なんとしてでもなんとかしたいという強烈な意志が生む | 日々 これいかにか

日々 これいかにか

日々何気なく発見したことの総本山。ここに木を植えると栄養を吸収して大木になっていくのです

ゼビウスの遠藤雅伸さんが、
ゼビウスというタイトルは営業が決めたもので、自分は本当は、ダイナブラスト、にしたかった、

いうのを聞いたことがあります。

タイトルというのは不思議なもので、
自分がいかにその場で仮に適当につけたとしても、
人の手に渡って愛されるうちに定着してしまい、
それでしかなくなるものです。
これは本当に不思議なものです。

で、
その
ゼビウスですが、

10年ほど前の本で、
ゲームクリエイターの飯野賢治氏が遠藤氏にインタビューをした本(*1)、

いうのがあり、もうゼビウスの名前どころではない「不本意」が存在していたことが伺えました。

飯野「それは誰が考えたんですか。
遠藤「マーケットリサーチ。マーケットリサーチで「スクランブル」が流行っているから、二ボタン、八方向レバーで、上と下に弾を撃ち分けるようなタイプで、スクロールするのをつくれと。
(略)
遠藤「地図もね、その時から地図も全然変わってない」
飯野「へえ!何、「ゼビウス」のあの道もあの時からのものなの?
遠藤「道も変わってない
飯野「え、海も!道も海も変わってない・・・どうでもいい人には、どうでもいい話でしょうが、ゼビウス・ファンとしては結構キました(笑)
遠藤「だから地図がダサイんで、僕は最後まで変えたかったんだけど、変えさせてもらえなかった。


音楽の演奏なんかでもそうですが、下手な人が混じっていたとしても、
周りが上手い人だと、なんか上手い感じになるものですが、
それは、下手な人の演奏と混ぜたときに、自分たちの心地よくなるように上手い人たちが演奏するから
なんですね。

このゼビウスの地図にしても、
これが不本意なものであったとしても、
結局
上の飛行物体とか、画面の文字とか、さまざまなものを足すことによって、

そのダサイ地図が
逆に良いものとして機能するように
遠藤さんがコントロールしていった、
と思うんですね。

どうしても変えたいものがあっても、コントロールが及ばない、

ならば、
それを取り込んで、自分のコントロール下に置く。

上手い人が下手な人と一緒に演奏したときのように。


そして、
これは、

実は、
プロデューサーとか
ディレクターの
やり方なんだなあと僕は思うのです。

人を使う人は、
使われる人の生産物とかすべてをコントロールすることは物理的にできないわけですが
ならば、
その下手な人とコラボレーションし、下手さを含んでいても、結果上手に見せるように落とせば
いい、ということですね。

もちろん、個々のパーツパーツをすべて納得いくように作るのが作り手の理想ですが、
でも
パーツを納得いかせることばかり頑張ったことで、
全体が納得いかなくなったら本末転倒になるとぼくは思います。

もちろん、下手なパーツが多すぎてどうにもならない、というラインはあるとは思います

さて、
このゼビウスにはさらにすごい話があります

遠藤「うん、ソルバルウって変かなって言って、ちょっと変だけど、まあ、そのままいきゃいいやって。怒られたよ、ネーミング。すげえ怒られた。デザイン課長みたいなのに本社まで呼びつけられて「ふざけるな、ロシア語より難しいじゃないか。こんなのつけてどうする」とか言われてね。「いや、今、若い者はみんなこれです」って(笑)。それで社長がなんとかしてくれた。遠藤君の言うとおりやらせてみろって。


ソルバルウ、今だったら自機の名前なんてなんだっていいじゃないか、と思いますし、たぶん
なんだって許されると思いますが、
それが社内で問題になる、という時代。

もう、強烈な制約が、仕様だけでなく社内の意識にも存在していたのが伺い知れるのですが、
結局、
これとも、コラボレーション、
ということなんですね。

どうにもならない環境や
どうにもならない仕様や
どうにもならない上司

というたくさんの「(作り手からみた)下手なプレイヤー」と一緒にやるハメであったとしても、
結局ゼビウスは出来た
わけです。

となると、
大事なのは、
自由に作れることではなくって、

なんとしてでも
なんとかしたい、

という意志でしかない、
ということなんだなあと
僕は思います。

さまざまな
そういう
困った要因

どうコラボレーションするか?

それは、
なんとかしたい、
という気持ちが道を開いていく、
ということだと思うのです。

こうやって書くと、
もののけ姫のときに、宮崎駿氏が
 作品ににじりよる
という言い方をされていたことがすごくよくわかります。

もう
にじりよる
んです。

どんな手を使ってでも、
なんとしてでも
実現のために
どう作戦をたてるか?

そういうことなのではないかと
僕は思います

遠藤さんは、隠れキャラである、ソルを「おかしいななんで出るんだろう?バグですよ」と
言い張って、最終的に上司に認めさせました。


さて、

さあ何をしましょうか?

[ 話了 ]

(*1) スーパーヒットゲーム学、扶桑社、1998