『「リク魔人」の妄想宝物庫
』のseiさんよりお預かりした、罠お題です。
長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません…。
魔人さんの書かれた一話の続きを、書いて行きたいと思います~
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玄関をくぐれば、報道陣が待っていた。
先走った『熱愛報道』が流れて、だるま屋は『店』として成り立たなくなっていた。
入口に殺到する、取材陣の所為で。
女将は気にすることはないと、言ってくれたけれどそうもいかない。
どうしようかと悩んでいたら、社長が救いだしてくれた。
「はぁ…」
だるま屋から連れてこられたのは、LMEが社宅として借りているマンションだった。
最低限生活に必要なものが揃えられた部屋は、少し広めのワンルームだ。
報道陣たちに気付かれず、ひっそりとここに来たため持ち出せたものはごく僅かだった。
「さむ…」
狭い室内なのに、物が少ないせいで寒々しく感じる。
テレビを付ければ、自分の名前が飛び交っていて。
外に出れば、誰かに見張られている気がする。
撮影現場でも、共演者の好奇の視線にさらされて…。
キョーコは少しずつ疲れていた。
その中でも、もっともストレスとなっているのが…。
「まただわ…」
ベッドの上に放り投げておいた、携帯電話。
ぶるぶると震えて、自己主張を始めたので拾い上げると…。
キョーコの名前と並んで、テレビを賑わせている男の名前が表示されていた。
留守電に切り替えていても、何度もしつこく鳴らされるそれ。
時と場所を選ばず成るそれに、辟易してしまっているキョーコはげんなりしつつも通話ボタンを押した。
「もしもし…?」
『あ、京子ちゃん? 今大丈夫?』
駄目だと言っても、用件を話す癖に一応断りを入れるあたりが…。
(なんだかなぁ…)
げんなりしてしまう。
一度は引かれたけれど、今はなるべく関わり合いになりたくないと言うのが本心だ。
「少しだけなら…」
『また食事に行かないかな?』
繰り返される電話の内容は、ほぼこれだ。
流石のキョーコも、ため息をついてしまった。
こんな時期に、何を考えているのだろう。
火に油を注ぐような真似をして、何が楽しいのだろう。
「今は大人しくしているように、事務所側から言われてるんです。まだまだ新人なので…。こういう売り出し方をするのは良くなって、言われてるんです。距離を置きましょう? その方がお互いの為だと思うんです」
こんな会話も何度つづけただろう。
けれどめげることを知らない彼は、何度もこうしてアプローチをかけてくる。
『本当に恋人になって、発表すれば問題ないだろう? そうすれば、世間も納得するしマスコミも、納まるよ』
遠まわしに断っても、響かない男に焦れたキョーコは。
「申し訳ないんですが…。貴方とお付き合いする気はありません。仲良くなれたらなとも思いましたが、こんなスキャンダルになってしまって…。お付き合いすることは、出来ません。ごめんなさい」
言葉を選びつつも、ストレートに断りの言葉を伝えた。
電話越しにも、絶句したのが分かった。
キョーコが断る可能性なんて、考えてもいなかったのだろう。
(本当に…、何処が良かったのかしら…)
焦るあまり、人選を誤ったとしか思えない。
自分の見る目の無さにも、げんなりする。
いい人だと思ったのに…。
いや、いい人ではあったのだ。
ただ…。
(ぜんぶが、つるがさんとちがうんだもの…)
蓮の気配を断ち切れないキョーコ。
まったく重なることのない彼と付き合うなんて、土台無理な話だったのだ。
電話越しに何か言っているのを流しながら、キョーコは親友たちに言われた言葉を反芻する。
(本当に、無理な話だったのね…)
彼にも相当失礼な事をしたのだろう。
申し訳なく思うが、もう無理なのだ。
彼に触れらてて、走った悪寒を思い出してまた体が冷える。
「本当に、ごめんなさい」
何かまだ言っていたが、最後に謝って会話を強制的に畳んだ。
「これで…、諦めてくれるといいんだけど…」
自分に自信のあるタイプの彼は、こんな事では引いてはくれないだろう。
自分でまいた種とはいえ…
「嫌だわ…」
沈黙した携帯を再びベッドに放り投げて、床に寝っころがる。
なるべくなら携帯を触っていたくない。
敢て見ないようにしている、着信履歴。
積りに積もった留守録達。
「聞いたら…、心が折れちゃうもの…」
誤解したままのキョーコは、蓮の傍に居るために新たな恋をしなければならないと、信じている。
というか、信じたいのだろう。
「迷惑って、言われないためには…。そうしなきゃ…」
何よりも怖いのは、彼に嫌われること。
迷惑がられること。
そうならないために、
「頑張らなきゃ…」
辛いけれど。
本心は嫌だけれど。
悲しい決意を改めて固めた時、鳴らないはずのチャイムが
鳴った。
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そろそろ蓮キョのターンです。
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