シースルー | 一体、何が原因なんだろう?

シースルー

 K.O.ちゃんの話が途切れると、沈黙が訪れます。 「女性にとって、私のように緊張して自分から何も喋れない、女慣れしていないような男は、一緒にいても面白くないだろうな。」 そんな思いが頭をよぎると、この沈黙がとても重く感じ、何とかしよう、何か話をしよう、と焦るから、ますますぎこちなくなってしまいます。 そうなると、自分の視線はK.O.ちゃんの目を見詰めていればいいのか、少しだけずらした方がいいのか、他を眺めていた方がいいのかなんて、余計な事ばかりが考えてしまい、更にぎこちなくなってしまいますから 「完全な悪循環」 です。 ですが彼女はどちらかと言えばマイペースで余り周りを気にしない方らしく、暫く沈黙が続くと、また彼女の方から話を始めます。 その度に私はホッとさせられました。
 学生らしいアルバイトの話になりました。 実家に負担は掛けたくないけれど、最低限の仕送りだけでは友達との付き合いもサークル活動もろくにできないし、そうかと言ってアルバイトを始めれば、肝腎な美術の勉強が出来なくなるので、どうしても時給の高いアルバイトをやりたい訳です。 美術系の学校ですから、「絵のモデル」になるバイトがよくあるそうです。 ちょっとでも動くと怒られるので、結構きついのだそうです。 そして、着る服によって時給にはかなりの差があるそうです。
 「45分間絶対に動いちゃいけなくて、10分間だけ休んで、又45分間動けないんですよ。 何にもしちゃいけないって、逆に大変なんです。」
 「だろうね。 座禅組んでいるならまだしも、ポーズ取っているしね。」
 「それに、上も下も下着付けないで、薄いシースルーを1枚羽織ってるだけで、大勢に見られているから、とっても恥ずかしいし・・・。」
 「え、下着、付けないの?」
 「そう、下もなのよ。 下着付けると値段がうんと下がっちゃうのに、動けない事は一緒だから、同じきついなら時給が高い方がいいでしょ。」
 「じゃあ、殆ど裸と一緒?」
 「すごく薄い生地を羽織っているけれど、透けて見えちゃうから裸みたいなものです。」
 「へ~、何処でやっているの?」
 「駄目、絶対教えない! だって教えると、住所調べて来ちゃいそうで怖いから。」
 「う~ん、仕事が休みで、場所知っていれば行っちゃうかもな。 K.O.ちゃんのシースルーだったら、仕事なんか休んでも構わないな。」
 「でしょ~!。 だから、絶対に、教えな~い。」
 こんな事だけは自分から尋ねるのですから、女性から見たら私は 「スケベ」 なんでしょう。 ですが、そんな話を聞けば、嫌でも彼女がシースルー1枚だけを羽織って、大勢の前でじっとしている姿が浮かんできます。 目の前の彼女と、その裸同然の姿は嫌が応にも重なってしまいますし、1度でいいから生で見てみたいとも思います。 よく友人から、こういう話をすると「おまえは露骨に目つきが『いやらしく』なる」と言われた事を思い出したので、慌てて話題を変えましたが、多分間に合わず、心を「見透かされた」だろうと思います。
 この話題の前は「上がって」いました。 そしてこの話題の後はシースルー姿が頭から離れずに「上の空」でした。 だからこの話題以外は何を話したのか全く覚えていません。 ただ、なんとなく「幸せだな」と感じていた事だけは覚えています。

 話し込んでしまったのでかなり遅くなってしまい、どちらからともなく、もう帰ろうという事になりました。 「もう少し、自然に話せるようにしないと駄目だな。」と思いながら席を立とうとすると、K.O.ちゃんが言いました。

 「あっ、それと、これからは、直接、アパートには、来ないで貰えますか。」


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