日本では9月にデビューアルバム「Fractured Life 」をリリースするAir Traffic。アルバムタイトルにある“Fractured”ということばがそのままアルバムのトーンを決定しているといって良い。

“君を僕のものにしたいんだ”と歌う“Just abuse me”に始まり、“未来は君の前に大きく拡がりクリーンで温かくそして輝いている”と歌う“Your fractured life”に終わるアルバムは、基本的には身近にいるけれど自分のものにならないような距離感にある女性に向かってこっそり歌われるラブソング風であり、その歌たちは自信をもって統一されたトーンで固められることなく正に“Fractured(断絶された、くずれた、統制がとれていない)”サウンドであり、その歌詞とサウンドのバランス感がまだ若干20歳そこそこの青年たちが作ったとてもナイーヴな感触として伝えられている。



歌いまわしやファルセットの使い方がColdplayChris Martin風だったり曲のイメージがRadiohead風だったりMuse風だったり、時にはピアノ・エモ系の美しさとブルータルさが同居していたり。悪意をもってコピーしたのではなく影響を受けてきたものがまだ完全に自分の色に染め切れないまま出てきてしまったという状態なのだろう。


これを青いと未熟だと片付けてよいのだろうか?

青いはたぶん正しい。でも青さゆえの勢いがあって楽しむことが出来るし、それ以上に印象的なギターのカッティングが耳につく2ndシングル“Charlotte”には青い云々のレベルを超えた強力シンガロング・メロディがある。


未熟なのか?正直アルバムを聴いただけでは判断が難しい。「Fractured Life」はその名の通り“Fractured”な作風だと書いた。その崩れ具合とDisorder具合が意図的なものなのかどうかがわからないからだ。若さゆえのFracturedだったら素晴らしい楽曲を書く能力をもった若者の将来に期待という結論になるのだけれど、Coldplay風やRadiohead風の味付けがあまりにも明確なだけに確信犯的な気もするし、これが意図的ならば恐ろしい青年たちということになる。


Fracturedなアルバムだけれど歌詞の内容やヴォーカル・スタイルから判断しても明らかにColdplayチルドレンだろう。その彼らが“Yellow”のようなバラードではなく“Charlotte”のようなアップビートなグッド・メロディを書いてしまうあたりに大きなポテンシャルと将来性を感じる。若さというのは財産なのだと再認識させられた。後悔しないように全力で生きましょうね、これを読んでいる若い皆さん。


公家尊裕Takahiro Kouke