらえるようになるかもしれません。

そうなれば、波及して国民の生活も今よりは改善されるかもしれません。

次に給与所得控除額の縮減についてですが、所得再配分機能の強化という言葉は理解できるのですが、ちょっとでも頑張った人からいきなりガポッと取ることになると、頑張ろうという人の気力を削いでしまうのではないでしょうか(もちろんムチャクチャ高額をもらっている方々には一定の負担増もお願いしなければならないかと思います)。

日本は資源がなく国民一人一人の真面目さや頑張りが国力の源泉ですから、頑張った人が頑張った成果を実感できる程度の手取り額増加は保障してほしいと思います。

また、(こちらはあまり報道されていませんが)逆に国際的に見れば一定所得以下の国民負担率(税金だけでなく社会保険料等も含めて)が低すぎる状況の改善についても、同時に検討しなければならないのかもしれません。

相続税の基礎控除額縮減にしても、都心の一等地に住んでいると意外と引っかかってしまうかもしれません。

相続税が払えないような人は家を売却して都心に住むな、という割り切った方向性なのかと思うと、どうも国としてはそこまでの覚悟はないように思えます。

でも相続税の申告が必要になる方が増えるということは・・・仕事的にはウェルカムなのかな?

深く考えないで、とりあえず税収が今よりも増えることを考えようという状況がみえみえのような気がして心配です。

国民の生活や安全を支える大切な税金に関する問題だからこそ、もっと慎重に、長い目での議論がなされてほしいと思います。

予算の半分も税収でまかなえないという厳しい現実を前に、政府が行っている事業仕分け第三段で10の無駄遣いを追求することに時間をかけている間に、ふと気付いたら1,000の財源不足に対する対策が検討されていなかった、なんていうことがないように私達も注視していかなければなりませんね。

でも、お願いですから税制改正を行う場合でも酒税だけは目をつむって増税になることがないよう・・・できれば減税になるようにお考えくださいませ。


田中 大貴