3の記念日 | 妄想★village跡地

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何が起こったのか…。

私自身、とても驚いております。

6/13日付、小説ランキング『3位』……ガーーン…

誰かの悪戯か、からかっているのか…。

がたがたぶるぶるするのも、一人で行う事にして…(←病んでるww)


来てくださってる皆様へ、細やかなお礼と記念として!!

もうこんな奇跡は起きないしね!!


ついでに、いつの間にか回っていた『6万ヒット』のお礼として。

細やかながらの、小話です。


お持ち帰りはご自由に~


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居心地良く整えられた部屋。

シンプルな家具とメルヘンチックな家具が入り混じっていて、ちょっとちぐはぐな感じがあるのはご愛嬌だ。

同棲しだしたばかりで、他愛に持ち寄ったが具が混在しているのだ。

互いに何かと忙しい立場。

長く使うものだから、どうせなら一緒に選びに行きたいと揃えるのを先延ばしにしている。


「お疲れ様です」


「キョーコもお疲れ様」


カレンダーの日付は、初夏の3日を指している。

珍しく夕方の早い時間に、家にいる事の出来た二人。

キョーコが腕を振るった料理を食べ、キョーコが風呂を使っている間に蓮が食器を片づけ夜食の用意をする。

ローテーブルの上にワインとチーズ、スモークされている野菜や肉、魚を並べる。

他人が見たら、もっと綺麗に出来ないの? と思うかもしれない。。

けれど、ちょっとだらしない位に崩れたそれすら、許せるような深い関係なのだ。

『敦賀蓮』の仮面を外して、のびやかにあれる場所。

それが、この新しい家だ。


「お待たせしました。蓮さんも入ってきたらどうですか?」


ほこほこと湯気を立てて、蓮の前に姿を現したキョーコ。

蓮が買ったルームウエアは、もこもことした素材に、淡いパステルカラーが可愛らしい一品。

短めのショートパンツから延びる足が、美味しそうだった。

小さな膝小僧に見とれながら、蓮が引っ掛かったのは『呼び名』


「……もう一回言って?」


「ぁ!!」


ぱっと見開かれた瞳と丸く開いた口が、『間違った』と物語っている。


「同棲初めて、三か月なのに…。まだ『蓮さん』なんだ…」


同棲に当たり、蓮は自分の正体を明かしてある。

せめて家の中では、昔の様に呼んでほしいのに…。

キョーコの口から零れるのは、口に馴染んだ『芸名』だ。


「ご、ごめんなさい…。つい…」


ぺこっと下げられた頭に、唇を落として…。


「上がってきたら、『キョーコの愛を確認』させてもらおうかな」


「そ、それは…」


下がったままの頭は上がらずに、揃えられた爪先がもじもじと動いた。

蓮の言葉に何を想像したのか…。


(まぁ、想像はつくけど…)


剥き出しになった蓮を受け止めるキョーコは、いつも大変そうだった。

蓮が湯を使い終えたら、またそれが待っていると思ったのだろう。


「つまみは出しておいたから。先に初めてて」


そう理を入れ、一向に上がることのない旋毛に、もう一度唇を落とした。


キョーコが使った後のバスルームには、甘い香りが満ちていた。

最近お気に入りのシャボンの匂いだ。

甘くふわふわとしたそれはキョーコ専用で、蓮は自分用に用意してあるそれを手に取って…。

体を洗う。

ぶくぶくと泡を立てながら、思うのは先ほどのキョーコだ。


「…いくら俺でもそんな無体はしないのにね」


いや、そんな無体をしてもいいのなら、いくらでもする。

蓮の頭の中にある想像を、キョーコの体に施したら嫌われてしまうかもしれない。


けれど、明日の朝早くに仕事が入っている彼女に、そんな事をする気はない。

咲き誇り、スターダムの階段を駆け上っている彼女の、足を引っ張る真似はしたくない。

蠅退治や馬の骨除去なら、いくらでも努力を惜しまないけれど。

キョーコがベストコンディションで仕事に、惜しまないのだ。


「は、早かったですね…」


バスルームからキョーコの元へ戻った蓮は、ちょっと目を見張った。

グラスも伏せられたまま、つまみも手付かずだった。


「初めてなかったの?」


(…飲んでた方が楽だっただろうに…)


「はい!! お、お仕置きの…準備をしておりました…」


きちんっと正座をし、すこし青ざめた顔で笑顔を作る彼女。


(……どんなことをされるって思ってるんだ?)


キョーコがその心算なら、とか…。

悪魔が囁くが、


「いい心がけだ。じゃ、『久遠さん、愛してる』って言って」


悪魔に心を売ることなく、最初に決めていた『お仕置き』を執行する。


「へっ!?」


キョーコもまさかそんな事を言われるなんて、想像もしてなかったのだろう。

きょとんっとした顔になり、首が右に傾いだ。


「『久遠さん、愛してる』って、言って」


中々彼女の口からきくことのできない、直接的な愛の言葉。

それを強請る。

言葉通り、『愛の確認』だ。


「く、久遠さん…」


「うん」


かくかくと動くキョーコの隣に腰を落とし、膝をぴったりとくっ付ける。

濡れた髪に手を差し入れ、隠れていた耳を露わにする。


「あい、あい、あ、」


「うん」


「愛してます」


キョーコが見つめるのは、自分の膝。

髪の下から現れた耳は、真っ赤。

蓮はそこに唇をくっつけ、愛の言葉を返す。


「俺もだ。もう一回言って」


「久遠さん」


「うん」


「ちゃんと、愛してますよ?」


「うん」


「久遠さん、愛してます」


「うん。ちゃんと、わかってるんだよ…。でも、名前昔みたいに、『本当の俺』を呼んでほしいんだ」


「ご、ごめんなさい…」


口に馴染んだ名前が咄嗟に零れるのは、仕様がないのだろう。

蓮もわかっている。

『久遠』だという事を明かして、まだたったの3ヶ月。

しょうがないし、仕方ないと思う。


「キョーコが好きだったのは、『敦賀蓮』なんじゃないかって…。不安になるんだよ」


「はぁ・・・・」


どっちも『彼』なのに、とキョーコの表情が物語っている。

もどかしく口の奥で強張る音。

キョーコはそれを綺麗に掬い上げてくれる。


「どっちも、大好きですよ? どっちも、大事です」


髪の中にあった手が取られ、滑らかな頬に押し付けられた。


「恥ずかしくて、いっつも言えないですけど…。蓮さんも久遠さんも、私には必要で、とっても大事な人です」


「…」


「名前は気を付けてるんですけど…。外で呼んだらどうしようとか思って…。帰ってきてすぐの、切り替えが出来ていない時は、混同しちゃうんです。『蓮』さんだけが大事とか、そんな事じゃないんですよ?」


「うん」


頬に押し付けられていた手を滑らせ、肩を抱いた。

骨ばったキョーコの肩が、蓮の胸に食い込む。


「今私を抱きしめてくれている人、その人が世界で一番、愛してるんです」


「…ありがとう…」


「名前はちゃんと呼べるように頑張りますから!!」


「期待してるよ」


蓮の腕の中で、キョーコが身じろいだ。

抱きしめていた力を緩めると、くるりと振り向いた顔がそっと近づいてきた。

ちゅっと、可愛らしい音と共に触れられた唇。


「期待、しててくださいね」


にっこりとほほ笑んだその顔は、食べたくなるくらい可愛かった。


(………生殺し…)


彼女を思って、今晩我慢することを決めていたのに。

ぐらぐらと揺れる理性と、蓮は戦う羽目になったのだ。



そして、翌月。


「あれ? 久遠さん、この『○』なんですか?」


カレンダーの、3日に付けられていた花丸印。

キョーコに特に心当たりはなく、蓮に尋ねる。

冷蔵庫からサラダを取り出していた蓮は、キョーコの指の先を見つけて顔を輝かせた。


「大事な記念日なんだ」


「何かありましたっけ?」


「『キョーコから初めてキスをくれた記念日』」


「っっっっ!!」


二人の新居に掛かるカレンダーには、毎月『3日』に花丸がつくことになったのだ。





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なんじゃこりゃってな出来ですが、お気に召しましたらこれ幸い☆

いつもありがとうございます!!



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