ショーちゃん(榛名由梨さま♡)、ミキちゃん(安奈淳さま)の次に好きだったイーちゃん(寿ひずるさま)。
歌が上手で、日舞の名手。すらりとした容姿に憧れていた。
一見するとイーちゃんはふんわりとしたフェアリー系の男役。
でも、ヤワな王子様タイプではなかった。
どこかに芯の強さを感じさせる、レット・バトラー役も似合う人。
凛とした白ばらのイメージにぴったりだった。
「いつ、辞められますか?」
三津五郎さんのこの言葉が実質的なプロポーズ。
社交ダンス選手権の司会を一緒に務めたのがお二人の出会いだった。
後にそんなことを「歌劇」誌に連載されていたキッシャン(岸香織さん)のエッセイで読んだ気がする。
トップになる夢よりも、もっと大切なことがあるなんて当時はピンとこなかった。
マッちゃん(松あきらさん)とミッキーさん(順みつきさん)の退団が重なった時期だっただけに、「何で?」と思ったし、悲しかった。
トップの座に相応しいスターさんだったから、イーちゃんの退団は子供心にも本当にショックで、何日も思い出しては、泣いた。
数年後に受けたショックは別の種類のものだった。
持病を抱えながらも待望の男の子に恵まれ、歌舞伎俳優の妻としての苦労がようやく報われる時が来たのだと元ファン仲間と共に喜んでいた矢先・・・。
イーちゃんは突然梨園の家庭から出ることになった。
トップスターへの階段を最後の一段を残して登るのをやめて、歌舞伎の世界で必死に頑張っていたはずなのに・・・。
もう子供ではなかったので、人生は予期せぬ事態が起こるものだとわかっていたけれど、様々な報道に接して、やはり「何で?」と思ったし、本当に悲しかった。
三つ目は、2001年の新宿コマ劇場。
宝塚OGによるミュージカルコメディ「桜まつり狸御殿」にお蓮役で出演。
久しぶりに見たイーちゃん。
品格と芸の質の高さに目を見張った。
落ち着いた大人の女性役で、舞台人としてさらに輝きを増している姿がとても眩しかった。
いろいろな経験が表現者としての糧となると聞くけれど、それは当人の努力なくしては叶わないこと。
悩みや苦労の跡を微塵も見せずに、さらりとやってのけるイーちゃんは昔よりももっとかっこ良くて、嬉しいショックだった。
メディアからの情報しか持ち合わせていないのに、イーちゃんが歩いてきた道をあれこれ想像するのは失礼な事かもしれない。
イーちゃん、ごめんね。
でも、三津五郎さんが亡くなってから、ずっとイーちゃんのことが頭から離れなくて。
三津五郎さんは本当に素晴らしい役者さんで、歌舞伎界にはなくてはならない方。
たくさんの舞台を拝見できた幸せは心の支えになっている。
もっともっと見たい舞台があった・・・。
私にとって、イーちゃんが命がけで産んだ息子さんが三津五郎さんの跡取りであることの意味はとても大きい。
だからこそ巳之助さんには、名跡だけではなく、三津五郎さんの素晴らしく柔軟な舞踊や俳優としてのセンスを受け継いでほしいし、次世代に渡す宝物をたくさん持った役者さんになってほしい。
そうでなければ、花組トップスター・寿ひずる誕生の夢が叶わぬままイーちゃんを見送らなければならなかったファンの涙は無駄になってしまうから・・・。
巳之助さん、白ばらが似合う正統派の歌舞伎俳優を目指して頑張ってくださいね。
心から応援しています。