不況と好況における構造改革について | 今今と今という間に今ぞ無く 今という間に今ぞ過ぎ行く by道歌

不況と好況における構造改革について

ケインズ派の学者である尾の教授の理論について第二回です


昨今、不況脱却のために企業などでは不採算部門を捨て


リストラを進めることで構造改革を遂げることが急務であると


言われています


そして、その流れは国の財政にも言われる様になっています


今日のような不況においてリストラを進め効率化を図ることは


社会的に見て望ましいことなのでしょうか?


このことを考える時には現在の不況が需要不足がたであることを


良く認識しなければなりません


つまり、企業が一生懸命ものを作っても売れない社会なのです


以前のエントリーでも書きましたが、このような社会では


必ず敗者が存在することになります


もともと需要というパイが不足しているのですからパイを


取り損ねれば敗者になるのです


一般的には不況のもとで効率化を進めることができなかった企業が

敗者となる・・・つまり、努力を怠ったから負けるのだといわれることが


多々ありますが、構造上、すべての企業が努力しても敗者は必ず生まれます

そして、一度敗者が生じるとその余った人員は需要不足のため、


他の効率の良いところに再度組み込まれること無くそのまま


無駄となってしまいます


つまり、各企業にとっては良い結果をもたらす構造改革ですが、


これによって社会には敗者、つまり無駄が生じることになります


個々の企業にとっては良い結果をもたらすのに社会全体で見れば


無駄を生じることになるのです


こういう現象を「合成の誤謬(ごびゅう)といいます」


もちろん個々の企業はリストラや効率化を図るのは当然ですので


不況下では市場に任せておけば世の中に必ず無駄が生じてしまうことになります


そこで必要となるのが政府だと言うわけです


不況下における余剰人員は文字通り無駄になってしまっているので


公共事業によって余剰人員を吸い上げても社会的なコストは0です


もし、彼らが効率性の悪い公共事業よりも効率性の高い他のところで


働くことができるのであれば効率性の差分が社会的には損となりますが


もともと無駄になっている人員なので使わないよりは効率が悪くても


使った方がいいという寸法です


ここで公共事業をするからには労働者に払う賃金の分コストがかかっている


様に見えるかもしれませんが、国民から税金を集めて


その金で国民である労働者に金を払っているので社会的に見れば


所得の移転というだけで右から左に金を回しているだけですので


問題とはなら無いのです


そう考えると無駄をなくし、その上社会的にプラスとなるような公共事業を


行うことができれば一番良いということがわかります


ここで問題となるのが社会的にプラスがなんであるか?です


たとえば無駄な箱ものを作っても意味が無いし環境を破壊するだけだということが


懸念されます・・・・


しかし、ここでいう公共事業は無駄となっている人員を使って社会的に


プラスとなることが大事ですので、たとえば一般的にボランティアと呼ばれるような


活動を人を雇ってやってもかまわないのです


以上のことをまとめると、無駄の生じている不況下においては余剰人員を使って


社会的にプラスとなるような公共事業を積極的に行うべきである


ということになります


いわゆるケインジアンの裁量的な財政政策と言うわけですね


ちなみに、好況時においてはより効率の良い民間部門で人員が不足しているので


効率の悪い政府部門が出る幕はないということができます


好況時に調子に乗って箱ものをつくりまくる政策は非常にナンセンスなわけです



以上が小野善康教授の説く不況の経済学です


確かにこう言われると正しいような気がしますが政府の効率性の悪さについて


軽視しすぎているような気がしますね


ただ、税金にしろなんにしろ金は消えることは無いので国全体で見れば


金を失うという損失がありえないということが、自分的には新しい視点で


なかなか面白いです


小野教授の本では失業保険は社会的にプラスにもマイナスにもなら無いで


金を右から左に回しているだけだといわれています


国民から金を集めて何もしていない人に金をばら撒いているだけだというのです


それなら、少なくとも公共事業のように社会的にプラスとなる労働をさせて


金を支払ったほうがいいのでは無いだろうか?という様につながります


なかなか反論しにくいですねぇ・・・


ただ、最近ではケインズ派の経済学よりもむしろ古典派の経済学側の


学説の方が有力視されているようです


ケインズ派と古典派の争いについてはまたの機会に譲りますが


最新ノーベル経済学賞を取っているのはキドランド、プレスコットという二人の学者による


リアルビジネスサイクル、つまり時間的非整合性の理論です


この辺は詳しくはまだ勉強していないのですが試験には良く出るようです・・・・


なかなか大変そうです・・・・