降臨-14- | 妄想★village跡地

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「リク魔人」の妄想宝物庫 』のseiさんよりお預かりした、お題です。

長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません…。

魔人さんの書かれた一話の続きを、書いて行きたいと思います~


『蓮キョ』ターンですヨ。

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泣きすぎて目も鼻も痛い。

ぽってりと腫れ感じのするそれを、水で冷やしたタオルで覆いながらキョーコはため息をついた。


かたかたと鳴る薬缶。

それの前に立ちながら、キョーコは何とか思考を纏めようと努めていた。

狭い部屋の中に蓮がいるだけで、胸が張り裂けそう。

なるべく意識しないように気を付けつつ、深く深呼吸する。

キョーコが混乱している間に、蓮は上り込み泣きぐずる自分をあやしてくれていた。


「・・・はふ…」


その様を思い出して、キョーコの顔は赤くなる。

幼子の様に膝の上に乗せられて、流れる涙を掬われて…。

小さく揺すられて、背中を撫でられて。

髪の間に差し入れられた唇と、優しい言葉たち。

一体どれくらいその、甘い毒のような膝の上に揺蕩っていたのだろう。


蓮を詰って。

蓮を責めて。


泣きじゃくるキョーコに、根気よく付き合い宥めてくれた。

もうあふれ出る物は何もなくて、ぐずぐずとみっともなく鼻を鳴らしていたタイミングで蓮が言った。


この部屋は寒いから、温かいものが飲みたいと。


膝の上から降りるタイミングを失っていた、キョーコに対する気遣いだと…。

蓮の優しさなのだと、すぐに気付いた。

その優しさに甘えて、安心できる膝の上から滑り降り今こうしてキッチンに立っているのである。

沸騰した湯を注ぎ、薫り高い紅茶を入れる。

本当はコーヒーの方がいいのだろうが、この部屋にはそんなものはなかった。


「しっかり…」


流されないように。

これ以上迷惑をかけないように。

しっかりと心を締め上げて、蓮の待つ部屋の方へ移動した。

彼の着ていたシャツに皺が寄って、なんとなく縒れているような気がするのはきっと気のせいじゃない。


(私が…、しがみ付いたからだ…)


その原因に思い当たって、益々申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「すいません…」


カップを差し出しながら、謝ると蓮は何の事だかわからないと言う様に、小首をかしげた。


「その、シャツ…」


見るからに高そうなそれに、自分の涙やらなんやらが付いたのかと思うと…。

顔を上げることも出来ない。


「あぁ、気にしないで。ありがとう、ご馳走になるよ」


素っ気ないデザインのカップも、蓮が持つと一級品に見えるから不思議だ。


「俺の方こそ、ごめんね」


くるくるとマグを手の中で遊ばせながら、蓮も謝ってきた。


「………」


キョーコは一体何に謝れているのか分からず、手の中にあるカップを覗き込んだ。


「君を、混乱させるつもりはなかったし…。泣かせるつもりも、なかったんだ…。ごめん。俺が、しっかりしてなかったばかっかりに…」


蓮はまた、謝ってくる。

その謝罪に、益々キョーコは混乱した。


「なんで、謝るんですか…? 敦賀さんが迷惑に思うの、当然です…。私みたいなの、嫌だったんでしょう? だから、適当な男宛がおうとしたんですよね? そこまで迷惑に思われてるの、気付かなかった私が悪いんです。だから、謝るのは…私の方なんです」


キョーコが言葉を重ねる程、蓮の眉間皺が深く刻まれてゆく。


「恋人ができあたら、ちゃんと紹介して…。査定してもらいますから。安心してください。ね?」


蓮の皺が深くなるにつれ、キョーコの心もだくだくと血を流す。

それは深く仕舞ってあった、蓮への恋心の形を浮き彫りにする。


「ごめんね…。本当に…」


向かい合うキョーコの頬に、蓮の手のひらが触れる。

気付かないうちに、キョーコの瞳からは水があふれていたのだ。


「無理して、恋愛しなくてもいいんだ。そんな事をしなくても、君は俺の傍に居ていい…っていうのは、烏滸がましいね。俺は君が傍に居てほしい。君が傍に居なきゃ、ダメなんだ」


溢れてくる涙を、大きく暖かい掌が拭い取ってくれる。


「うそつき…」


強張って脅えたままのキョーコの心には、蓮の言葉は素直に響いてこない。


「そうやって、笑顔で誤魔化して…。ホントは迷惑に思ってるくせに。私の事、邪魔なくせに!!」


少し落ち着いた心が、再びざわめき出す。


「迷惑だったんでしょう!? 優しさを勘違いして、好きになんかなったから!! 嫌だったんでしょう!? だから、突放したんでしょう!? もう、迷惑かけないです。私なんか、もうどうでもいいんです!!」


ざわめく心のままに、叫ぶと蓮とキョーコの間に有った小さなテーブルが宙を舞った。

派手な音を立てて、床に打ちのめされたテーブルと二つのカップ。

白い絨毯の上に、ちゃいろいシミが広がるのをキョーコは一瞬だけ、見ることが出来た。

あっと思い、シミに目を落とした途端。

横に向いていた顎を取られt、怒りに燃える蓮の瞳と視線が結ばさる。


「いくら本人でも、俺の好きな人を侮辱するのは許さないよ」


跳ね上げられたテーブルの所為で、近づいた二人の距離。

獰猛な光を瞳に宿した蓮は、そのまま顔を傾けてきた。


「・・・っぅ…」


想像していたのとは違う、乱暴なキス。

上下の唇とも強く、強く。

噛まれた。


キスとも、呼べないかもしれない…そんなくちづけにすら…。


(やだぁ・・・・)


悲しみと歓喜が入り混じって、また…。

涙が零れた。


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