『頑張れ、この「寄らば大樹の陰」傾向の親を持つ子供達!』〜林要さんの教育論に学ぶ〜 | 『自炊力は人間力』おだしプロジェクト土岐山協子の〜「自炊はじめよう」ブログ

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おだしプロジェクト代表の土岐山協子と申します。
日々の徒然を書いております。『ゼロからはじめる自炊塾』という、大学生以下無料の料理教室をやっております。料理をする人が少しでも増えたら嬉しいなあ、と思っています。

皆様こんにちは

土岐山です(╹◡╹)

昨日アップさせていただきました記事の中で、ペッパーくんの生みの親(こちらの表現が一番わかりやすいので)林要さんの教育論については次回にと書きましたら

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林要さんの教育論を楽しみにしていますという方が多かったので

facebookに年末書いてくださいました林さんの教育論をそのまま転載いたします

本文に書いてあることがわかりやすいように林要さんの略歴を記載いたします

【林要】
GROOVE X 創業者兼 CEO。トヨタ自動車で空力技術者としてスーパーカー”LFA”やドイツでFormula-1の開発に従事。11 年よりソフトバンク孫正義 CEO が立ち上げた「ソフトバンクアカデミア」参加。12 年、同 CEO から誘いを受けて「Pepper」の開発リーダー着任。15 年から現職。

それではどうぞm(_ _)m

(以下、林要さんの記事↓↓↓↓↓)


『子育てについて書いて欲しいと 土岐山協子 さんから、何故か若輩者の私にご要望をいただいていたので、十分な経験が無い私が書ける事など限られてはいるのですが、僭越ながら今の思いを記しておこうと思います。

まず、子育てとは何かと考えた時に、ここでは「真っ新な脳という神経細胞群に、思考パターンとなる神経回路を焼き込むプロセス」だと考えます。焼き込まれた神経回路=思考パターンは大人になってからでも変えられるのが脳の特徴ですが、物理的に回路の繋ぎこみを変える作業になるので、一気に変えるのは無理で、徐々にしか変わりません。だから出発点が大事という意味で、子育ても大事と言えます。

その子育ての過程で、大きく二つの機能を獲得するという目的を達成する事が重要だと思うのです。

1. 自己肯定感を育む。→思考の習慣を育む。
2. 共感の習慣を育む。→社会性を育む。

そしてかなり後、恐らく思春期を超えたぐらいから、もう一つ追加されます。

3. やりきる力を育む。→生きる力を育む。

3は1と「我慢強さ」が組み合わさって最近はGRITと呼ばれている性質として結実するものですが、なぜ「我慢強さ」といった部分を思春期前の小さい頃の最重要項目に入れていないかと言うと、その時期は脳の前頭葉と呼ばれる部位が発達していないからです。前頭葉が理性的、抑制的な思考を司りますが、25歳くらいまで成長し続ける領域のため、未成熟の子供の頃に無理に「我慢強さ」を教え込もうとしても、脳の機能的に無理があり、逆に自己肯定感を下げてしまうという副作用だけ大きくなる可能性があるからです。

では1の「自己肯定感」がある子は何がいいのか。それを以下の記事によくらまとまってるので、そこの言葉を引用しながら書かせていただきます。


他の人より強い自己肯定感を持つ子は、何事においても「できそうだ!」と思えるから、人よりチャレンジをする傾向があるようです。ちょっと壁があっても、「大丈夫、わたしはできるはず」っていう頑張りが利いて、乗り越えられるから、他の人と違う経験を増やす事が出来て、どんどん伸びていける。
逆に自己肯定感が低いと、逆の事が起きる。結果、最後に記すように「寄らば大樹の陰」志向になり、小さくまとまろうとする。

ソフトバンクの孫会長は「子供の頃、親からは褒められてばかりだった」と言われていますが、わかる気がしますね。

また叱られすぎて自己肯定感が低くなったケースでは、子どもは親に対する愛情不足感や不信感から、不安でたまらなくなるそうです。それで、愛情を確認したいという衝動にかられて、試すような行動に出てしまう。だから、親にわざと心配をかけるような「やっちゃいけないこと」ばかりしてしまう。危険なこと、反社会的なことをやると、親が心配してくれるから。その姿を見て「ほら、こんなに心配してくれてるから、自分は愛されてるんだ」と確認して、安心したくなる。
でもいつまで経っても満たされないから、その反社会的な態度が習慣化して、グレちゃうわけですね。

次に2の「共感」の習慣について。

他者への共感が大事だと言うのは、社会性を持つ上で何より大事だという事は、誰でも言えます。でも言っても子供は聞きません。。

なぜでしょうか?それは親の言う事は抽象度が高すぎて、言われた事がまだ身についていない子供にとって、本質的に理解ができないからです。
これは言語コミュニケーションの問題とも、前提とも言えます。まず、ここがわかっていないと全てを見誤る、と言えるほど大事な前提ですね。

親の言う事を聞く代わりに子供がやる事は何か。それは親の背中を見る事ですね。

これも上と下のリンクの記事を引用しながら、書かせていただきます。


例えば中学生の女の子が「ね、お母さん、部活やめたい」と言ってきたとします。親がやめさせたくない場合、「何言ってんの、今までがんばってきたじゃない。もうすぐ選手でしょ、もうちょっとがんばんなさいよ。お母さんも応援してるよ、ファーイト!」とか言っちゃう。

このように共感の時間を十分に取らないで励ます癖がついてる親に対して子どもは「だめだ、この人に言っても。わたしがいまどんなに苦しいか、ちっとも聞いてくれない」ってなってしまう。

また「叱り過ぎる」と子どもが親の意図しない「裏の教育」を身に付けてしまうという避けようのない因果法則もあります。

たとえば子どもがいくら言っても片づけをしないときに、共感せずに頭ごなしに「何度言ったらできるの!」と、いくら叱っても治らない。
これ、本当に治らないんですよね。そして親は悩んじゃう。

治らない代わりに、子どもが親の背中から学んで身に付けるのは、「相手がなにかできていないことがあるときは、共感なんてしないで、それを理由に、相手をとがめていいんだ」ということ。

そうすると、何かをできていない友達を見つけると、共感せずに、とがめたり責めたりするようになってしまう。それは弟や妹に対しても、同様です。そうして社会性を育むことチャンスを失ってしまう。

親が意図した「表の教育」は身に付かなくて、意図しない「裏の教育」だけが身に付いてしまう。

繰り返しになりますが、大事なところなのでもう一度。
親の言う事を聞いてる側の子供は、自分がまだ身につけられていない事に関しては、親に言葉で幾ら言われても、子供は抽象度が高くて理解できないのです。

だけど、親の背中を見て、自分なりに抽象化して真似るという、子供の脳の学習方法は生来備わっている。

このように「裏の教育」って恐ろしいわけですね。

「勉強しないとおやつ抜きだよ」とか「片づけしないと、テレビ見られないよ」って言う「罰則型」の親御さんも同じ。それで勉強とか片付けとかをするようにはならないんですね。

代わりに何が身に付くかというと、他人への「罰則型」の言葉です。お友達に対して「何々しないと、遊んであげないよ」とか言うようになる。これも、弟や妹に対しても、同様に発現します。

そうやって必ず、親の意図しないものが伝わってしまう。

ただ、誤解しないでいただきたいのは、若い頃に愛情のあるムチを受けるのは、やはり脳にとって厳しさへのワクチンを得るようなモノなので、ある程度は良い事。叱った事が無いのは、これまた非常に危ない。
甘やかすだけでも、叱り続けるだけでもダメなわけですね。これは下記の記事で良くまとまっています。


ちまたで「5回褒めたり共感したら、1回叱るぐらいが良い」なんて言われるには、それなりの理由があるわけですね。

最後に「育てにくい男の子」についても、良い記事がありますので、ご紹介します。


「育てにくい男の子」はお母さんを困らせる厄介な面は持っているかもしれませんが、人類の生存戦略としては大事な資産だと言う事が、上の記事では書かれています。

さて、これらを勘案すると、日本の若者の生命力が落ちてる理由が見えてくる気がします。

とくに象徴的だと思ったのは、下記の記事です。


「この企業に勤める人と結婚したいランキング」
1位「国家公務員」(15.9%)
2位「地方公務員」が2位(11.0%)
3位「トヨタ自動車」(9.1%)。

全体の1/3以上が公務員かトヨタに就職した人と生活を共にしたいと考えてるのは、何を意味するのでしょうか。

私はこのランキングの3位を辞めて、86位に行き、そこも辞めて、絶対に結婚なんてしたくないと思われる最下位のベンチャーを始めるという経験をしてきました。

こうして順位の最上位クラスから最下位まで滑り落ちてみたところ、少なくとも私のケースでは順位が下がるに従って、逆にどんどん楽しくなっていくんですよね。

無論、誰にとっても「順位と楽しさには逆相関がある」とは、流石に言えません。
しかしグローバル競争下と言える現代における生存戦略として、このランキングのように本質的に自力で生き残ろうとはせず、"大樹に寄る"という他力本願な選択で生き残ろう、という価値観を持つ大人が日本の1/3以上を占める、という事は言えそうです。(無論、全員がそれだけの理由でこの1位〜3位を志望してるわけではありません。それでも記事にあるように、大多数が安定を求めて大樹に寄っているという傾向は否定できません。)

さて、そんな性向を持つ大人達が晴れて結婚して、子供を産み、教育する段になると、これは必然的に「自力で生きる力を伸ばす教育」が疎かにならざる得ません。なぜなら、優先されるのは、これら1〜3位の進路に行けるための教育であって、所謂、受験勉強と内申点を稼ぐ事を優先する事になるからです。

受験のための勉強に偏重した場合の弊害は、明確です。「答えのある問題を最短距離で解く事に脳が最適化されてしまう」事にあり、社会に出てからの生命力に直結する「答えのない問題」への耐性が弱る事にあります。
多くの場合、「答えのない問題」についての思考の手がかりすら得られなくなり、考えはじめる事すら出来なくなってしまうのです。

結果として、そんな子供達が大人になった時に、答えのない問題にあふれたリアルワールドに対して将来への不安が拭えず、結果として「今を生きる事を楽しい」とも思えず、「未来への希望を持てない世代」が増えてしまう。まさに現代の日本の傾向、と言えるのではないでしょうか?

このように、「未来が不安だから、安定な組織への所属を目指す傾向を持つ人」を親に持つ子供達は、また同じような教育をされて、益々生命力が奪われてしまう。本当に気の毒なわけです。

しかし冒頭に少し書いた通り、ヒトの脳は思い立ったらいつからでも、神経細胞の再配線が可能です。歳を取るほど再配線に時間はかかるけど、それでも今からの判断を変えて、新しい経験を積み重ね続ければ、それを受けて未来の脳は確実にかわるわけです。

だからそんな親を持つ子供は、自力で親ブロックを突破して生命力を身につけて欲しいと願っています。頑張れ、この「寄らば大樹の陰」傾向の親を持つ子供達!

と、まぁ、それは偉そうに語ってしまいました。

でもね、まぁ、実はどうやって育てても子供は天命の寿命まで育ちます。子供の生命力に力強さが無くても、子供の子供(=孫)は自分の親を反面教師に生命力が出るかも知れないし、逆に子供をうまく育てても孫は生命力が無くなるかも知れない。

というわけで、延々と書いた後の結論がこれかよ、って感じで恐縮ですが、

「自分が子供にやった事は自分に跳ね返ってくる」

って事だけを意識しておけば、あとはどうやって育てても良いんじゃないでしょうか(笑

おしまい。