私の声に現実に引き戻されたのか、少女がようやく反応を見せた。

「あ…は、はい…!」

少女の足音が離れていくのを確認した私は、改めて男たちを観察する。

 こりゃ本格的にやばいかな

助けが来たとしても最低10分はかかるだろう。
少女の混乱した様子からすると、誰も来ない可能性もある。
もう一度隙を作って逃げるしかない。
体当たりで倒した男が立ち上がり、もう一人の男に何やら声をかける。

 今だ!

私は前に倒れ込むように一気に加速する。
しかしそれは罠だった。
わざと隙を見せてこちらを誘ったのだ。
突き出した拳は空を切り、腕を掴まれる。
背中に強い衝撃。
意識が遠のくのを他人事のように感じながら、私は呟いた。

 あれから10年だもんなぁ