降臨-13- | 妄想★village跡地

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スキビ二次元創作物の残骸がある場所です。閉鎖いたしました。
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「リク魔人」の妄想宝物庫 』のseiさんよりお預かりした、お題です。

長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません…。

魔人さんの書かれた一話の続きを、書いて行きたいと思います~


この辺から『蓮キョ』ターンです。

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「だれかしら…」


この部屋の事を知っている人は限られている。

尋ねてくる人物は、もっと限られてくる。

鳴りやむことのないチャイムに、背中を押されてそろそろと玄関に向かう。

ドアスコープから確認しようとしたが、相手が大きすぎるのか顔を確かめることが出来なかった。

けれど、キョーコにはそれだけで十分だった。

服の上からでも、彼の身体的特徴を見間違う筈がない。


「どうして…」


彼はこの場所を知らないはずで。

彼がここに来ることなんかあり得ないはずで。


「なんで…」


動揺に、足がよろめく。

鳴り続けるチャイム。

それは、『早く開けて』と、言っている。


「逃げなきゃ…!!」


咄嗟にそう思い部屋の奥へ踵を返すけれど、ここは4階でベランダから逃げることもかなわない。


「どうしよう…」


うろうろと室内を歩き回る。

鳴りやまない、チャイム。

そして、鳴りだした携帯電話。


『早く』


そう急かす音達に、根負けしてキョーコは扉越しに声をかけた。


「どうして…」


『顔を見せて』


ずっと聞きたかったその声に、涙が零れそうになる。


「だめ、です」


『見せてくれるまで、ずっといるだけだからいいよ』


チャイムは鳴りやんで、電話も鳴りやむ。

そうすると、ドアの向こうにある蓮の気配が濃厚に感じられる気がした。


「何でここが分かったんですか?」


この場所にキョーコがいることは秘密になっていて、分かるはずないのに…。


『知りたかったら、開けて』


ぴんぽーん

また鳴らされた、チャイム。


『開けてくれるまで、ずっと続けるから』


そろそろ夜も更けてきて、鳴りっぱなしのチャイムと言うのは近所迷惑だ。


「……」


小刻みに震える手で鍵を回す。

回り切るか切らないか。

キョーコがドアを開けるまでもなく、開いた扉。

その隙間から忍び込んできた影。

抗う間もなく、抱きすくめられた。

かしゃんっと、再び回った鍵の音が遠く聞こえる。


「っ!!!」


固い胸板と、たくましい腕。

安心する匂いと、安らげる温もり。


ぞわっとキョーコの肌に、鳥肌がたった。

けれどそれは、不快なものではない。

満ち足りて、心の底から安らげる場所に戻って来たから。


(だめ…!!!)


満ち足りた心は、すぐに凍りついた。

夜の匂いを吸い込んだコートに縋りついていた指を、なんとか引きはがす。

離した途端、ひんやりと冷えがキョーコの体を包み込み始める。


「会いたかった…」


蓮はわずかに開いた隙間を許さず、再びきつくキョーコを抱きしめた。

頭のてっぺんに漏らされた言葉に、キョーコは雷に打たれた様に固まってしまった。


「うそつき…」


「嘘じゃない。会いたかった。話を、したかった…」


「うそつき!!」


絡まっていた腕から逃れて、少し距離を取る。

伸びてきた腕を払い落として、再び蓮を詰った。


「うそつきはきらい!!」


その叫びに、今度は蓮が打たれた様に凍りついた。


「私の事、迷惑だったんでしょう!? だから、あんなこと言ったくせに!!! なんで、なんで、いまごろ…」


キョーコだって、会いたかった。

恋しい気持ちを自覚してから、ずっとずっと。

けれど、うっとおしがる気配を感じたから…。

押し殺していただけなのに…。


伸びてくる蓮の腕から逃れるため、闇雲に腕を振り回す。

何度払っても払っても。

伸ばされる長い腕は、キョーコを捉えた。

また深く抱きしめられて、頭を胸板に押し付けられて…。

耳から流れ込んでくる彼の鼓動が、キョーコの涙を誘う。


「いや!! いやっ!!」


聞きたくなくて、これ以上惑わされたくなっくて。

駄々を捏ねる子供の様に、暴れる。

けれど。


「話を聞け!!」


初めてと言ってもいいだろう、荒げた蓮の声に今度はキョーコの動きが止まる。


「ふっ…ぇ…」


打たれて、抗う事で暴れることで堪えていた嗚咽が、とうとう零れだした。

キョーコの頭を掻き抱き、優しく髪を撫でながらあやしてくれる。

その優しい仕草が、余計にヨーコの涙を誘うのだけれど…。


「怒鳴って、ごめん。でも、話をしたくて…。上がるよ?」


玄関先で大騒ぎをしていた二人。

落ち着いて話をしたいと、蓮はキョーコを抱きかかえながら部屋へと上がりこんだ。

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