知り合いの知り合いから聞いた話です。
実際の事案とちょっと変えましたが、概ね以下のような話でした。


小学校からの帰り路、友達と一緒に帰っていたら、友達がいきなり、「ちゃんとお弁当食べたか?」と言いながら息子のお弁当箱の蓋を開けて見て、すぐ戻した。
その時、お弁当箱に残っていた食べ物の汁が息子の服にかかってしまい、シミを付けて帰ってきた。
その友達は普段から何かと問題児で、一緒に帰宅させるのは嫌だなぁと思っていたところにこんな事件が。すぐに担任に電話をして、その問題児を何とかして欲しいとクレームを入れた。


最初に思ったのが

「学校の先生も大変だなぁ・・・」

そして

「こんな電話ばっかかかってくるから、本当に対処すべき問題までも一緒くたにされて、うちなんかまでもがモンペ(*モンスター・ペアレントのこと)扱いされるんだなぁ、ホントに迷惑だなぁ・・・」



学校に伝えるべき・クレームを入れるべき・教育的対処を要求すべきかどうかのメルクマールは次の三つに限ると私は思います。

①.故意によるとき。

  かつ

②.生命・身体・財産・精神に対し危機を生じうる行為がなされたとき。

  若しくは

③.それ自体危険性を有する行為であるか、他に迷惑をかける行為であるとき。


即ち、①&②か、③の場合だけです。



「わざとやったかどうか」は重要です。「悪意」は必要ありません。子どもは悪意とまで言えない感情で残酷な事ができます。その行為の意味を知らない事もあります。なので、「わざと」即ち「故意」であるかどうかです。

但し、わざとではなく、過失によっても許されない場合があります。お友達のバインダーをいじっていたら壊れてしまった。これはわざと壊したわけではないのでセーフです。
駅のホームで、ふざけてどついた。これはアウトです。お互い合意の上でふざけていても、ホームでどつくという行為自体が危険だからです。これが上記の③の「それ自体危険性を有する行為」に相当するケースです。
このような場合は、悪意がなくても、「○○君がホームでどついた」と学校に通報し、きつく叱ってもらわなければなりません。
③の「他に迷惑をかける行為である」の典型例は、「万引き」です。

また、①であっても②にあたらない場合は除外です。
お友達から「バカ」と言われた。これは一回か二回だけならたとえ「わざと」であっても、精神的にそれ程ダメージを与えないのが普通です。なので、学校に言う人は殆どいないでしょう。これが、①であっても②にあたらないケースです。
毎日言われる、紙に書かれて何枚も入っている、あるいはこれが「殺すぞ」「自殺しろ」という暴言であれば一回であってもアウトでしょう。これは、②の精神的危機を生じうるケースです。

一発殴られた場合も、その程度、部位、悪質性によっては、「生命」「身体」「精神」の何れか又は複数にダメージを与えうるかもしれません。それは、個々のケースによって異なります。
これも、②の程度問題ということです。



法律を学んだ方ならピンと来ていらっしゃることでしょう。これらは全て、刑法の考え方と全く同じなのです。刑法というのは、「一般人の常識的感覚」「社会通念」を規範化したものなので、所謂一般常識が、刑法という法律の形になっているだけの話。難しいことではありません。



さて、私の立てた基準「学校に通報すべき事柄か」に上記事実をあてはめますと、

①お弁当の汁を飛ばして、制服を汚してしまったことはわざとではない。
 しかも
②お弁当の汁を飛ばしたというのは、そのシミの程度にもよるが、一般的には生命・身体・財産・精神に危害が及ぶものではない。

但し、お弁当の汁が息子さんではなく、周囲の人に飛んでしまった場合、③他人に迷惑をかけることになります。なので、学校に言うとしたら③の理由ということになるでしょう。
まぁそもそも、駅だか電車の中だかで、理由もなく人のお弁当箱を開けるという行為自体、迷惑というか非常識な行為なわけなんですが、いずれにしてもこれは、「教育」というよりは個々人の「しつけ」の範疇じゃないでしょうかね。品行方正を校訓とするような一流私立学校で、このようなしつけのなっていない振る舞いは学校の名に傷が付くからと、日頃から指導を徹底しているような学校でない限り、学校からきつく叱ってもらう程のことじゃぁないと思います。

お弁当の汁を飛ばして、服にシミが付いたという事実は、服をクリーニングしなければならないので、経済的損失ということになります。物凄く広範囲なシミでクリーニングでも取れないような場合なら経済的損失と評価できるでしょうけれど、どの程度のものなのでしょうか。「眼鏡のレンズを破損した」「ランドセルの取っ手を引きちぎった」など、その物が使えない程度に至る事が必要じゃないでしょうか。
ちなみに「お金やおもちゃをカツアゲする」のは、暴行や脅迫によって経済的利益を移転させてますから、財産のみならず身体・精神にダメージを与える悪質な行為になります。その子の為にも、親のみならず学校からきつくお灸を据えなければなりません。



残念ながら、お弁当の汁を飛ばしたという程度のことで学校に電話をするという事は、モンペと評価されてもやむなしと私は思います。というか、昔はこんな親、いましたっけ???
まぁ昔は親が直接、相手の親に怒りの電話をかけてきたものですけど、最近は個人情報やらなんやらで、直接連絡を取り合うことは厳禁らしいです。かえって事が荒立ってしまうと思いますけどね。


こんなクレームの電話対応に追われて教師が疲弊して、肝心の深刻な暴力沙汰(言葉の暴力含む)やら窃盗、器物損壊、故意によって精神的に追い詰める等々の犯罪行為の通報に触れても、心は「あぁまたか」とフラットなまま。

先生は親を怒らせないようにすることが第一なので、クレームに対して意見したり反論することは厳禁。モンペからのどうでもいいクレームも、どんなクレームであっても、親からのクレームには形式上真摯に対応しなきゃなりません。
ところが生命・身体に危機が及ぶような緊急性を要するクレームにも同じ温度で対応するものだから、ガチでいじめな事案を通報する親を、激怒させるんです。そういう親は、形式上真摯に対応されてるってのを敏感に感じ取ってしまうので。


モンペからのクレームは、罪だよなぁ。