鳥岩楼 | 京都1975

鳥岩楼


西陣・五辻智恵光院の西側に店を構える「鳥岩楼」は地鶏の水炊きで有名なお店。高級な水炊き料理に手が届かない一般庶民のために、12:00~14:00のランチタイム2時間限定で門戸は開放される。注文できる品は一品のみ、「親子丼」(¥800)である。町屋を改装した店内。坪庭を眺めながら中に歩を進めると、「親子丼の人は2階ね」と、おばちゃんの声。昼間から水炊きを食う客がいるかどうかは知り得ないが、この時点でお金のある人、ない人がセパレートされる……口惜しやと考えるのは自意識過剰か。2階は4人掛けの座卓が並べられ、相席前提の着座ルール。2時間のみの稀少な親子丼タイム、順々に隙間無く客が押し込められ、果たして部屋の中は人がひしめき合う満席状態となる。登場したどんぶり鉢、蓋を開けるとまず目に飛び込むのは真ん中に落とし込まれたうずら卵。雑誌等で見た写真から、勝手に普通の生卵と勘違いしていた輩はここでプチ落胆を味わうことになる(言わずもがな、私もその一人である)。しかしながら、どんぶり鉢の底まで染みわたった煮汁のおかげで、生卵の必要性はむしろ感じさせない。ベースとなる味付けは非常に濃厚で甘く、少し塩っ辛いが、同時に出される鶏ガラを煮出したお出汁の淡泊なお味が、一服の清涼剤となる。少し小振りなどんぶり鉢のため、じゅるじゅると食べ進めると、あっという間に完食、食いしん坊にとっては少し物足りないボリュームと感じてしまうのは贅沢な悩みか。この狭い部屋で、皆食べるのは「親子丼」のみ、ある意味滑稽な風景ではあるが、あちらこちらから聞こえてくる感想の声に耳を傾けるのもまた一興。確かに美味しい親子丼ではあるが、個人的には行列のできる店として有名な、滋賀県・長浜「鳥喜多」の親子丼も食べてみたいと思う今日この頃。ちなみに今回は割と美味しそうに写真が撮れたので、ビッグバージョンの写真でお届け致します。

西陣 鳥岩楼 (にしじん とりいわろう)
★★★★ 3.5