昭和が逝く | 硝子の中年のブログ

昭和が逝く

俳優の池部良が亡くなった。享年92歳。

大往生と言っても差し支えない年齢だと思う。

私の世代では、カラー化になっていない、戦後の二枚目スターの時代は勿論、東映の任侠シリーズも見ていない。

いわゆるヤクザ映画は全く興味が無かったためでもあるが。

しかし、この数ヶ月で、鬼籍に入った役者が多い。

小林桂樹、池内淳子、谷啓。

「暁の脱走」で競演した戦前からのスター、山口淑子(李香蘭)が存命なことが、
   特筆すべき事柄であるが。


確実に、昭和という時代が遠く、過去のものになっていく実感を強く覚える。

世の中も、アナログからデジタルに移行して、昔の形状、形式、形態が忘れられていく。

   時計の針は決して逆には進まないから、抗うことはできない。

   駄菓子が唯一、支持層を得ているような気がする。

勿論、店の絶対数は少ないが、下町にはまだ、頑張って子供たちに健全な遊びの場を提供して、コミュニケーションの機会を与えている。

話を戻すと、池部はエッセイストとしても知られ、著書が日本文芸大賞特別賞を受けたことでも知られる。

私が時々、目にする「銀座百点」という小冊子にも、彼は連載していた。

最新の10月号にも、「銀座八丁おもいで草紙」というタイトルで寄稿している。

過去のプライベートな出来事を中心に、銀座という街を背景にした、彼の半生記のごく一部が、断片としてではあるが、淡々と描かれ、綴られていて、ショートストーリーとしても面白く、読むことができた。

画面の本人と変わらぬ、彼のパーソナリティーが表れた、品性のある、そして機知に富んだ内容は、貴重な昭和史を記した随想でもあった。

文体に毒気や強い感情の吐露は無いが、今の時世には清涼剤というか、爽やかな空気をもたらしてくれた。

池部は最後まで、自分は俳優だという意識は持っていたようだ。

これは、彼の経歴からすれば当然とも言えるが、イングリット・バークマンのエピソードにも通じるような気がする。

戦時中は将校として従軍していた、銀幕の語り部が最後の旅に出た。

冥福を祈りたい。合掌。