マートン激走、金本イズム体現 | 阪神タイガース

マートン激走、金本イズム体現

 助っ人にも先発投手にも、金本魂が宿った。4点先制した後の5回裏に5点目を奪ったのは、1番マット・マートン外野手(28)の積極的な走塁だった。二塁打で出塁し、1死三塁から鳥谷の一ゴロで本塁突入。「常に先の塁を狙う走塁が必要」と訴え続けてきた金本イズムを体現したプレーで追加点を奪い、勝利をたぐり寄せた。

 普段はもの静かなマートンが、次々と言葉をあふれさせた。勝利に酔うファンの歓声がかすかに届く帰りの通路。流れる汗もぬぐわず、金本の鉄人記録について約5分、早口で語った。

 マートン 彼がやってきたことに敬意を表している。毎日、毎イニング、もう10年以上も続けてきた。その記録が途絶えることがすごく大変なこと。しかも自分から先発回避を言った、と聞いた。彼の人間性がよくわかった。非常に残念だったけど、自分として強く感じるものがあった。

 休まないという信念を貫いた不滅の世界記録は、チームの勝利を優先する金本自身の判断で終わりを迎えた。究極のフォア・ザ・チーム精神は、元メジャーリーガーの心にも刻まれた。「金本さんとは近しいわけではなかったけど」と控えめに言うマートンにも「金本イズム」が注入された。

 勝利のために勇敢だった。4点リードの5回1死三塁、鳥谷の一ゴロで猛然と本塁突入。高い送球に体を伸ばして捕球した捕手石原のまたの間に、左足をねじ込んだ。嶋田球審の判定よりも早く、両手を広げてセーフを表現。「1点を取ると大きい場面。いいスタートを切れば、向こうのミスを誘える。内野手もとってすぐ投げるのは難しいもの」と興奮して振り返った。昨季から先制しても追加点を奪えないゲームが目立っていたチームにも勢いを与える1得点だった。

 常に次の塁を狙う。金本が阪神移籍から、口を酸っぱくして説いてきたものだ。「『何としても』という姿勢をうちの選手はもっと持たないといえない」と語ったこともある。41歳で4番打者だった昨季も8盗塁をマーク。そんな姿がチームの走塁意識を変えてきた。金本のポリシーは来日1年目のマートンにも受け継がれた。

 「金本は42歳で25歳のような動きをしていた。野球選手として、チームメートとして、1人のファンとして彼をリスペクトしている。早く戻ってきてプレーすることを楽しみにしている」。マートンは勝利を追求する全力プレーを続けて、鉄人の帰還を待つ。
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