術後
日目
日目 先週の木曜日の話。
【シャワー騒動 part１】
その日はシャワーの日で、私の順番は、お隣さんの次だった。
お隣さんが終わって部屋に戻って来ると、
「バスマットがもうなくなってたから、出してもらってから入った方がいいよ。」
と声を掛けてくれたので、すぐにナースステーションに言いに行った。
看護師さんは、すぐに助師さんにTEL。
とりあえず私は、シャワーの準備を取りに戻ってから、浴室に向かった。
浴室の前では、看護師さんと助師さんがお話し中。
どうやら、バスマットの在りかを把握しているのは、フロア清掃員の方らしい。
で、
「浴室の鍵を開けて入っててください。こちらでやっときますから。」
と…。
鍵を開けて入るの
一応…一応、私だってレディだし？かなり抵抗はあったが、もう制限時間のカウントダウンが始まってる。
仕方がない
敷いてあった使い古しのバスマットは撤去してくれた。
新しいのを敷いておいてくれると言っているのだ。
大人しくお願いするほかない。
私は5分ロスした状態で、シャワースタート。
急ぎながらも、チラチラと鏡越しに脱衣場の様子を確認しながら、頭と身体を洗った。
私の見てた感じでは、バスマットを敷きに来た気配はない。
しかし、もう全て洗い終わってしまった
仕方がないので、そ～っとドアを開けてみる。
やっぱり、バスマットは敷かれていない。
「マジでぇ…
」
」 と思っていると、出入口前のカーテンが、少し開いていることに気づく。
「あれ
私は完全に閉めたはず…。」
私は完全に閉めたはず…。」 ってことは…と思い、辺りを見渡す…
じぇ、じぇっ
…あった…。
カーテンのすぐ側のボックスの上に…まるで私を嘲笑うかのように、無造作に積まれている。
(バスマットちゃん…ナゼにそんな遠くにいるの)
) 私のそんな心の叫びが届くはずもなく、ただただ自問自答する。
(看護師さんたち言ったよね
何で…何で敷いておいてくれへんのぉぉ
)
) ウダウダ言ってても、どうしようもない。
取りに向かうしかないのだ。
脱衣場は広い。4～5畳はある。
…バスマットが積まれた棚まで、およそ３ｍ…。
「よしっ
」
」 覚悟を決めて取りに行く。
床には、午前中から入った方々歴代の髪の毛やらが散らばっている
滑らないように慎重に、尚且つスピーディーにバスマットを取り、出入口の鍵をかけ、お風呂場に戻る
急いで、足の裏をシャワーで流して出る。
タイムリミットまであと5分しかない
ピンチを脱し、急いで体を拭いていると、ヒタヒタと続くびしょびしょの濡れた足跡
が…。
が…。 なんだか、沸々と怒りが込み上げてきた
このままでは、私の気がすまない
ふと、誰かが脱いだまま放置していったパジャマが目に留まる。
※本来、脱いだパジャマは持ち帰り、看護師さんに渡す。
そうだ 私は、一度はバッグにしまったパジャマを取り出し、誰かが放置していったパジャマの上に、自分の着ていたパジャマを乗せてやった
パジャマに罪はないが、私なりの小さな反抗だった
それで怒りはおさまり、スッキリしてしまった
↑この話をお隣さんと京都のお姉さんにしたら、大笑いされてしまった
それから昨日、予定通り“点滴”が抜けた
術後からなので、かれこれ１ヶ月半近いお付き合いになった。
点滴と言っても、中心静脈栄養法である。
※中心静脈栄養法
首の大静脈に留置カテーテルを挿入して、生命維持に必要な栄養素(糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなど)を静脈から投与する方法。
なぜ腕からの点滴では出来ないかと言うと、非常に濃度が高い液体(=高カロリー)なため、血管が炎症をおこしてしまうからだそうで、だから心臓に近い、太くて分厚い中心静脈から投与するのだそう。
術後なかなか食事がすすまない私たちにとっては、生命を維持するのに欠かせない、とても強力な助っ人なのだ。
しかし、これがくせ者で、身体は“異物が入っている”と見なし、熱を出すことがあるのだ。
しかも、結構な確率で。
私の周りのお仲間で、こんなに長く入れていられたのは、私ともう一人くらいだった。
で、先に抜いた経験者のお隣さんは、
「痛かったよ」
」 と言うのだ。
私も、いよいよ抜く時、ドキドキ緊張して、身構えていた。
緊張しながらも、担当医と雑談をしていると、サブでついた看護師さんが、私の首に大判の絆創膏を貼ろうとしてきた。
思わず
「え 何先生、終ったの」
何先生、終ったの」 と、私。
「終わり、終わり。」
と、先生。
「え抜いた」
抜いた」 と、また私。
「抜いた、抜いた
」
」 と、看護師さん。
全く何の痛みもカテーテルを抜く感触も感じなかった私は、拍子抜けして
「え～お隣さんが“痛いよ”って言ってたのに…。」
お隣さんが“痛いよ”って言ってたのに…。」 と言うと、担当医は
「お隣さんは、こんなちっちゃい事をこーんなでっかく言うから(笑)」
と、いたずらっ子のように言う。
そこへ、私が痛がる声は可愛そうで聴いてられない
と言って、席を外していたお隣さんが戻ってきた。
と言って、席を外していたお隣さんが戻ってきた。「全然痛くなかったよ」
」 と告げると、とても驚いていた。
後で担当医がお隣さんのこと、～って言ってたよ
と、担当医の真似をしながら私が話すと、お隣さんは、涙を流さんばかりに大ウケして、笑い転げていた(爆笑)
まぁ、とりあえず、私の点滴は無事に抜けたのだ。
めでたし、めでたし
【シャワー騒動 part２】
私が最後にシャワーを浴びたのが木曜日で、今日は月曜日。
「今日は祝日だから、シャワーだめかなぁ。入りたいよね～
」
」 などと同室のみんなで話をしていた、ナント
「今日シャワー出来るみたいよ」
」 と、whiteさん情報
浴室前のシャワーの順番を書き込むボードの日付が、今日になっていると言うのだ
※この病棟は、患者が自分の入りたい時間に、部屋番とイニシャルを記入してよい。
行ってみると、本当に今日の日付だ
さっそく、自分の部屋番とイニシャルを記入
私の順番は、15時
やっと入れる～
ルンルン
だった。
だった。 …この時までは…。
私の前は、whiteさん。
「お先に～」
」 と出掛けたwhiteさんが、５分とせずに
「ただいま～
」
」 と帰って来た。
全く意味がわからない
「忘れ物」
」「違うの。
今日は、祝日だから、入れないんですって
」
」「はぁ～」
」 と、私。
「えぇ～～」
」 と、お隣さん。
そこへ、看護師さんが入ってきて、謝罪する。
ダメなものはダメなのだから、納得するしかない。
お詫びに、体拭きのタオルを置いていってくれた。
(誰だよ浴室前のボードに、今日の日付を書いた奴
)
浴室前のボードに、今日の日付を書いた奴) たかがシャワー。
明日入ればいいじゃん。
本当にそうなのだ。
しかし、今の私たちにとっては“たかが”ではない。
『基本的生活習慣』をこなす事が大きな目標。
『食事・睡眠・清潔』こるらをコントロールしてこなすことが、今の私たちにとって、重大な課題であり、生きることの全てなのだ。
そんなわけで、時間が空いた。
「そうだおやつにしよう」
おやつにしよう」 首からの高カロリー点滴は、胃に負担がかかるので、よけいに空腹感を感じない。
だけど、点滴が外れて
「おやつ、食べてみようかなぁ。」
という気になったのだ
初おやつは…
『ミニカップ麺の“ど○兵衛”～』
』 ３分待って、ツルっと一口…
「美味しい
」
」 夕飯は、半分くらいかな。
おやつが食べられるという自信がつき、
「病院食は、無理して食べなくてもいいや
」
」 と思えるようになり、“食べる”プレッシャーやストレスから解放された
相変わらず、ベッドをフラットにして寝ることが出来ない。
私の勝手な妄想だが、縦の状態だと重力で内臓も下がり、何とか新たな定位置に定まる。
しかし、横になると、腹部内がスカスカで位置が定まらず、不安定になるので苦しくなる…のかな～と思っている。
だから、ある程度角度をつけて、内臓ちゃんたちの定位置を確保してあげながらでないと苦しい。
ついでに、ブログには書いてないかもしれないが、術後２～３週間の頃は、脇腹が痛かった。
急に長距離走ると痛くなる、あの痛さだ。
あれも、腹部内に余分な空洞が出来て、痛いのだぁと勝手に思って、納得していた。
と勝手に思って、納得していた。 今は各自定位置が決まってきたので、痛みもなくなった。
…全て私の持論です
担当医に言ったら
『何言ってんの、こいつ』
』 と思われるに決まっているので、言ってない
ついでに、横を向くと胃を中心に、内臓へのものすごい圧迫感が半端なく、横向き姿勢で横になることはＮＧだったが、最近はだいぶ横を向けるようになった。それでもやっぱり、まだ苦しい。
術後
日目
日目 台風一過で、今日は朝から雲一つない晴天
あまりにも青空が綺麗なので、病院の外に出てみる。
カラッとした、爽やかな朝。もうすっかり秋の気候だ
ほら、病院も気持ちいいと言っている(写真)
(写真) お隣さんをメールで呼び出し、ベンチに二人で座り、日光浴
そこへ、旦那さん
奥さんもやって来た
奥さんもやって来た 旦那さん、歩くスピードが上がっているでも、やはり、腰を擦りながら、辛そうだ。
でも、やはり、腰を擦りながら、辛そうだ。 旦那さんは、ずっとお腹の中の圧迫感が消えないと言う。
あっ
私も、あれだけ訴えていた胃の圧迫感…どこに行った
旦那さんに言われるまで気がつかなかった。
いつの間にか、胃の圧迫感がなくなっている…。
だから、おやつも食べられるんだ
私のそんな、すっとぼけた話を聞いて、奥さんは
「よかったね、パパ
もう少ししたらなくなるって」
」 と、嬉しそうに旦那さんに言っている。
旦那さん奥さんは散歩がてら、近くのコンビニまで行ってくるとのこと。
奥さんは散歩がてら、近くのコンビニまで行ってくるとのこと。 病棟の談話室からコンビニが見える。近いんだろうけど、今の自分には遠い…
そう思っていたので、私よりずっと辛そうに歩く旦那さんが、コンビニまで歩くということに驚きだった。
しかも、本当は病院の敷地外に出る場合は、担当医の「外出許可」が必要だ。
それを知ってか知らずかは、わからないが、
「行ってきまーす」
」 と、奥さんはいつもの穏やかな笑顔で手を振る。
奥さんはもちろん私服で。旦那さんは…パジャマのままで…出掛けて行った。
あとでお会いしたら、旦那さんのゆっくりペースで片道５分だったそう。
…………。
…行きたい。私も行ってみたい
今日一日中、心の中で強く思うことになるのであった。
ここ数日で、私は完全に夜型人間になってしまっていた。
加速させたのは一昨日の台風の夜
私の居る滋賀県は、夜中から朝にかけて、ものすごい雨風で、その音が気になり、眠れなかった。
その分次の日、昼寝をしてしまい、そのまま夜型に
それを改善すべく、今日から“なるべくベッドに横にならないぞ”プロジェクトを決行します
ついでに便乗して、“ＮＯテレビ
”プロジェクトも平行して進めていきます
”プロジェクトも平行して進めていきます ベッドに戻ると寂しくて、ついついＴＶをつけていた私。
１枚￥1,000のＴＶガードは、冷蔵庫やランドリーでも使うので、３日で使いきってしまう。ランドリーでも使うと、２日で使いきる。
退院間近となり、持ち金も底をついてきた…というわけでの“ＮＯテレビ”なのだ。
”なのだ。 しかしっ
入院してから見るようになった『あまちゃん』は欠かせない
『あまちゃん』だけは見るようにして、それ以外は絶つ
【シャワー騒動 part3】
今日、私たちＡ棟は午前中がシャワー日だ。
朝のうちに、部屋番とイニシャルを記入
今回もwhiteさんの次
さぁ、時間になり、whiteさんからドライヤーも引き継ぎ、準備万端
「さて、行くかな。」
思い腰を上げようとしたら、看護師さんがやって来た。
「次お風呂ですか」
」 と、ボード見りゃわかるだろ的な質問。
「はい…？」
と…返事するしかなく。
一旦出ていった看護師さんが、直ぐに戻ってくる。
「先に(ボードに)書いてあったの消して、書き直してないですよね」
」 ときた。
私は、そんなことするわけねぇだろという気持ちと疑われている腹ただしさを押さえながら、
という気持ちと疑われている腹ただしさを押さえながら、「消してない、消してない whiteさんの下は、空欄だったよ ね」
whiteさんの下は、空欄だったよ ね」 と、空欄だったのを確認していた、お隣さんにも声を掛ける。
すると、お隣さんも
「うん、間違いなく空欄だったよ」
」 と言ってくれた。
それを聞くと、看護師さんは、更に困った顔をして出て行った。
ってか、“消して書いた”と疑われたのが嫌だっただけで、シャワーの順番などどーでもよい。
それを伝えに、看護師さんを追い掛けて浴室の前まで行く。
そこには、おじさまと奥さまて看護師さん３人がいる。
(わぁ～
大事になってる)
大事になってる) 私は、とりあえず疑いは晴らしたいと、事情を説明し、
「どーぞどーぞ」
」 と、自分は午後に記入し直して、そそくさと部屋に戻る。
おじさまも奥さまも看護師さんも
「いいんですか～」
」 と言いながら、安堵の表情を浮かべていた。
結局、“おじさまは昨日の昼間に記入したのだが、誰かが前の日の消し忘れだと勘違いし、消してしまったのだろう”ということで、まとまった。
とってもいいご夫婦で、夕方お会いした時に、改めてお礼を言われて、驚いてしまった。
みんな一つ屋根の下で暮らすお仲間だ。
気持ちよく過ごそうぜ
今日はいよいよ退院に向けて、書類の手続きをしに、総合受付に行ってきた
職場に出す『傷病手当』の書類と『診断書』を書いてもらうため、“文書の申込み用紙”に記入をし、終了
「あぁ…私、退院するんだなぁ…。」
と、実感した。
さて、今日のおやつは…
『カップ麺(大)』
もはや、夕飯は食べられないことを覚悟の上の“カップ麺(大)”である。
最後の方は気持ち悪くなってしまったが、完食できた
何より、談話室で誰かと一緒に食べることが、一番の食欲の源になっていると思う。
今日もお隣さんと、あーでもないこーでもないと会話をしながら食べた。
『楽しく食事を取れる』
ということが、どんなに素晴らしいことか、人間らしいことか、生きる活力になっていることか、私はこの入院生活で、嫌と言うほど思い知らされてきた。
“食べる”ことは“生きる”こと。
“食べることを楽しむ”ことは“楽しく生きられる”こと。
私はやっと“楽しく生きられる”ようになってきたのだ
しかし、まぁ…案の定、夕飯は食べる気になれず、サラダのみという結果に終わった
という結果に終わった 相変わらず、女子会は一日の中でちょこちょこ開催されている。
お昼の前、おやつ、夜
私とお隣さんは、すっかりミラクルさんにハマってしまった。
ミラクルさんの言動全てがツボなのだ。
うまく説明できないが、ミラクルさんは、自分で話しながら、自分の言葉にのりつっこみをしたり、ボケたり、とにかく一文の中にいろいろぶっこんでくるのだ。
だから、何を言ってんだかわけわからない時もある。
私はそれを聞き流すが、お隣さんが
「えなになに今のどういうこと」
なになに今のどういうこと」 と聞き直してくれる。
お隣さんは、真面目だ
そんな面白ミラクルさんのお陰で、毎日笑いが絶
えない。
…術後すぐに出会っていたら、大変だった
傷口、開いちゃうよ
そんな楽しいミラクルさんとは、明日でお別れ
１週間の入院予定だったので、明日めでたく退院だ
寂しくなるなぁ