最近よく耳にするスマホ老眼。

 

ちょっと解説をしてみたいと思います。

 

人によってはスマホ(スマフォ?)を長時間使っていてもなんとも無い人もいますが、症状としては疲れや頭痛、顔をあげて遠くを見てもピントが合わないとか、近くが見えにくくなってくるとか。

 

まず、本当の意味の「老眼」とは、目の中には「水晶体」といって距離に合わせてピントを合わせる役割を担うレンズがあるのですが、これが年齢とともに弾力性を失いピントが合わせられなくなる事をいいます。

これは水晶体の細胞分裂などが原因であり、目の仕組みから必ず起こる生理現象といえるでしょう。

ちなみに水晶体の硬化は生まれたときから進行してゆき、年齢とともにピントが合わせられる距離が徐々に離れていきます。

20歳で10cm以内にピントが合わせられたのに45歳くらいで30cmが見えにくくなる・・・

だいたいそんな感じでみんなピントの合わせられる距離が(近点)が遠くなってゆきます。

 

それが自分が作業する距離に到達して見えづらさを自覚した時に「老眼になった」と気がつくのです。

 

そう考えると「スマホ老眼」は本当の「老眼」とは全く意味が異なるわけです。

 

では、スマホ老眼とはなにか?

私は一個の症状ではなく様々な問題が絡み合って現れる症状だと思います。

  • 調節緊張
  • 輻輳不全
  • 自律神経のバランスの崩れ

その辺がいわゆる「スマホ老眼」の正体だと思います。

 

では、「調節緊張」とは・・・

目のピント合わせ(調節)を水晶体で行うと先ほど述べましたが、その水晶体のコントロールを毛様体筋という筋肉で行います。

筋肉ですから疲れます。

 

どんな力持ちでも、余裕がある重さの荷物であったとしても長時間持ち続けるのは苦痛です。

荷物の重さが増えれは持ち続けられる時間は短くなるでしょう。

それでも頑張って持ち続ければ腕は痺れてしまい、荷物を降ろしても自由に動かす事も、もう一度同じ負荷をかける事も困難になります。

 

つまり、そういう事です。

 

スマートフォンは字が小さく無意識に近い位置でみる事になります。

普通の読書がだいたい40cm~35cmなのに対し、スマホは20cm位と近くなります。

ピント合わせを司る毛様体筋は、40cmと比較し実に2倍の力を使う事になります。

これを3時間とか4時間とか・・・・

毛様体筋は痺れまくりです。

 

そうなれば遠くにピントを合わせるために毛様体筋を緩めようとしても、思うようには動いてくれないわけです。

 

疲れ、頭痛、遠くが霞む。

そういう事だと思います。

 

では、「輻輳不全」とは・・・

近くの物を見る時に、両眼は寄り目をして左右の視線が同じ物を見るように動きます。

これを「輻輳」と言いますが、もともとそれが少ない人がいます。

正常と言われるのは鼻先まで5cm以内に指をもってきても両眼がきちんと寄り目ができる事(3cm以内とか10cmとかいわれる事もあります)

輻輳が弱い人は比較的遠い距離で片目が寄り目をやめてしまいます。

 

つまり、20cmのスマホに両方の視線を合わせ続ける「輻輳力」が少なくて目の周りにある眼球を動かす筋肉に負担をかけてしまう。

疲労がたまれば輻輳を維持する事が困難になり、字が2重にみえたりピントを維持しづらくなるような感覚がでたり、頭痛や疲れにもつながります。

 

 

自律神経のバランスの崩れとは・・・・

目のピント合わせは副交感神経支配です。これは体を休める、緊張を解す方向に働く自律神経です。

それなのに、スマホでゲームばっかりすると近い距離のピント合わせで副交感神経が優位なのに、集中して興奮する交感神経を優位にしようとする要求がかみ合わず、自律神経のバランズが崩れて様々な症状を起こす事があります。

 

 

さて、そんないわゆる「スマホ老眼」と言われる症状ですが、調節系か輻輳系か・・・それとも両方なのか?もっと深い部分に原因があるのか?

それによって対処法は変わってきます。

 

ですが、最近宣伝でよく耳にするようになった疲れ対策レンズは「調節力をサポートする」事しか盛り込まれていません。

どういう事かというと、近くを見た時に必要な調節力が少なくて済むようレンズの下側によわーい老眼鏡みたいな度数が入ってるのです。

「サポートレンズ」とか言われてますけど、正体は「弱い遠近両用」です。

 

調節だけに問題があれば結構高い効果が期待できます。

しかし・・・・

 

実はピント合わせの「調節」と寄り目の「輻輳」は連動しているのです。

人の目はよくできていて、調節すると輻輳します。

また、輻輳すると調節します。

どちらかを別々に動かす事も出来ますが意識的にやる事は相当難しいです。

これを「調節性輻輳」といいます。

 

さて、輻輳系に問題がある人、つまり「寄り目」が苦手で近くを見るのに問題がある人に「サポートレンズ」を掛けさせるとどうなるか・・・

調節性輻輳が減ってしまい、さらに寄り目が困難になります。

つまり、問題が解決しないか悪化する場合があるという事です。

 

そういう人にはどうするか?

  • 寄り目を増やすトレーニングを行う
  • プリズムを使い少ない輻輳でも視線合わせがしやすくする
  • ピント合わせにより負担をかけて、輻輳をさせる

3番目は趣旨に合わなそうです。

とすると1番目と2番目です。

 

理想的には1番目なんですが、より近い距離で見続けるスマホから「調節」もサポートしたい・・・

なので、「サポートレンズ+プリズム」という選択肢が必要なケースも出てきます。

あるいは「近く専用眼鏡」を用意して普段使いとの併用が理想的な場合もあります。

 

そして自律神経のバランスをスマホを見続けることが原因で崩してしまっているというのであれば、使う調節力を減らすように「サポートレンズ」「近く用眼鏡との併用」が効くかもしれません。

 

ですが、もっとも大事なのは無理な力を長時間使い続ける環境の改善だと思います。

夢中になりすぎて体調を崩さないことですねw

あと目のストレッチ、つまり、時たま遠くを見て目を休める事が大事です。

 

 

これは、スマホに関わらず、パソコンでの近業が圧倒的に多いような方にも同じような事が目に起こっているのです。

 

眼鏡は見えないから掛けるだけではありません。

見えているんだけど、それによって起こる症状を緩和するために掛ける必要だってあるのです。

ですが、なにが症状に効くのかは「調節」つまり「調節機能検査」と「輻輳」つまり「両眼視機能検査」の結果から分析する必要があるわけです。