彼は中学3年秋に突然、大病を患い、高校進学後も1年以上辛い闘病生活を送っていた。よくなったと思えばまた悪化してしまうという繰り返しに、正直本人の気持ちもギリギリの状態だったであろう。
いつも穏やかで言葉数こそ多くはない人柄であるが、本当に想像を越える大変さであったと思う。
そんな彼が粘り強く治療に取り組み、徐々に回復してサッカーの練習ができはじめたのが2年生の夏以降だった。
それからというもの、遅れていた分を取り戻そうとBチームで一生懸命に練習していた。復帰してからの練習も大変だっただろうが、サッカーが出来る喜びを人の何倍も感じていたに違いない。
彼は将来、理学療法の道に進みたいと考えているようだ。容易な道ではないため、この春で受験勉強に専念したいという相談があった。
そして今日、Gリーグという準公式戦が翔洋(BOF)で行われた。彼にとっての集大成の大会だ。
今日、その試合への出場を果たした。たった20分だけだったかも知れないが、この20分のためにどれだけ頑張ってきたのか考えると、本当に胸が熱くなった。
応援団の『榛村come on!』のコールも、仲間のこれまでの頑張りへのエールにも聞こえた。
今日で終わりではないけれども、今日が彼なりの花をしっかりと咲かせた日であったことが、指導者として何より嬉しかった。